若いころは危機意識もなく、何も考えずに冒険ができた。
若い頃の勢いを取り戻そうと考えるより、現在、40歳の自分ができることをやる方が、健全だと考えるようになった。
今は経験を積んだ「大局観」でさまざまな角度からアプローチできるようにと思う。

誰もが知る有名棋士、羽生善治九段。現在は、若きエース藤井聡太棋士の健闘ぶりが凄いですが、それでも、羽生棋士の通算成績は1485勝638敗(2021年9月16日公開分)で、勝ち越し数は他の棋士を圧倒。その勝率は約7割にも上ります。

一手一手、判断が求められる将棋の世界。しかし、一手一手は大事にしつつも、全体の成り行きを俯瞰し大局を見定めなければ勝利を勝ち得ることはできません。また、強い心がなければ難局を乗り切ることもできません。そんな厳しい対戦の中で、羽生さんはどのように闘う技を極めてきたのでしょうか?

勝負の世界に生きる人の哲学本は、投資で必要になる判断力・直感力・決断力・集中力・強いマインドを作るうえで非常に勉強になります。

今回は、羽生善治さんの著書「大局観」から投資にも通ずる哲学を学びます。

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なぜ、大局観が必要なのか、どうすれば身につくのか

なぜ、大局観が必要なのか、どうすれば身につくのか

戦局の一手一手に求められるのは、「読み」。ロジカルに考えて判断を積み上げ、戦略を見つける作業のこと。一方で、「大局観」とは、具体的な手順を考えるのではなく、文字通り、大局に立って考えることです。

なぜ、大局観が必要なのでしょうか、どのようにしたら身につくのでしょうか。羽生さんの考えは以下のようなものです。

選択肢が多いことは、迷いにつながる

現代社会は、知識・情報・データが山のように存在しています。それらのうちのどれを選択してどう活かすかという以前に、”取捨”すること自体が大変な作業になっています。選択肢が多いほどいい、という単純なものではありません。

選択肢が多ければ多いほど、いろいろな可能性があることになりますが、その分、「迷い」や「後悔」は多くなることを覚えておくことが大切です。時には、以下に短時間に、次の一手・戦略を絞り込むかが大事になります。

AIに勝る人の脳力とは

基本的に人間とコンピュータは反対方向に行っている。たくさんの手を考えるコンピュータと。極力手を考えない人間。その違いは鮮明だ。

上記が羽生さんが考える、「コンピュータと人間の将棋(判断)の決定的な違い」です。
可能性のある手すべてを計算し、最善の手を探すコンピューター VS 実力を上げる、大局観を磨くことで考える手を少なくしていく人間
 
確かにこのように指摘されると、いわゆるできる人は「無駄な動き・判断がなく、それ故、アウトプットも早い」。考えているようではダメ。AIは今後確実に人の仕事を奪っていきますが、AIに駆逐されないためにも感・大局観を高めていく必要があります。

大局観を身につけるには

では、大局観を身につけるには、どのようにしたらいいのでしょうか。

「大局観」では、「終わりの局面」をイメージするとよいと羽生さんはアドバイスします。最終的に、「こうなるのではないか」という仮定を作り、そこに「理論を合わせていく」ということです。簡単に言えば、勝負なら「勝ち」を想像します。

大局観を身につけることで得られるメリット

「ここは攻めるべきか」「守るべきか」「長い勝負にした方が得か」などの方針は、「大局観」から生まれます。複雑な状況で判断を下すときは、この「大局観」で無駄な「読み」を省略でき、正確性が高まり思考が速くなります。

さらに「大局観」を身に着けると、未知の場面にも対応できるようになり、失敗を回避する方法ができ、様々な場面における重要な要素を抜き出せるようになります。

これは、現代社会で起こる「想定外」への対処のためにも大いに役立つはずです。

リスクを取らないことは最大のリスク

リスクを取らないことは最大のリスク

勝負をするとは、ある意味、自分からリスクを取りに行く行為です。しかし、羽生さんは、「リスクを取らないことが最大のリスクだ」と言います。その真意はどういうことなのでしょうか。

優位性のある戦法の賞味期限は短い

激しい競争社会で成功したいなら、勝たなければなりません。リスクをとらない行為は、ある意味、時間に負けをゆだねているのと同じです。

将棋に限ったことでなく、今の社会では、、今日勝つ確率が最も高い戦法は、3年も経てば時代遅れになってしまいます。ビジネス、投資、その他において「優位性のある戦法」の賞味期限はますます短くなっています。

リスクを取らないことは、長いスパンでは最もリスキーなやり方です。

勝ち続けるためには

勝ち続けるためには

挑戦と強い心

来年も再来年も勝ち続けるためには、長期的な展望に立って、新しい戦法に挑戦していく前向きな姿勢が必要です。リスクにきちんと向き合い、リスクに伴う恐怖や不安に打克つことが、永続的にリスクを取り続ける王道だと羽生さんは主張します。

「見切り」の重要性

実際の将棋の対局ではいくら深く考えても結論が出ない局面や、答えがわからない局面がよくあります。そういう場面では、著者は「いかに深く考えるか」より、「いかにうまく見切るか」に意識を切り替えます。

ブラックスワンのように「想定外」のことも起こります。このようなときは、「野生のカン」で立ち向かうことも大切です。

最後に

今回は、羽生 善治さんの大局観を紹介しました。

羽生さんに限らず、勝負の世界に生きる人の本は、投資家の判断力・直感力・決断力・集中力・強いマインドを作るうえで非常に勉強になりまず。以下の本も非常に参考になるので、是非、読んでみてください。