あなたの不安を取り除いてくれるのは、民間の医療保険ではなく、
誰もが加入している健康保険と常識的な額の預貯金。
目覚ましく進歩する医療。しかし、保険は契約時に記載された内容しかカバーしてくれない。「人生100年時代」で寿命が長くなれば長くなるほど、保険は陳腐化し、カバーされない可能性も!
では、とるべき合理的な保険戦略はなんなのか―――。
今回は、後田亨さん、永田宏さん共著の「いらない保険」からの学びを紹介します。
目次
その保険、本当に頼りになるのか
民間の保険は、健康不安・老後不安を解消する「魔法の杖」ではありません。しかし、多くの人が不安にあおられ、保険に加入し、多額の保険料を支払っています。中には、「保険で得しよう」と考える方すらいます。
しかし、これらは間違い。まずは、以下で述べる真実と冷静に向き合ってみましょう。
❶民間保険は慈善事業ではない
保険金とは、あくまで、社員の人件費などもろものを差し引いた中から支払われます。テレビCMにも多額のお金が支払われています。しかも、利益を上げています。
一方、歳をとると、人は必ず病院のお世話になります。つまり、「老後も安心な保険」は保障以上の掛け金を払うことになります。
不安や恐怖は、人の判断を狂わせます。同調圧力に弱く、またビビリな国民性の日本人の多くが、不安を遠ざけたくて、「不安解消」のために多額のお金を払って保険に入っています。
❷保険は契約時の約款に書いていることしかカバーしない
医療の進歩が目覚ましい。次々、新しい治療・手術、制度が出てきます。保険の契約内容は一度契約したら見直されることはありません。つまり、契約内容は「陳腐化」していきます。「万全!」と思って入った保険も、一生涯の保障になるとは言い切れないのです。
❸持病があっても入れる
加入条件が甘い分、保険料が高いか、保障内容が限定的か、あるいは両方ということです。
上記事実をふまえた上で、本当に保険が必要か―――。著者の後田亨さん、永田宏さんは、「民間保険におすすめはない」と断言しています。
最強の保険は「健康保険」
では、老後の病気にどのように備えればよいのでしょうか。大事なのは、健康保険などの公的な保障制度を理解し、保険加入を最小限にすることです。
実は、保険をよく知る人ほど保険に入っていません。理由は、日本の公的健康保険の万一時のサポート力が優秀だからです。
公的保険で自己負担は3割、さらに高額医療制度も
公的健康保険で、患者の自己負担は3割以内で済みます(幼児:2割、それ以上:3割、 70~74歳:原則2割、 75歳以上:1割)。
さらに、公的保険には「高額療養費制度」があり、世帯合計の病院への1ヵ月間の支払いが一定の限度額を超えた場合には、超過分に対して1%分しか支払う必要がありません。
その入院、いくらかかる?【一般的なモデルケース】
70歳未満、年収約370万~約770万円の方の世帯医療費が80万円/月だった場合
⇒3割負担で24万円
⇒高額療養費制度で最終的な自己負担は「8万5430円」
(=8万100円+(80万円-26万7000円)×1%)
上記はよくあるモデルケースですが、支払額は9万円弱です。70~74 歳は自己負担は原則2割、 75 歳以上は1割なので、さらに負担は軽くなります。
さらに、過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が大きく下がります(多数回該当)。
厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ
多くの病気の入院期間はかなり短い
入院日数は、、国の方針&医療の進化で短縮化を続けています。心臓病、がん、脳卒中を含む普通の病気やケガの平均入院日数は16.2日です。
具体的な病気、および、その時にかかる平均的な費用は、本書の中で紹介されているので、知りたい方は、是非、本書を読んでみてください。
医療費が払えず自己破産する人はいない
