【書評/要約】やる気が上がる8つのスイッチ(ハイディ・グラント・ハルバーソン著)(★5)

しなければ…と思っているのにどうしてもやる気が出ない

この「やる気」の問題に苦しんだ経験がない人はいないのではないでしょうか。しかし、人生の勝ち組と負け組には、明らかにこの「やる気」=【心の中の「火」を燃やし続ける脳力】に差がありますよね。

本書「やる気が上がる8つのスイッチ」は、この「やる気」を科学する本

著者のハイディさんは、心に火をつける万能の方法はないと断言。

その上で解決策として、人を行動パターンで8つのタイプに分類し、それぞれに当てはまる解決策=やる気スイッチの入れ方を教えてくれます。このタイプを①マインドセット、②フォーカス、③自信の有無で分類づけることで、効率的にやる気を促す方法を教えてくれます。

やる気はすべてのベースとなるスキル。これが習得できれば、個々のスキル・技術UPも楽になることは間違いありません。今回は、「やる気が上がる8つのスイッチ」の要点を紹介します。

薄い本なのでサクサク読める!
多くの人にとって非常に有益な情報をもたらしてくれるおすすめ本!
chami
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誰にも万能のやる気のスイッチはない

【書評/要約】やる気が上がる8つのスイッチ(ハイディ・グラント・ハルバーソン著):やる気の万能スイッチはない

著者のハイディさんは、心に火をつける万能の方法はないと断言します。

また、モチベーションアップの本で語られる、
・いつもポジティブに考える
・報酬を与える
・実践で学んでいく
・ゴールを設定する
といった方法も「いつも」「誰にでも」効くものではないと断言します。

その人に合ったスイッチを用意しない限り、スイッチを押してみたけど、ONにならない状態が発生します。

やる気から見た8つののタイプと3つの軸

ハイディさんは、行動パターンから、やる気を8つのパターンに分類し、それぞれを3つの軸を変数としてでわかりやすく定義します。

これが非常に納得感があるもので、自分がどのタイプでどんな軸が強いかを理解することで、効率的に仕事も人生もこなしていく方法が分かります。

■8つのタイプ
①中二病
②うざいやつ
③臆病者
④退屈な人
⑤やる気の空回り
⑥まじめな見習い
⑦新星
⑧熟練の匠
■3つの軸(変数)
❶マインドセット
❷フォーカス
❸自信の有無

まずは、8つのタイプを3つの軸で定義する前に、「3つの軸」について見て行きましょう。

マインドセット:思考傾向

【書評/要約】やる気が上がる8つのスイッチ(ハイディ・グラント・ハルバーソン著):マインドセット:思考傾向

マインドセットとは、考え方の癖、あるいは思考傾向のことです。

2つのマインドセット

マインドセットには、「証明マインドセット」と「成長マインドセット」の2種類があります。

成長マインド

証明マインドセットを持つ人:すごい人と思われたい
成長マインドセットを持つ人:すごい人になりたい

成長マインドセットの持ち主は他人の目をあまり気にしません。他人が自分をたとえ認めてくれなくても、やると思ったことをやります。そして比較対象は他人ではなく自分自身です。

問題なのは、「証明マインドセット」を持つ人です。

「証明マインドセット」の問題

「証明マインドセット型」の人は、常に他人と比較します。また、助けを求めず、ミスを恐れる傾向があります。つまり、自分にはできない、自分には無理だということが人にも自分にもわかってしまうことがいやなのです。また、課題や目標にとらわれすぎていて、そこに至るまでの道筋やプロセスを楽しむ余裕もありません。

このタイプは、困難にぶつかったとき、以下のようなやる気の特徴となって現れます。
①不安に押しつぶされてしまう
②あきらめてしまう
⇒自分の無力感にお墨付きを与えて、悪循環へ

マインドセット

「証明」を求めるより「成長」を目指そう

フォーカス:やる気のフォーカス

やる気の「動機」には大きく2つあります。「獲得フォーカス」と「回避フォーカス」です。

やる気のフォーカス

獲得フォーカスを持つ人:高いレベルの仕事とは「達成」を重視する
回避フォーカスを持つ人:危機回避、責任全う、責任達成を重視する

二つのフォーカスは以下のような特徴となって現れます。(前者が「獲得型」)
・賞賛を得たいか、リスクを回避したいか
・リスクは挑戦するものか、避けるものか
・抽象的に考えるか、具体的に考えるか
・スピードか正確さか
・そこに到達したいか、そこに滞在したいか(見切りが早いか、いつまでも続けるか)
・多くのことに手を出すか、やりたいことを最後までやるか

