【書評/要約】星の子(今村夏子 著)(★4) カルト 宗教2世 として生きる少女の戸惑い・不安を描く、野間文芸新人賞受賞作
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安倍元総理大臣銃撃事件で、問題が浮き彫りとなった「宗教2世問題」

1人の命を奪った事件の背景には、逮捕された容疑者は母親が入信した「旧統一教会」Vへの恨みがあったと報じられています。

この事件を正当化することはできないものの、奉仕活動の一つとしてお布施(金品)を暗に要求するような宗教団体も存在し、宗教にのめりこんだ親の元に育ち、不幸を強いられる子の問題は放置できない「社会的が抱える大きな問題」です。

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今回紹介の今村夏子さんの小説「星の子」は、まさに、新興宗教を信仰する家族のもとで成長する少女の戸惑い・不安を描いた作品です。本小説は、少女が直面することになった不安や傷を静かに、繊細に描き出します。



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星の子:あらすじ

【書評/要約】星の子(今村夏子 著):あらすじ

大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。
病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。 
第39回野間文芸新人賞受賞作 ──── 「BOOK」データベースより

以下、「星の子」のネタバレを含むので、知りたくない方は読まないでください。

病弱な我が子を救いたくて…

虚弱児としてこの世に生を受けたちひろ。両親は体の弱い娘を心配し、病院を駆け回る日々を暮らしていました。

ひどい湿疹で苦しむ赤ちゃんの娘を案じる中、父の会社の同僚 落合から「水を変えてみては」と助言を受けます。藁にもすがる思いの両親は、落合の助言に従い、新興宗教「星の子」の水「金貨のめぐみ」でちひろを清めます。すると、湿疹は徐々に完治。以来、両親は新興宗教に信奉していくことになりました。

離れていく姉の心。心配する叔父

さて、そんな両親のもとで育ちながらも、ちひろは両親と仲良く、素直に育ちます。時折開催される宗教の集会でも、同じ年頃の友達と仲良く集いを楽しみます。しかし、5歳年上の姉まさみは、そんな生活に疑問を感じるように…
また、ちひろの叔父雄三も宗教にのめりこむ一家を心から案じ、脱会させようと試みます。しかし、どっぷりのめりこんでしまった両親には何の効果もありませんでした。

益々、宗教にのめりこむ両親

時は流れて中学生になったちひろ。

そのころには、両親は宗教にどっぷり。父は仕事を辞め、どんどん奉仕活動にのめりこむようになっていました。また、家は住み替える度に、狭く・みすぼらしく、薄暗い空間に。さらに、姉は家を飛び出し帰らず、家庭の食事すらおろそかになっていました。しかし、それでも、ちひろは両親を愛し、両親ほど宗教にのめりこむこともなく、それでも仲良く暮らしていました。

両親が不審者扱い。傷つくちひろ

そんなとき、ちひろの心を傷つける事件が起こります。

学校から帰るのが遅くなったある日、恋心を抱く若き男性教師が車で自宅まで送ってくれることになりました。自宅に近づき、まさに車の降りようとした瞬間、「へんなのがいるから車から降りるな」と男性教師に強い力で引き止められます。

しかし、その先にいた不審者は、緑のおそろいのジャージを着て、公園のベンチで「水のパワー」を受けあっているちひろの両親でした。

ショックを受けたちひろ。家に帰っても、いつものように両親と接することはできません。そして、翌日、教師に「昨日の不審者は自分の両親です」と告げたが最後、教師はちひろにキツイ態度で接するようになりました。

新興宗教への周囲の厳しい目線に、不安、戸惑い、少女の心は揺れ動いていきます。

星の子:感想

【書評/要約】星の子(今村夏子 著):あらすじ

ここからは、私の感想です。

星の子では、新興宗教は悪者扱いされていない

小説「星の子」では、カルト宗教を真っ向から否定するようなことはありません。

少女から大人になる過渡期にある繊細な女生徒にフォーカス。特定の信仰・信念を持つ親とその宗教的集団の元で、その教えの影響を受けて育った子どもの両親&宗教と外界(学校・社会)との狭間で揺れる揺れる心を静かに描いています。

だからこそ、より、少女の心の内面が、じわっと、静かに心に染み入ります。

ラストシーンの意味:個人的考察

本作は、新興宗教の合同合宿で、夜、ちひろと両親が冬空のもと、肩を並べて3人寄り添って夜空を眺めて時を過ごすシーンで静かに幕を閉じます。
お風呂の利用可能時間が決まっているので、早く戻ろうよと声をかけるちひろに、父は「もう少しここで星を眺めよう」と言い、そして、ちひろは静かにそれに従い、家族3人肩を寄せ合います。

このシーンには、いわゆる狙撃事件となったような、両親とのいさかい・軋轢は全くありません。むしろ、3人は心で支えあっています。

しかし、私はこのシーンで、両親の不安がいろいろ、溢れているように感じました。

今は従順な娘。
しかし、遠方の高校を受験しようとしている娘は、より社会にさらされていくことで、
物理的に距離ができるだけでなく、心も離れてしまうのではないか。
宗教信者であることで、傷つかないか…
学費を賄ってあげられるか… 等

現実の社会では

現実の社会では、「宗教2世問題」はかなり深刻です。一般的な社会と異なる価値観の中で育ち、一般社会の中での価値観の違い、宗教への不信の目を目の当たりにする度に、強いストレスを受けて、精神的に追い込まれる人たちもいれば、金銭的・宗教的方針などで、進学や職業的なスキルを身につけることができなかった人も少なくありません。

こうなった後では、宗教二世が、いわゆる一般社会に戻り、宗教から離れた生活を取り戻すことは容易でないことは想像に難しくありません。

私自身は信仰を持つこと時代は悪いことだとは思っていませんし、大事なモノ・かけがえのないものを持っている人の方が、幸せに生きられると思っています。手を合わせ感謝できる人の方が幸せだとも思います。しかし、いわゆる、カルト宗教となってくると話は別です。

宗教にどっぷり浸かっているとき、当の本人はある意味「幸せ」です。なんとも、問題解決が難しい問題だと改めて感じた次第。このようなものに「心のスキ」乗っ取られないようにすることの大事さを改めて感じる次第です。

最後に

今回は、今村夏子さんの小説「星の子」を紹介しました。
社会問題を静かに描いた本作。実際に、本を読んで味わってみることで、いろいろな気づきが感じられるのではないでしょうか。

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