話を聞くことは大事。多くの人はこれを言葉では理解していますが、実際には相手の言うことを聞けていません。そのために、様々なコミュニケーションミスが生じ、人間関係にも傷が生じます。
これが会社の場合は、組織の人間関係の良さがビジネスの成功にも直結します。ビジネスを成功に導くためには上司が部下うちやかましく指導しがちですが、これでは部下に不平・不満が溜まります。だからこそ求められるのが「リーダーの傾聴力」です。
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林 健太郎さんの著書『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』は、リーダーが部下の話に耳を傾けることで、信頼関係が深まり、部下が自分で考えて行動するようになり、結果、リーダーが、自分のすべき仕事に集中できると言う好循環を生むための「聞き方」を徹底アドバイスする1冊。
本書では、部下とのコミュニケーションに悩むリーダーをターゲットに書かれていますが、会社の枠を超え、様々な人とのコミュニケーションを円滑にするベースとなる教えの書です。
今回は、著書『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』からの学びをポイントを絞って紹介します。
目次
なぜ、「傾聴力」が求められるのか?
上司が部下を指導するだけの時代は終わっています。なぜ、今、従来以上に傾聴力が必要になっているのでしょうか。
つい本音を話してしまう人は何が違うのか
聞き上手な人に、ついつい本音を話してしまう。それは、聞き上手な人は、話をHearでなく、Listenで聴いてくれるからです。
Hearは、聞き方が受け身です。言わば勝手に耳に入っている状態です。これに対してListenは、聞き洩らしがないように集中し、積極的な姿勢で聞いている状態です。これを漢字で書けば「聞く」ではなく「聴く」に当たります。
Listenは、相手の心のなかにある氷山の『海に隠れた下の部分』を引き出すような感じで聴いてくれます。故、話し手側自身が、話ながら思考が整理される感覚を覚えます。すると益々、話し手側は話すことが気持ちよくなって、つい本音までしゃべってしまうようになるのです。
傾聴の成功は日ごろの「短く、頻度の多い声掛け」
上司は、チームをうまく動かすためにも、部下との話が会話かせません。しかし、現代の会社において、まとまった時間を取ることは難しいでしょう。故、「短く、頻度を多く」 会話することが求められます。すれ違いざまに「うまくいってる?」「気になっていることはない?」といった短い声掛けでも効果が十分あります。
声がけで、「この人は何かあればいつでも話を聞いてくれる」という安心感が生まれます。大事なのは、「面談時間」でなく、部下が話しやすく感じる演出をして、言いたいことを最後までしゃべってもらうための環境づくりです。
【重要】傾聴の本質
現代における、傾聴の本質は、「部下に静かな時間を提供すること」です。
現代は、四六時中、情報が入ってくる時代です。ネットでですぐに「答えらしきもの」が見つかる現代は、人は「思考する」「考える」ことをしなくなっています。つまり、昔とは逆に「情報から切り離される時間」が貴重になっています。
そんな情報過多な現代において、傾聴は、うるさすぎる日常を遮断し、部下に「自分や、自分の課題と向き合える時間」「自分で考えざるを得ない時間」を提供する場です。情報検索をやめ、自分の考えや手持ちの情報を整理する。そんな「静かな時間」を提供するのが、オンライン時代に求められる「傾聴」の在り方 です。
なぜ、部下の本音を聞き出せないのか?