獲得フォーカスの人は言ってみれば短距離走者です。結果が見えやすいことには特にエネルギッシュに情熱的に力を傾けますが、長距離走は苦手です。ブレーンストーミングは得意ですが、仕事は先延ばしにしがちです。

一方、回避フォーカスの人は最初から時間を多めに見積もり、期限までに仕事を完了できるようにします。獲得フォーカスの人の抽象的な思いつきにはついていけないところがあります。

やる気への活かし方

考え方、言葉遣い、戦略、報酬など、それぞれのフォーカスによって、ピンとくるものが違います。それぞれの心の琴線に触れるアプローチをして、やる気を高めていくことが大事です。

自分と相手の傾向がわかれば良好な関係も築ける

大事なことは、「自分の持ち味で勝負する」こと。そのために、「自分と相手のフォーカスを理解」し、「それぞれが最高の力を発揮できるようにしていく」ことです。

自信:目標を達成するためには必須の要素

自信がやる気に直結することは説明するまでもありませんね。

自己肯定感

ここで大事なのが、「自己肯定感」です。自己効力感とは、望む結果を得るために必要とされる能力が自分にはあるという確信です。

バンデューラは自己効力感は4つの要素によって成り立っていると定義します。

①成功体験
②他者の体験から学ぶ
③他者からの保証や警告
④その時々の私たちの気分

最も大事なのは「①成功体験」です。特に、難しいと感じられた目標や課題をやり遂げたという体験であればさらに自己効力感を大きくします。

「②他者の体験から学ぶ」は、特に、困難だったのはどこか、逆にどこは比較的容易だったかということを知ることが役立ちます。

③④はさほど強力な効果はありません。

「ポジティブ・シンキング」の問題

ポジティブシンキングは多くの著書などで進められますが、科学的に言えば、理想の未来だけを考えることは目標達成の力を阻害し、成功確率を下げます。また、自信は、困難から目をそむけることでは得られません。

目標を達成した場面ばかりを想像して、そのための準備を何もせずに待っている人よりも、目標を達成するために乗り越えるべき障害を考え、自分にはそれを乗り越える力があると信じて対応策を検討する人のほうが、成功する可能性はかなり高いのです。

スキル向上であれ、ダイエットであれ、成功するためには、望む結果をただ想像するだけよりも、そこまでの困難とその克服をしっかり考えるほうが、成功する確率が高くなります。

やる気から見た8つのタイプ別、やる気のスイッチの入れ方(治療法)

【書評/要約】やる気が上がる8つのスイッチ(ハイディ・グラント・ハルバーソン著):やる気のスイッチの入れ方(治療法)

3つの軸で、8つのタイプを分類すると以下の様になります
自分がどのタイプか確認し、治療に努めよう。そうすることで、やる気がアップします。

①中二病:証明マインド/獲得フォーカス/自信なし

症状
・いつも引っ込みがちで、憂鬱な感じを漂わせている
・努力をしない。何をするにも面倒くさいと感じている
・明らかに自分の能力に自信が持てない
・自分自身を失敗に導いている
 仕事や勉強の成績を犠牲にしても自分のプライドを守ろうとする)
・失敗しても、それは自分の無能のせいではないと言える逃げ道を用意している
・たまにやる気を見せることもあるが、すぐにしぼむ
治療法
・成長マインドセットを持つ
・オンザジョブトレーニングで自信をつける
・獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る

②うざいやつ:証明マインド/獲得フォーカス/自信あり

症状
・自慢が多く、いつも注目されていたい
・批判を聞く耳を持たず、失敗を隠す
・すべてに飛びつく
・向う見ずである
・仲間といつも競い合っている
治療法
・成長マインドセットを持つ
・獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る

③臆病者:証明マインド/回避フォーカス/自信なし

症状
・周囲と壁を作り、いつも不安に駆られている
・プレッシャーに押しつぶされそうになっていて、予期せぬ事態に弱い
・新しい仕事には拒絶反応を示す
・自分を守ろうとする意識が強い
・ミスを犯すのを何より恐れている
治療法
・成長マインドセットを持つ
・オンザジョブトレーニングで自信をつける
・回避フォーカスを十分に活かす環境を作る

④退屈な人:証明マインド/回避フォーカス/自信あり

症状
・静かな自信を持ち、いつも注意深い
・自分の得意なことしかやらない
・変化には強く抵抗する
・ミスを犯すことをとても気にしている
・物事のやり方に対しては非常に頑固
治療法
・成長マインドセットを持つ
・回避フォーカスを十分に活かす環境を作る

⑤やる気の空回り:成長マインド/獲得フォーカス/自信なし

症状 
・意欲に満ちている
・遂行能力は低いが学びたいという情熱がある
・楽天的で自分には成功する能力があると思っている
・多くのことを引き受けすぎる
・認められることによって伸びる
・困難に建設的に対処しようとする
治療法
・オンザジョブトレーニングで自信をつける
・獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る

