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若いころは危機意識もなく、何も考えずに冒険ができた。
若い頃の勢いを取り戻そうと考えるより、現在、40歳の自分ができることをやる方が、健全だと考えるようになった。
今は経験を積んだ「大局観」でさまざまな角度からアプローチできるようにと思う。

誰もが知る有名棋士、羽生 善治さん。
一手一手、判断が求められる将棋の世界。一手一手の判断も大事ながら、全体の成り行きを俯瞰し大局を見定めなければ勝利を勝ち得ることはできません。また、強い心がなければ難局を乗り切ることもできません。そんな厳しい対戦の中で、羽生さんは如何に闘う技を極めてきたのでしょうか?

選択肢が多いことは、迷いにつながる

現代社会は、知識・情報・データが山のように存在しています。それらのうちのどれを選択してどう活かすかという以前に、”取捨”すること自体が大変な作業になっています。しかし、それは決断に不可欠な要素です。
選択肢が多ければ多いほど、いろいろな可能性があるということになるが、その分、迷いや後悔は多くなることを覚えておくことが大切です。

「読み」と「大局観」

「読み」とは、ロジカルに考えて判断を積み上げ、戦略を見つける作業のこと。一方、「大局観」とは、具体的な手順を考えるのではなく、文字通り、大局に立って考えることです。

「大局観」では、「終わりの局面」をイメージします。最終的に、「こうなるのではないか」という仮定を作り、そこに「理論を合わせていく」ということである。簡単に言えば、勝負なら「勝ち」を想像します。

「ここは攻めるべきか」「守るべきか」「長い勝負にした方が得か」などの方針は、「大局観」から生まれます。複雑な状況で判断を下すときは、この「大局観」で無駄な「読み」を省略でき、正確性が高まり思考が速くなります。さらに「大局観」を身に着けると、未知の場面にも対応できるようになり、失敗を回避する方法ができ、様々な場面における重要な要素を抜き出せるようになります。

リスクを取らないことは最大のリスク

なぜ、リスクを取らないことが最大のリスクなのか?それは、今日勝つ確率が最も高い戦法は、3年も経てば時代遅れになってしまうからです。リスクを取らないことは、長いスパンでは最もリスキーなやり方なのです。

来年も再来年も勝ち続けるためには、長期的な展望に立って、新しい戦法に挑戦していく前向きな姿勢が必要です。リスクにきちんと向き合い、リスクに伴う恐怖や不安に打克つことが、永続的にリスクを取り続ける王道だと羽生さんは主張します。

「見切り」の重要性

実際の対局ではいくら深く考えても結論が出ない局面や、答えがわからない局面がよくあります。そういう場面では、著者は「いかに深く考えるか」より、「いかにうまく見切るか」に意識を切り替えます。
ブラックスワンのように想定外のことも起こります。このようなときは、「野生のカン」で立ち向かうことも大切です。

個人的に最も興味深いと感じたのは、「コンピュータと人間の将棋(判断)の決定的な違い」です。

「基本的に人間とコンピュータは反対方向に行っている。たくさんの手を考えるコンピュータと。極力手を考えない人間。その違いは鮮明だ。」

可能性のある手すべてを計算し、最善の手を探すコンピュータ
VS
実力を上げる、大局観を磨くことで考える手を少なくしていく人間

確かにこのように指摘されると、いわゆるできる人は「無駄な動き・判断がなく、それ故、アウトプットも早い」。考えているようではダメ。AIが人間の仕事を奪うと恐怖扱いされますが、この当たりに人間の生きる解がありそうですね。