プロのギャンブラー・勝負師の思考は、ビジネス・投資において学ぶべきことが多い。
これは、私が多数のプロの勝負師・ギャンブラーの本を読んできた上での結論です。彼らに共通しているのは「確率思考」です。
今回紹介の著書「なぜロジカルな人はメンタルが強いのか?」の著者小林剛さんは、「サイボーグ」と言われるほどメンタルが強い麻雀のトッププロ。
成功も失敗も、めったに起きないハプニングでさえも、一定の確率で起こりうる。
やるべきは 「成功する確率」「よい偶然が起こる確率」が高い選択を重ねていくことだけ。
このように、いいことも悪いことも すべては一定の確率で起こることだと腹落ちしていれば、必要以上に人生を不安に思ったり、失敗を悔やんだりして、メンタルを壊すことはなくなります。本書では、この考えのベースとなる「確率思考」をわかりやすく教えてくれます。
今回は本書からの学びを、ポイントを絞って紹介します。
鋼のメンタルは「思考法」から生まれる
人生は「選択の連続」。そして、その選択の結果が、今現在のあなたです。麻雀も人生も、よりベストな選択を積み重ねた人が勝ち、豊かな人生を送ることができます。そして、判断時に必要となる強いメンタルは「思考法」次第で強くできます。
最適解を選べなくなる残念な理由
人生も、ビジネスも投資もギャンブルも、「いいこと」「悪いこと」が偶然起こり続けるゲームです。 ゲームの構造をわかっていれば、基本的な判断や行動を変える必要はありません。
では、なぜ、多くの人とが、最適解を選べなくなってしまうのか?それは、多くの人が、運・不運で感情を揺さぶられてしまうからです。心が揺さぶられることで、普段通りに次の一手(最適解)を導き出せなかったり、選択できなくなってしまうからです。
悪い結果を引きずるのは「論理的」ではない
小林さんは、人によって異なる心の動揺の差は「メンタルの差」というより「思考法の差」であると言います。
よく人は、「ツイていない」と言いますが、これは、過去に起こった偶然を評価しているにすぎません。 この先、何が起こるかには、本来は全く影響しません。
しかし、多くの人は、 ある悪いことが続いたとき、「次も悪いことが続くのではないか?」と錯覚します、しかし、ここに「不運は続く」根拠はありません。私たちができることは、常に、「一瞬一瞬でベストを尽くす」ことだけです。
「想定内」なら不運だって怖くない!覚悟を持て
麻雀も人生も、決断と選択の連続です。よりベストな選択をし続けた者が最終的には勝者になります。
故、「リスクとリターンを天秤にかけて、より勝利に近づく確率の高い決断を繰り返していく」のが、勝負事に対する真摯でロジカルな態度です。
大事なのは考えうる選択肢すべてのメリット、デメリットを事前にいくつも考えておく作業を実行できるか。これが、ピンチにも動じない思考訓練になります。選択肢と根拠を数多く持てるほど、あなたは強くなれます。
もし、結果的にデメリットの結果が現れたとしても、それは想定内です。不必要に動揺する必要はない、と小林さんはアドバイスします。
「理不尽」は存在しない
確率が低いことが起きた時、人はよく「理不尽だ…」と嘆きます。
しかし、それは、実際には理不尽でもなんでもなく、ただ起こるべきことが一定の確率で起きているだけ。「結果の偏り」であって、「確率の偏り」ではありません。
確率は、誰にでも公平で絶対的なものです。すべては確率通りに起きているだけです。「期待」や「願望」という色眼鏡で見てはいけませんし、不幸が起こった後、ツイてないからまた不幸が続くと考えて、必要以上に心を揺さぶられてもいけません。それこそ、自ら不幸を招き入れます。
ピンチを想定しリカバリーを備える
悪いことも一定の確率で起こるのは想定内のことです。であるなら、、それが起こったときにどうリカバーべきか、窮地に陥った場面をイメージして、どうするか考えておくべきです。
ミス・失敗すると、多くの人がリカバリーを考えるのではなく、「後悔」に苛まれ、「動揺」して判断が揺れることでどんどん深みにはまっていきます。これでは自爆します。
ただし、どんな窮地に陥る可能性があるかの想像力は、どれだけ、いろんな経験をしているか、先人(師匠・本)に学んでいるかによるところが大きい。そもそも、頭の悪い人が、考える力のない人がピンチでグダグダになるのも、事前の想像力がないことに起因します。想像できないから対策もできない。これは、自分の知識や経験を日々努力して養っていくほかありません。
逃げない者だけが勝つ
人間は弱い生き物です。楽をしたいですし、都合が悪いと、自分にとって都合がいいことを信じようとします。しかし、それでは、勝負事や人生で勝つことはできません。逃げないものだけが勝てます。
「流れが来ている」はオカルト、運が悪かったは「思考停止」
小林さんはどこまでもロジカルです。「ツイている」「流れが来ている」も科学的根拠に基づかない事象、推測、思考と一喝。「運が悪かった」という考えも思考停止を招くと一喝します。
事象と事象の間には、科学的な根拠に基づく論理性=因果関係はありません。運やツキのせいにするのは楽ですが、それでは次につながる経験・知見を得ることもできません。
数字に弱い人や論理的な思考に慣れていない人は、何か都合のよいストーリーがあると、それに酔ってしまい調子に乗ってしまう傾向があると小林さんは分析します。ストーリー性に引っ張られ、現実を見誤ってしまうのです。しかし、「願望」で因果関係をねじ曲げると、方向を見誤ります。
