成長株投資の開祖であるフィリップ・フィッシャー。
フィッシャーの成長株投資や投資理論は、ウォーレン・バフェットにも大きな影響を与えたと言われています。
今回紹介の本は、フィッシャーの執筆本4冊の内、本書はそのうち3冊目と4冊目を収録した本です。
タイトルや表紙を見ると、「投資哲学を作り上げる保守的な投資家ほどよく眠る」というタイトルと誤解を与えかねない装丁が残念。正しくは、以下の内容について触れられた本になります。
保守的な投資家ほどよく眠る:将来性ある会社の評価指標(特徴)
今回は、フィリップフィッシャーの投資について簡単に振り返ると同時に、本書のポイントについて紹介します。
フィリップ・フィッシャーの投資スタイル
フィリップ・フィッシャーは、企業の「成長性」を重要視した株式投資で成功をした方です。長期をかけて成長しそうな株や、自分が生きている間成長しつづける大企業を投資対象としました。
バフェットにも影響を与えたフィーッシャーの投資スタイルは、スタンフォード大学ビジネススクールの株式投資論の講座で、40年以上にわたって教えられるほどです。
中でも有名なのが、株式投資の銘柄選びにおいても参考になる、企業の価値を評価するための「15の質問」です。
1. 少なくとも数年間にわたって、売上を大きく伸ばす製品・サービスがあるか
2. 業績を牽引する製品・サービスの次に向けた一手を打っているか
3. 研究開発が成果をあげているか
4. 強い販売網・営業体制があるか
5. 利益率が高いか
6. 利益率の上昇・維持に対する取り組みができているか
7. 労使関係は良好か
8. 幹部社員が能力を発揮できる環境か
9. 幹部社員は優秀な人材が多いか
10. コスト分析や、財務分析を重要視しているか
11. 競合他社に勝る、業界で通用する特徴があるか
12. 長期的な視野の収益見通しを立てているか
13. 既存株主の利益を損なう増資の可能性があるか
14. 経営者は問題発生時に積極的に説明しているか
15. 経営者は誠実であるか
上記以外にも、「株式投資で普通でない利益を得るための10のポイント」など、投資家として学ぶべき点が多い書です。以下の記事に要点をまとめているので合わせてご確認ください。
これらを理解していると、今回紹介の本の内容理解もスムーズになります。
投資哲学を作り上げる
さて、ここからは本書の内容についてです。
フィッシャーの投資哲学は、以下の8つに集約できます。
- 長期的に利益が劇的に拡大するための計画を持っていて、他企業が参入するのが困難な内在的な質を持つ企業に投資すること
- 人気のない時期に買うこと
- その株式を、その会社の特質が根本的に失われたとき、または十分に成長したために市場全体よりも速く成長しなくなったときまでずっと持ち続けること。短期的な変化は予測が困難なので、短期的な理由で魅力的な株式を決して売ってはならない
- 配当には重点を置かないようにすること
- 間違いを犯すことは避けられないが、大事なのは間違いをできるだけ早く見つけ、その原因を理解し、繰り返さないようにすること
- 本当に素晴らしい会社の数は比較的少なく、個人投資家の保有銘柄は10~12銘柄くらいがちょうどよい
- 金融界で支配的な意見を何でもむやみに受け入れてはいけないが、頭から拒否してもいけない。自らの知性を磨いて良い判断を下さないといけない
- 投資で成功するには、一生懸命に働くこと、知性、素直さの組み合わせが大事である
私がトレンドフォロー投資派の私が個人的に最も大事だと感じたのは、「短期的な理由で魅力的な株式を決して売ってはならない」という指摘です。成長銘柄は上にも下にも値動きが激しい傾向があるため、その性質上、グリップ強く長期にわたって株を保有し続けるのは難しい傾向があるからです。
また、一方で、「人気のない時期に買うこと」との指摘もあります。通常、成長株は自分で見つけるのは困難で、多くの人は、株価が上昇し始めてからその存在に気付くのが一般的です。
これら2点を合わせると「価格がまだ低いバリュー成長株への長期投資」が大事ということになり、これら発掘には絶え間ぬ努力が必要です。これがフィッシャーの最後の投資哲学「投資で成功するには、一生懸命に働くこと」に当たると理解した次第です。
なお、これは仮想通貨投資にも当てはまります。歴史ある株式投資に比べれば、仮想通貨は市場全体が「ナスダック銘柄」のようなものです。
私は、ビットコイン、イーサリアムなど時価総額が大きい重要と考えうる銘柄の保有量を増やす長期投資(基本かったら保有、レンディングやステーキングで数量を増やす)投資を実施していますが、値動きが激しい市場だからこそ、「グリップが強い」ことが非常に重要になります。
改めて、「成長性があると考える場合は、短期で売らない」ように努めたいと思います。
保守的な投資家ほどよく眠る
さて、成長性の高い株への投資は、リスクと隣り合わせで積極的な投資と考えられがちです。しかし、企業の成長性へ投資するにも、保守性が大事であるとフィッシャーは述べます。
ここでいう「保守的な投資」とは、リスクを最低限に抑えて購買力が保全(維持)される可能性が最も高いものへの投資のことです。
本書はフィッシャー67歳の時に執筆された本ですが、死ぬまで約50年間にわたって保有し続けた“フィッシャー銘柄”モトローラに対し、なぜ当時人気のなかったモトローラを、長期保有しないではいられない優れた会社と見抜いたのかが、記載されています。
傑出した将来性のある会社に投資をするには、分析を通してリスクを回避することを大事です。その分析は、機能的要因から、経営陣など人的要因、ビジネス的要因まで多岐にわたります。本書には、それら3つの要素に関し、何が大事であるかがまとめられています。
最後に
今回は、フィリップ・A・フィッシャー 著「投資哲学を作り上げる」「保守的な投資家ほどよく眠る」の要点を紹介しました。
成長株長期投資について学べる良書ですが、1点欠点があります。それは日本語訳が難解で読みづらいという点です。
もっと、平易な文章でフィッシャーの投資法について学びたい方は以下の本をおススメします。