気づかいには、人生を変える力がある。一瞬の気づかいが一生の武器になる。
人生でチャンスをつかむために、「育ち」や「学歴」は必ずしも関係ありません。もっと大事なことは、人に自分を好きになってもらうこと、「応援したい」と思ってもらえる人になることです。そのために必要なのが「ちょっとした気づかい」です。
ビジネスの成功も、プライベートの成功も、結局のところ、「相手によろこんでもらえるかどうか」で決まります。井上裕之さんの著書「本物の気づかい」は、人間関係がうまくいくために最も大切な「気づかい」について優しく教えてくれる一冊です。
今回は、ビジネスシーンでの気づかいにフォーカスして、本書「本物の気づかい」からの学びを紹介します。
目次
気づかいとは
「気づかい」は、難しいモノではありません。相手に関心をもち、何をしたらこの人はよろこんでくれるのか、 考えることです。
気づかいを身につけるための3つのポイント
ビジネスの現場では、接待・贈り物の減少、会議のオンライン化などに見られるように、人間関係の簡略化が進んでいます。
しかし、いくら世の中やビジネスで人間関係の簡略化が進んでも、 人は何かをしてもらったり、してもらったことにお返しがあったりすれば、よろこびを感じます。人間とはそういう生き物です。
井上さんは、気づかいを身につけるためのポイントを3つ挙げています。
①「自分がうれしいと感じること」を相手にする
②相手の立場になって「うれしいと感じてもらえること」を考える
③周囲を観察し「人は何によろこびを感じるか」を学んでいく
「自分がされたらどう思うか」という視点を持ち、自分がしてもらえるとうれしいと思う行動を先取りして、相手に行うのが気づかいです。普段からの気づかいは人間関係の結びつきを強固にします。
「気づかい」の反対は「手抜き」
井上さんは、「気づかい」の反対は「手抜き」だと言います。
人は、忙しかったり、気分が悪かったりすると、すぐに気づかいの手を抜いてしまいます。例えば食事をごちそうしてもらったときのお礼にしても、お礼の定型文で済ませてしまうなどして手を抜きます。
こんな時、ちょっと手間はかかっても、相手に寄り添い、相手がよろこぶ一言が添えられるか。相手が暖かさを感じる文章を書けるか。
こんな、小さな気づかいの積み重ねが、長く続く関係や、将来大きな結果となって返ってきます。
ありがとうを深く伝えるコツ
気づかいの中でも大事なのが、感謝の気持ちを伝える「ありがとう」です。
ありがとうを掘り深く伝えるコツは、名前と感謝の内容を具体的に示して伝えること。
❶「○○さん(相手の名前)」+❷「○○してくれて(感謝する事柄)」+❸「ありがとう」
ネームコーリング効果でl人は名前を呼ばれると、相手に対する好感度が上がります。また、「何に対して感謝するのか」をつけ加えたほうが丁寧な印象を与えられます。これを実践するだけでも、相手との距離が縮まるはずです。
仕事も人間関係もうまくいく!ビジネスでの気づかい
気づかいができれば、職場では、人に好かれ、部下なら上司にかわいがられます。しかし、ビジネスでは、相手にとって不都合なことも伝えなければなりませんし、難しい相手とも付き合わなければなりません。そんな時はどうしたらいいでしょうか。
相手の意見を認めた上で自分の意見を言う
相手と意見が食い違ったとき、自分の意見を言う前に、相手の立場を考え、一旦相手の意見を立てるいう気づかいがあるかで、その後の展開は大きく変わってきます。
相手の意見を認め、「それはいいですね」と一言したうえで、「こうすると、さらによくなるんじゃないでしょうか」と自分の意見を述べると、角が立ちません。そして、自分の意見も聞き入れてもらえます。
注意されたり、間違いを指摘されたとき
仕事で注意されたり、怒られたり、間違いを指摘されたとき、人は、相手に攻撃的な態度を見せたり、ふてくされたり、落ち込んだりしがちです。