51対49 の「51」を選び続ける者が勝つ
同じ勝負師でも将棋の羽生善治さんなどは、著書でよく「直感」「感覚」という言葉を使います。しかし、羽生さんの「直感」とは長い間の思考の積み重ねと、経験した成功と失敗の上に成り立つ「直感」です。素人の単なるあてずっぽうの直感とはまるで違います。
選択時に「51対49」というわずかな差でも、100倍すれば、5100対4900。200もの差になります。200もの差があれば、中長期的に望む結果を出せる可能性は劇的に高まります。これこそ、確率でいうところの「大数の法則」であり、プロはこの差を十分理解しています。
「論理」だけが成長スピードを加速させる
経験則を蓄積するほど、勝つ確率がより高い選択ができますが、このような経験則は「ただ積み上げるだけ」では、あなたの武器になりません。
なぜ勝ったのか、負けたのか。理詰めで検証を繰り返したほうが、より強い経験則を手に入れられます。
このような態度で臨めば、「負けも糧」となります。そして、この負けの積み重ねが、動じない強いメンタルを作ります。
好き嫌いを排除し「損か得か」で考える
勝っても負けても「戦い方」は変えない
状況や相手に応じて、戦略をコロコロ変える人がいます。しかし、「戦い方」は変えない方がいい。そのときの目的を達成するためにベストな戦略を、淡々と続けていくことが大事です。
淡々と続けると経験値が貯まります。ピンチや不安を抱えた状況でも、課題を因数分解することで、もっと小さな課題に分解されて、行くべき道が明確化できます。そうすると、気持ちも安定します。
自分が望まないことが起こったとき、呆然としたり、自暴自棄になるのではなく、どっしりと構える。そして、淡々と今まで通りを通す。冷静に大所高所から現況を眺めてみれば、死地に活路を見出すきっかけが見つかるかもしれません。ピンチ脱出を願って一発逆転を狙う「奇策」をとりたくなる気持ちはわかりますが、ここは、普段通りに打つのが最適解です。
持っていて損しかない「感情バイアス」
戦略を立てるコツは、達成したい目的に対して「損か得か」で考えることです。しかし、そこに「個人的なこだわり」「好き嫌い」といった、感情バイアスが挟まると、冷静に「損得」を考えられなくなります。
例えば、「より高い手でアガりたい」という気持ちは、感情と損得が重なり合うところです。 このような時、本人は損得で判断しているつもりで、欲という感情が作用しており、失敗につながります。
感情バイアスは、選択の質を下げるばかりでなく、メンタルが揺れる原因にもなります。 これらはできるだけ排除することが大事です。
見たくないものもちゃんと見る
人は見たくないものを振り返ることもなく当座け用途します。しかし、見たくない失敗も振り返ることが大事。都度、見返りをし改善点を見つける習慣をつければ、確率予測力が上がり、自然とメンタルも強くなります。
逆に言えば、こうした振り返りの作業から逃げていては、成長はできません。メンタルも弱いままです。
成功も失敗も、「よい偶然」も「悪い偶然」も、どれくらいの確率で起こりうるか把握していれば、どんな結果でも受け入れやすくなります。結果、平常心は間違いなく高くなります。
「結果オーライ」を放置しない
失敗を振り返るだけでなく、「結果オーライ」「ヒヤリ・ハット」も見直すことが大事です。なぜなら、たまたま実害がなかっただけで、いずれ、ミスを犯す可能性がある課題が眠る場所だからです。
・「こういう打ち方はまずいな」という普段のクセを見つけて、修正していく
・ある程度視点を絞ってモデル化し、応用できるものを蓄積していく
この2つの視点で分析を行いましょう。さらに、勝ったときもさらに良い手があったのではないかと改善点を考察できれば、さらにスキルは高まります。
「理屈バカ」にはなるな
理論や技術を学ぶことは大切ですが、それを机上の空論にしないためには、試行錯誤と経験が必要です。 細かいセオリーを例外を含めて知識として教えていくのではなく、また、単なる脳内シミュレーションで終えるのではなく、実践で体験していくことが大事です。大きな筋(流れ)を大事に、実際に経験して、初めてそのセオリーの真意がわかるものです。
思考を鍛える訓練
私が本書を読んで、日ごろの生活に取り入れてみたいと思ったのが、「なぜ私はそれをするのか?」「本当にそれをしてよかったのか?」と自問する習慣です。
なんとなく常識で当たり前のようにしていることを一度疑ってみる。特に、今の世の中の動きは早く、「今の常識も非常識」になるスピードも速まっています。疑ってみると、もっと最適な方法が見つかるかもしれません。
だいたい、2つの選択肢があったとき、「10対0でどちらかが一方的が正解」ということはほとんどありません。多くは、「6対4ぐらいで、どちらかといえば一方が正解に近い」ということが多いでしょう。都度、選択する際に、A:B=7:3だからAを選んだと、自分で数字化しておくと、自分の判断のスキルが高まると思われます。
ちょっと、トライしてみたいと思います。
最後に
今回は、小林剛さんの「なぜロジカルな人はメンタルが強いのか? 」からの学びを紹介しました。いろいろと学びがあるので、是非、手に取って読んでみられることをおすすめします。
ロジカルであると、不必要な悩みは大きく減ります。数字に強くなるべく、日々の生活に上手に確率思考を取り入れ精進したいと思います。