入院・手術代にプラスして、手術・入院時は上記にプラスして、以下の費用は掛かります。
【入院中】食事費+α
【退院後】毎月1回程度の通院・薬代(数千円~1万円程度✕数カ月程度)
しかし、多くの場合、特別な治療・差額ベットなど代がなければ、「がん」なども含め、社会復帰や家庭復帰までの医療費負担は 50 万円程度で済みます(心臓移植でも、日本国内なら100万円+α)。医療費が払えず自己破産したというケースがほとんどないのも、私たちが恐れているほど、お金がかからないからです。
その保険で大丈夫?保険は陳腐化する
ここまで読んできても、「保険は必要」と考える人が大半でしょう。
そんな方は、今、かけている保険が、将来の入院時に役立つとは言い切れない事実を知ったうえで、保険の加入を継続した方がいいです。
終身医療保険
医療技術の進歩で、医療制度・治療・手術内容が変わろうが、保証は契約時点から一切変わらない。
⇒新しい手術・手術は対象外。すべてカバーされると考えるのは間違い
⇒60歳ないし 65歳で保険料を払い済みとなる方にしても、安心とはいえない
介護保険
公的健康保険の中でも、介護保険は比較的新しい制度。「介護医療院制度」などはスタートして日が浅い。それ以前に契約された保険では考慮されていないと考えた方がいい。
手術給付金
手術給付金は、1日当たりの入院給付金の10~40倍が一般的。入院給付金が5000円/日とすれば、手術の種類に応じて5万円から 20 万円が給付されるというもの。
最大給付額20万円が給付されるのは、開腹・開胸・開頭などを伴う大手術だが、5年後、 10 年後には、手術の大半が、内視鏡手術、血管カテーテル治療、腹腔鏡・胸腔鏡手術など、傷が小さく、手術時間も短い手術に以降すると考えられる。
⇒最高額がもらえる手術は、極めて少なくなる。ロボット手術なども対象外では…
【結論】保険の入り方&対策
保険貧乏になることなく、できるだけ安心を確保するにはどうしたらいいのか―――。
導き出される答えはシンプルです。
❶子供が成人するまで、
親の死亡に備える「掛け捨て保険」や
住宅ローンを組む際の「団体信用生命保険」などを除き、
医療や死亡に備える保険は、高額療養費制度が使える「健康保険」をベースとする
❷浮いた保険料をiDeCoやつみたてNISAで運用する
❸健康を保ち、できるだけ長く働き続ける(収入を得る)
筆者らは、死亡や就業不能に備える以外の保障をつけるにしても、都道府県民共済の「入院保障2型」と「新がん1型特約」でいいのではないかと述べます。
病気をしても、復帰後働けるなら、多額の保険料を支払うよりも、何にでも使える 50 万円、できれば100万円の預貯金を持つことが大切です。
ちなみに、高齢者の場合、医療費のうち、かなりの部分が亡くなる前の半年間ないし3ヵ月間に集中します。そして、お金を必要とするのは、胃ろうなどを含む「延命治療」です。家族にはこれは必要ないと、あらかじめ宣言しておきたいと思います。
最後に
今回は、後田亨さん、永田宏さん共著の「いらない保険」からの学びを紹介しました。
「今の保険では、医療の技術進歩、制度変更についていけない⇒長生きすれば補償対象外となる確率はどんどん上がる」という気づきは、現在加入中の保険を再検討するうえで、大きな気づきとなりました。
私は、現在最低限の保険にしか入っていませんが、これも、いらないかも…と思い始めています。解約金を運用に回し、自己で備えた方がよさそうだと考えるに至っています。まずは、契約内容・補償内容を今一度、見直します。
そして、最も長生きリスクの対抗策となるのは、「健康の維持」。これは若いうちからの積み重ねです。私は「脳が喜ぶ生き方をする」ことをモットーとし、ストレスをかけず、運動・サウナ・旅行・読書を楽しむ生活を心がけています。しかし、食事と睡眠にはまだまだ問題あり!健康を活かすも殺すも「習慣」と再認識して、健康に努めたいと思います。