しかし、怪訝な顔をすることなく、「気づきになりました。ありがとうございます」と言ってみる。
自分の間違いに気づき、それを改めた時、人は成長します。怒ったり指摘してくれたりした人に感謝をすれば、「素直な人」「成長の伸びしろのある人」 という印象を与えることができます。すると、相手は「また何かあれば教えてあげよう」と思ってもらえて、成長するチャンスに恵まれます。
気難しい人との付き合い方
いい仕事をするし、能力は高いが気難しい。こんな人は、どんな職場にもいるものです。
こういう方との対応は、「結果にフォーカスして、譲れるものはすべて譲る」 ことが大事。仕事の結果に注目して、相手の頑固さ、口の悪さなどに、いちいち感情をもち込まないようにすることです。そして、「相手の良さを活かしてよりよい仕事・商品を作り上げることに注力」します。
①やりあわない:相手が強い口調で強い球を打ってきても、普通の口調で軽く対応する
②相手を認める
人は、相手が強い口調で言ってきたとき、相手のペースに乗って、相手のペースに乗りがちです。しかし、相手が打ってきた強い球を打ち返すと、また強い球が返ってきます。
強く言ってきても、普通の口調で「そうですね」と軽く返せばいいのです。強い言葉を投げている人は誰に対しても同じ態度をとるので、「自分が責められた!攻撃された!」と思う必要はありません。彼らは「人に拒絶される」経験を多くしているので、相手の気持ちを受け止める気きづかいをすれば、最高の成果で対応してくれます。
気づかいを学ぶ
気づかいを学びたければ、気づかいされる側になってみることです。ただし、自分では気が付きにくいのも事実です。
だから、プロに学ぶことが大切。プロに学ぶと言っても、わざわざ教室に通う必要はありません。
気づかいを一流に学ぶ
上質なサービスが受けられる場所は、気づかいの「学びの宝庫」です。飛行機に乗ったときの客室乗務員の対応、一流のホテルで働く人たちの身のこなしや言葉づかいなど、上質な場に足を運べは、学びはあふれています。どんな言葉を使っているのか、どんな言葉に心を動かされるか、意識すればいいのです。
気づかいの幅を広げる
気づかいの幅を広げるためには、いろんな経験や学びを得て、自分の価値観を広げることが大切です。日々仕事に追われていると、効率や生産性ばかりを重視しがちですが、 生産的な時間はビジネスにしかつながりません。
自分の価値観を広げるためには、「非生産的な時間」を過ごすことが欠かせません。非生産的な時間には、自分でしか感じられない体験や学びがあり、自身の価値観を広げ、人としての豊かさを耕してくれます。
これは、ビジネスではなかなか得られない「人間としての学び」 です。 気づかいをするのも、されるのも「人」です。「人間としての学び」が広く深い分だけ、相手の気持ちを考えたり想像したりすることができるようになり、気づかいの幅もレベルが上がります。
最後に
今回は、井上裕之さんの著書「本物の気づかい」からの学びのごく一部を紹介しました。
本書の中に、「人に相談されたときどう答えといいか」のアドバイスに、「相手が喜んでくれそうな一言を添えるだけでいい」というものがありました。人は相談するとき、実は、意見を求めてはいません。自分の気持ちや意見を、「受け止めて、肯定してもらいたい」ことが大半です。
相手が喜んでくれそうな、ほんの一言を添えるだけで、相手の心をぱっと明るくできます。これも「気づかい」。これが、信頼関係を深めることにつながります。
ビジネスの現場でもIQよりSQ(Social Intelligence Quotient、「生き方の知能指数」「社会的指数」)。対人能力や社交性の高さは非常に大事です。
気遣いは本当に、いろんなシーンに溢れています。「一瞬の気づかいが一生の武器になる」という、ご意見にも納得です。本書から、いろんな気づかいの学びを得て頂ければと思います。