「人間は自分の利益を最大化するように合理的に行動する」ことを前提とする経済学。しかし、実際の人間の行動は不合理です。だから、自己の投資の間違いを訂正する損切りができません。
本書「投資賢者の心理学」は、行動心理学を考慮した投資を薦める一冊。利益は早く確定したい、しかし損は先延ばしにしたいといった人間の素直な心理に従って投資行為を行うと「損」してしまう理由をわかりやすく説明しています。
なお、本書は、2014年3月から2015年までの日経電子版で「投資賢者の心理学」と題して、51回のコラムとして掲載されたものを大幅加筆修正してまとめられています。
わかりやすく、かつ、様々な観点からまとめられています。良書です。
今回は、「投資賢者の心理学」の要点をまとめます。
リスク≠損すること
「リスク」とは「損すること」と思っていませんか?
「リスク」の正しい定義は、投資した結果がブレる=不確実性のことです。しかし、多くの人は「リスク=損」、危険という意味と勘違いしています。まず、この間違いを正すことが大事です。
ハイリスク・ハイリターン
×:リスクの高いものはリターンも高い
○:高いリターンを求めると、必ずリスクは高くなる
ローリスク・ローリターン
×:リターンの低いものはリターンも低い
○:リターンの低いものは、小さいリターンしかもたらさない
長期投資=低リスクという勘違い
投資の教科書では、リスクを抑えるために「長期投資をしましょう」と教えられます。そのため、私たちは、長期投資をすればリスクが減ると思っています。
しかし、著者の大江さんは、「長期投資がリスクを低減する」というのは明らかに間違いと指摘。
投資期間が長くなれば、バブル崩壊に遭遇する可能性は高まるため、リスクが減るわけではないと指摘します。
では、このような認識間違いが起こるのはなぜでしょうか?これには行動心理学における「先入観=ヒューリスティック」が関係しています。
ヒューリスティックとは、人間が何かしらの意思決定をするときに、無意識に利用しているプロセスのことです。厳密な論理で一歩一歩答えに迫るのではなく、直感で素早く解に到達する方法のことです。
例えば、「知らないと後悔する」という文言を聞くと、「知らないと自分にデメリットがある」という意味を見出し、それを知るために聞いておこうと判断しますよね。
同じく、「長期投資がよい」と言われると、勝手に、「長期投資は低リスク」と判断してしまうためです。
心のままに投資すれば、必ず「損」する
人は「儲けたい」と思って投資行為を行います。しかし、心の命ずるままに投資を行えば、「損大利小」の言葉にある通り、必ず損するようになっているのが人の投資行動。利益が出ているときは確実なものにしたいと考え、逆に損しているときは先送り、あるいは、取り戻そうと賭けに出たがります。これが10回勝っても1回で大損を出してしまう理由。つまり、「損があまりにも嫌いだから、損をしてしまう」のです。
損失回避、後悔回避、ヒューリスティック、現在バイアス(先のことより今を重視してしまう)、利益確定は早めたい・・・・
普通の人が不通に感じる心理状態のままで投資をしても、なかなかうまくいかないのです。
「人の行く裏に道あり 花の山」
相場は人と同じやり方、人の心に基づく投資を行っていては儲けられないのです。
では、どうすればいいのか?
人間が自然に心の趣くままに考え、行動している限りは損から逃れることはほぼ不可能。しかし、自分の心に負けないためにできるに、特別なことはありません。
様々な投資本に記載されている、いわゆる当たり前ともいえることを愚直にこなすしか方法はないのです。
1.心の命ずるままにならない仕組みを作る
2.ルールを決める
3.体験する
4.見た目に迷わされない
5.他人を気にしない
1,2を実現する代表例がドル・コスト平均法による積立投資です。著者は、ドル・コスト平均法でリスクが低減するでけではないことを断った上で、一つの方法として紹介しています。また、損切リール、投資額のルールなどを設けることについても説明しています。
最後に
今回は、「投資賢者の心理学」の要点をまとめました。
ドルコスト平均法を愚直に実施する「積立投資」
ドルコスト平均法を愚直に行う方法の一つが「積立投資」です。
以下の特集ページにて、絶対やるべき積立投資法として、税制優遇投資「iDeCo」と「つみたてNISA」について紹介しています。まだ実施していない方は、今すぐ始めましょう。
積立投資の良書は以下にまとめています。必読本ばかりですので、ご確認を。