⑥まじめな見習い:成長マインド/回避フォーカス/自信なし

症状
・自分なりの美学を持ち、やるべきことに集中する
・今は遂行能力に欠けているが、学んで熟達する覚悟がある
・守りに強いネガティブ・シンカー
・学ぶのは得意だが行動に移すのは苦手
・真摯なフィードバックによって伸びる
・困難に建設的に対処する
治療法
・スキルを身につけ自信をつける
・回避フォーカスを十分に活かす環境を作る

⑦新星:成長マインド/獲得フォーカス/自信あり

症状 
・エネルギッシュで楽天的
・壁にぶつかるほど力が湧き出る
・アイデアの宝庫であり革新的である
・取るべきリスクを恐れない
治療法
・獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る

事を成し遂げる能力もやる気もあります。あとはそれを最大に活用することだけを考えていけばよいのです。まさに新星、スターです

⑧熟練の匠:成長マインドセット/回避フォーカス/自信あり

症状
・責任感が強く信頼できる。いてほしいときにいてくれる
・常に第二第三の矢を持って事に臨む
・ミスがない
・揺るがない専門性を持つ
・自分の周囲もともに高めようとする
治療法
回避フォーカスを十分に生かす環境を

すべてのタイプに共通する処方箋

【書評/要約】やる気が上がる8つのスイッチ(ハイディ・グラント・ハルバーソン著):やる気のスイッチの入れ方(治療法)

処方箋はシンプルです。3つの段階があります。

処方箋:第一段階

証明マインドセットから成長マインドセットへのシフトです。

[ステップ1]目標を考えるときには「成長」を意識する
まずはいつも自分がこうしたいと思っていることを書き出し、その後、成長を意識させる言葉に言い換えよう。
トリガーワード:例:学び、改善、発展、成長、前進、将来的に

[ステップ2]if-thenプランニングをする
「こうなったらこれをする」とあらかじめ決めてきましょう。
if-thenプランニングをすることで成功確率が2倍から3倍も上がると証明されています。

[ステップ3]期待値を変えてみる
[ステップ4]他の人と比べない
[ステップ5]根気よく続ける

処方箋:第二段階

この段階では、「必要なスキル」と「自信」を身につけましょう。

[スキルをつける]
獲得フォーカスの人には、オンザジョブトレーニング(OJT)が効きます。いろいろなことを体験しながら成長でき、スキルと同時に自信もつけられます。

[自信をつける]
自信をつけるときに大事なのが、「成功や失敗の原因を自分がコントロールできるものにすること」です。

成功が何によってもたらされたかを考える場合、どう考えるかは非常に大事です。

コントロール可能か・不可能か

コントロール可能:
「準備をしっかりした」「頑張った」「うまくいくように計画を立てた」「あきらめなかった」
コントロール不可能:
「優秀だったから」「才能があるから」「センスがよかったから」「ラッキーだったから」「あの人がいてくれたから」

成功の要因を、努力や計画や粘り強さなど、あなたがあなたの力で変えられるものと考えるようににしましょう。これが、自己効力感のUPにつながります。

処方箋:第三段階

この段階では、フォーカスに応じて、力を発揮する場を作りましょう。を目指しましょう。
フォーカスによって、ピンとくる戦略も報酬も環境も違います。最も力を発揮しやすい状況を整えることが大事です。

[獲得フォーカスの人が力を発揮する場を作る]
①よく褒めてポジティブで楽天的な環境を整える
②目標をはっきりと持たせる
③アイデアを自由に出させる
④彼らは何でも早く片づけたいと思っていることを忘れない
⑤大きな絵を描く
⑥決断するときにはプラス面を考えさせる

[回避フォーカスの人が力を発揮する場を作る]
①建設的な批判と悲観主義でアプローチする
②何を得るかより何を避けるべきかをはっきりさせる
③出されたアイデアを分析し、評価をしてもらう
④じっくりと仕事に取り組めるようにする
⑤具体的な指示を与える
⑥決断をするときにはマイナス面を考えさせる

この最終段階には終わりがありません。常に自分やその人のフォーカスに合った環境を作っていくことがやる気の持続につながります。

最後に

今回は、ハイディ・グラント・ハルバーソンさんの「やる気が上がる8つのスイッチ」を紹介しました。

やる気があるかどうかは、人生の成功を大きく左右するベースとなる力です。個々のスキル・技術習得以上に大事な力なので、是非、自分に合った「やる気」の高め方を知り、自己肯定感を上げていきましょう!

以下の本もセットで読むと、より、やる気のコントロールがしやすくなります。こちらも超おすすめです。