投資は難しい。相場の将来を言い当てることはできません。しかし、相場にはサイクルが存在し、今、どの相場サイクルに位置するのか理解しながら投資を行えば、大きな損失を回避できる確率は大いに高まります。
こんなサイクルを読み解くのが、「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」の4つの相場で1サイクルを表す「4つの相場サイクル」です。
今回は、著書「相場サイクルの見分け方」を参考に、個人的考えも加え、4つの相場サイクルの見分け方、相場サイクルにあった投資手法をまとめます。
目次
景気サイクルが変わるきっかけ
景気には好景気と不景気、株式市場には強気相場と弱気相場があり、これを繰り返しています。投資はうまく相場に乗ることが大事ですが、この景気や相場の変わり目がわかれば、投資でリターンを出せる可能性は高まります。
中央銀行の政策金利が景気サイクルのキー
相場のサイクルが変わるきっかけになるのは、中央銀行の金融政策です。中でも重要なのが米国のFRBであり、FRBが開く連邦公開市場委員会(FOMC)による米国の金融政策やFFレートの金利誘導目標です。
だからこそ、金融政策に大きな影響を与える雇用統計などの重要経済指標は重視されます。
4つの相場サイクルにも、この金融政策が大きく関わっています。
株式は景気先行指標
株式は、景気に先行して動く「景気先行指標」です。
そのため、実際の景気よりも数カ月先行して動きます。2022年、米国株式が業績は良いながらも下落基調にありますが、FRBの金融引き締めが大きく影響しており、景気悪化に先行して株価が下落しました。
このような「金融政策」と「企業業績」に基づき、株式相場を4つに分類したのが4つの相場サイクルで、注目される要因や投資妙味のあるセクターも変わってきます。
それは、以下で、4つの相場サイクルの特徴と株価の動きについてみていきましょう。
金融相場とは:前半の上昇局面
金融相場とは、金余りを背景に上昇する相場のことです。
金融相場の特徴
通常、不景気で企業業績が悪化すると株価が下がりますが、政府や金融当局が景気対策として金融緩和を実施すると、いわゆる「カネ余り状態」となり、ダブついた資金が株式市場に流れ込むことで、「不景気の株高」現象が起こります。
金融政策の例としては
・中央銀行による金利引き下げ
・住宅投資の促進
・道路や橋などの公共投資の拡大
・補助金の付与
2020年3月コロナショックをきっかけに、国民の生活の維持のための「給付金」、そして、企業の存続維持・雇用維持のために多額の助成金や融資が行われました。確かにこれらは存続維持のために使われましたが、大量のマネーが金融市場に流れ込み、ロックダウンで経済が止まるのとは逆に株価は上昇しました。
2020~2021年にロビンフッターと呼ばれる人たちが大量に登場しましたが、仕事ができずに持て余した時間、外出せずに自然に抑えられた支出+給付金を背景に、大量の若者が株式投資に参入し、株式操作をできるほどまでになったのは記憶の新しいところです。
金融相場の株価の動き
金融相場では、企業業績回復期待で先行して株価が上がります。業績の回復は株価に対して遅れるため、株価指標であるPERやPBRが割高であっても買われることが多くなります。
日本株の場合であれば、まず、東証一部市場の出来高が日経平均の上昇と連動して急増し始めます。
まず、買われるセクターは、景気敏感セクターや不動産など金利低下メリットを享受する企業。銀行・証券株などは、資金調達コストが下がり、かつ、市場の出来高急増による手数料収入拡大が追い風になります。
次は、政府による公共投資予算がつく財政投資関連株。建設・土木、道路、浚渫、橋梁をはじめ、ここから波及して、プレハブメーカー、大手不動産会社、マンション業社などが次々循環物色されます。
さらに、支払金利が大きい公共株にとっても、金利低下局面は大きなメリットです。電力株・ガス株、鉄道株、空運株、放送株など公共的なインフラを提供する企業の株が該当します。
また、金融相場で注目されるのは大手企業。中でも財務体質の強いトップ企業です。一方で、株価水準の高い値がさ中・小型株は上昇の圏外に置かれます。
業績相場とは:後半の上昇局面
業績相場は、その名の通り、景気や企業業績の上昇によって買われる相場です。金融相場は、景気の回復と金利の下げ止まりで終わりを告げます。
業績相場の特徴
金融緩和の効果で企業業績が回復し始めます。まさに相場格言の通り、「相場は懐疑の中で育ち始める」のです。実際に、企業業績が伴うまでには1年程度のタイムラグがあります。金融相場が「理想先行買い」であるのに対し、業績相場は「現実買い」です。
業績相場相場の株価の動き
業績相場で買われるセクターは、前半は素材産業、後半は加工産業です。
モノを作るにはその元となる素材が必要です。さらに、景気拡大が続くと生産を拡大させるために企業は設備投資に踏み切ります。そのため、当初は素材産業が増益し、循環して、産業用機械、精密工作機械、ロボット、自動倉庫、工業計器、事務機など加工企業の業績が増大します。