林さんは9割の上司は、部下の本音を聞き出せていないと分析します。これほどリーダーの傾聴に問題があるのはなぜでしょうか。
傾聴ができない最大の理由
傾聴ができない最大の理由は、「聞くことに【徹する】ことができない」です。
上司は、自我・経験があるが故に、ある程度、部下の話を聞くと状況がわかり、目指すべき方向性・対策が判断ができてしまうため、黙っていられず口出ししてしまいます。しかし、これでは、部下は自分の頭で考えなくなります。指示待ち人間の出来上がりです。これでは人は育つどころか、ダメになるばかりです。
口出しばかりの面談では、部下、そして、組織を強くできないのです。
部下に仕事を任せられない上司
上司の中には、心配で、部下に仕事を任せられずに、過干渉になったり、自分がやった方が確実・早いが故に自分でやってしまう人も多くいます。
このような上司は、部下との関係を「指示・命令」と「管理」でしかとらえていません。指導し育てるという観点に欠けます。
必要なのは、支持することではなく、部下に考えさせること。正しいゴールを適度に示しつつ、部下自身にそのゴールへの到達の仕方をを考えさせて、導いていくことです。部下が自分の予想したことと違う発言をするのを楽しむくらいの気持ちで話を聞けば、部下との関係性は大きく変化し、また、部下は戦力として育っていきます。
部下の話をきちんと聞かない上司
部下の話をきちんと聞かない上司は「経験豊富な自分の方が正しい」という傲慢さがあります。「年上のほうが正しい判断ができる」などという時代はとっくの昔に終わっていると知る必要があります。
上司より専門分野の知識に長けたがたくさんいます。上司自身が新しい情報やアイデアをインプットしやすい環境を作るためにも、部下とは、日頃からコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことが大切です。
部下の感情が聞き出せない理由
一方で、多くの上司は部下の感情を聞くのが苦手です。理由は、十分な信頼関係がない場合、部下は「別に何も」と答えることが大半だからです。
上司と部下の関係ができていない限り、部下が本音を語ってくれることはありません。また、面談時は、相手を包み込むような「微笑み」で、なんでも話していいという安心感を与えることが求められます。刑事ドラマの取調のように、険しい顔をしていては相手は黙秘権を行使されておしまいです。
話を聞くときの心がまえと実践法
ここからは、傾聴の実践で役立つアドバイスを見ていきましょう。
部下の話を聞くときに意識すべきこと
部下の話を聞くときは、「事実情報とそれ以外を混同せずに、しっかりと分けて聞く」 ことが大事です。ポイントは2つ。
❶「事実以外のこと」は、「感情」「思考」「推測」の3種類に分けて聞く
❷「過去」「現在」「未来」 の3つを分けて聞く
❶は部下が何を感じていて(感情)、どう考えているか(思考)、どんな仮説を立てたのか(推測) を分けて聞く。
❷は過去の体験なのか、今目の前で起きていることなのか、未来の展望や不安のことを話しているのか分けて聞くと、会話の方向性が見出しやすくなります。
価値観の押し売りをしない
価値観が異なる現代は、部下との会話を意のままにコントロールする時代ではありません。傾聴がうまくできていれば、部下は話をするうちに自分自身で自分の考えを整理できるものです。自分の考えのもとに至った計画なら、やらされ感もなく仕事に挑めます。価値観を押し売りしてはいけません。
部下の価値観を「4つの分類」し、効果的にアプローチする
人はそれぞれ価値観を持っています。価値観が異なるとベースとなる考えが異なるため、コミュニケーションで失敗を起こしやすくなります。
そのために、知っておきたいのが、人間の嗜好を4種類に分類した「ハーマンモデル」です。
どのタイプに属するかで、思考の癖、響く質問、うまくいかない原因の傾向も異なります。それぞれの特徴については、本書で詳しく解説されています。
部下の本音を引き出す「聞き方」の手順
部下の本音を引き出すためには、手順も大事です。林さんが薦める「聞き方 実践手順10」は以下の通りです。
最初は聞く
①部下に「静かな時間」を提供する
②復唱から始める
③承認の言葉を使ってみる
④合いの手を入れてみる
静かな時間を提供すると、話の内容だけでなく、話している相手の感情もよく感じることができるようになります。
承認の言葉も大事です。発言、行動、プロセス、見解に対する承認を行います。同意をしていなくても、例えば「そういう考えもあるよね」と伝えれば、それが見解の承認になります。または、「それは新しいね」 といった言葉で、同意はしていないけど、その見解も理解できることを伝えるだけでも、話の展開は大きく変わり、 部下側の心理的安全性が飛躍的に向上します。
意見・質問する
ここからは 「意見を言ってもいいかな」「質問してもいいかな」など、事前に問うてから行うことが大切です。
⑤未来を問うてみる
⑥感情を問うてみる
⑦洞察を促してみる
⑧方向性を例示してみる
⑨相手(部下)の意思を聞く
⑩笑って接する
⑤~⑩の効果は割愛するので、是非、本書で読んでみてください。
また、別章では、上司と部下の関係性による落とし穴、上司と部下の「傾聴」を難しくする要素、面談成功のステップ、上司が自分の心の声を聞く重要性 などについても、解説が続きます。部下とのコミュニケーションだけでなく、自分自身とのコミュニケーションもいかに大事がわかります。
最後に
今回は、著書『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』からの学びをポイントを絞って紹介しました。
人に限らず、すべてのものは変化し続けています。故、今日の部下は昨日までの部下と違う可能性があります。常に「常に相手に好奇心を持ち続けること」が大事です。これは部下・上司の関係に限ったことではありません。冒頭でも述べた通り、上司の聴き方本ですが、すべての人との関係構築に役立つ内容です。是非、本書を手により、多くの学びを得て頂ければと思います。
Audible 聴き放題 対象本
聞く力をUPする良書
過去に読んだ本の中から、「聞く力」を付けるために役立つ良書を2冊紹介しておきます。合わせて読んでみてください。