著者は、素材産業においては、三番手企業に注目と指摘。理由は、加工産業の二流三流企業への切り替わりのタイミングは、金利の引上げのきっかけになるからです。
加工産業の二流三流企業は、平均的な需要をこえて追加的な需要が生じた場合、その需要分だけを満たす「限界供給者」となりやすい。信頼あるトップ企業が受注増で納期が遅れ始めたときにお鉢が回ってくる企業で、そのころには景気は十分戻しているといえるからです。
逆金融相場とは:ピークアウト
業績相場が拡大しすぎると、金融引き締めのサイクルがやってきます。これが「逆金融相場」です。
逆金融相場の特徴
景気が拡大しすぎると、問題になるのがインフレ(=物価の上昇)です。このインフレを抑制するために、中央銀行は金融引き締めを始めます。その一つが政策金利の上昇です。
今、まさに、米国で起こっているのが、この状況です。日本株もこの影響を大きく受けています。
逆金融相場の株式相場
たとえ業績が絶好調であっても、金融引締政策が始まると、金融相場・業績相場を経て大きく上昇した株価は、ピークアウトし、ゆくゆくは全面安に向かっていくことになります。
先に売られるセクター・銘柄は、借入の大きい企業の銘柄ハイテク、素材産業、電力株などは強く金利上昇のマイナスの影響を受けます。
ただし、初期においては景気は絶好調で、企業収益は増収増益予想です。そのため、逆金融相場で株価が大幅に値下がりすると、一旦の割安感が生まれます。特に、株価の急上昇に乗り切れず指をくわえていた投資家にとっては買い場となりとなります。急落後、3~4か月後に再び最高値に挑戦するような反転相場が起こります。このまま最高値を突破していくこともありますが、失敗すると、ダブルトップ(二番天井)となります。
なお、この逆金融相場では、中小小型株の株が買われやすい傾向があります。また指数も、日経平均が先の高値を突破できずとも、中小企業株指数が高値を更新します。ただし、中小株なら何でもいいわけではありません。
小型企業株が買われる理由は主に2つ。一つは、金融の引締め下で株式市場に流入する資金が細るため、時価総額の大きな企業を押し上げるパワーが失われるため。もう一つは、成長力の高く、さらに、財務内容に優れるキャッシュリッチ企業の場合、金利上昇で受取利息が増える恩恵を受けるからです。
逆業績相場とは:下落局面
金融引き締めにより景気が下降に向かい、企業業績も悪化して株価が大きく下がります。この下落サイクルの後半を「逆業績相場」といいます。
逆業績相場の特徴
逆金融相場での金融引き締め下で景気後退期に向かう中、何らかのショックが加わると株価が一気に下落します。
逆業績相場が一気に加速するパターンは一定ではありません。しかし、逆業績相場の最終局面に近づけば近づくほど、株価の割高感が強まります。
逆業績相場の株価の動き
逆業績相場で底値買い銘柄は、業界トップの優良銘柄です。有料ながらも他の株と一緒になって売られてしまった銘柄に投ずることです。
また、セクターでは、金融関連株と財投関連株、次に電力・ガス、電鉄、不動産、投資妙味があります。景気と業績の連動性が低い医薬品やインフラ、生活必需品といったディフェンシブセクターも注目されます。
【個人的意見】チャート分析より4つの相場サイクルの方が大事
株式投資でリターンを出す手法はいろいろあります。個別株でリターンを出すには、業績分析をしたり、チャート分析も重要でしょう。
しかし、個人的には、景気の大きなサイクルを見る方が大事だと考えています。理由は、上記の4つの相場サイクルにみられるように、買われるときは業績が微妙な中小株でも買われ、逆に、売られるときは業績の良いトップ企業であっても売られるからです。
大きな波に乗るためにも、相場上昇期の「金融相場」「業績相場」、相場がピークアウトから下降に向かう「逆金融相場」「逆業績相場」4つの相場とその時の投資戦略を抑えておくことは大事と考えています。
もちろん、すべての相場が4つできれいに整理できるものではなく、上記でまとめた投資戦略が通用しないこともあります。故、非課税投資を最大限活用し、長期でコツコツインデックス積立投資をしながら、金融相場の前夜~初期にかけて、スポットで株式を追加購入しておけばいいかなというのが私の基本的な考えです。
コロナショックの時に大いに役になった投資戦術ですが、ポイント投資は、株価暴落で怖くて買えないときなどに、買い向かう資金としても重宝します。
最後に
今回は、「相場サイクルの見分け方」を参考に、個人的考えも加え、4つの相場サイクルの見分け方、相場サイクルにあった投資手法の要点を書評要約して紹介しました。
相場サイクル関連の著書は、長い投資生活を送るにあたって、非常に有益な情報を教えてくれます。まとめて読んでみると、さらに、大きな損失回避&投資利益の拡大に役立つはずです。
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