人よりも感情や刺激に敏感で、繊細な性格を持つ人を指す「繊細さん」。
他人にやさしく、高い感受性・共感性などの良さを持ちますが、相手の感情や思考・場の空気を勝手に感じ取ります。結果、「そんなこと気にしなければいい」ができず、ストレスを抱えます。
なぜ、そんなことを気にしてしまうのか。どうすれば、気にしない自分になれるのか――
今回は、月下ナツさんの本『「そんなこと気にしなければいいのに」ができない人のための本』からの学びを紹介します。繊細さんは、心が軽くなる1冊です。さらっと読めます。
目次
「そんなこと気にしなければいいのに」ができない理由
繊細さんは、HSP(Highly Sensitive Person:高感受性者)とも呼ばれ、人口の20%いると言われます。生きやすくなるために何が必要なのでしょうか。
その努力・我慢は何のため?
繊細すぎるなら、繊細じゃない私になればいい―。そう考えるかもしれません。
しかし、繊細さんは、先天的な生まれ持っての基質。「繊細じゃない私になる」ことは、いわば、「肌や瞳の色を努力で変える」と同じぐらい困難です。
目指すは、繊細であることを受け止め、「繊細だけど悩まない私になる」ことです。
「繊細だけど悩んでいない人」と「繊細で悩んでいる人」の違い
「忍耐強い」「努力家」という言葉は、一般的にいい意味です。繊細さんも該当者です。
しかし、我慢は、何にとっていいのでしょうか? 何のために 必要なのでしょうか?
繊細さんは、特に考えることなく、無意識で「人としてそうした方がいい」と考えます。これは、小さい頃からの「努力しなさい」「我慢しなさい」とつり込まれてきた結果です。無意識に苦行に耐える体質になっています。何でも努力・我慢すればいいというものではありません。
自分の幸せにつながることに対して努力する
努力すれば、必ず報われるというのは幻想です。努力も我慢も、自分の好きなものを追求するための道具となって初めて、人生を輝かせることができます。
世の中には「毎日がとても楽しそうな人」「生きやすそうな人」がいます。彼らは自分にとって不要と思った我慢はしない人たちです。しかし、彼らは努力をしていないわけではありません。むしろ積極的に努力しています。
彼らは、自分にとって、信念でやりたいと思うこと、心から楽しいと思うこと、その先に幸せの可能性があることに対して努力しているのです。
今すぐ「人として(なんとなく)こうあるべき自分」を追いかけるのやめましょう。これが、「繊細だけど悩まない私になる」ための第一歩です。
繊細さんの特徴:『交流分析』からの分析
交流分析とは、アメリカの心理学者エリック・バーン博士が創始した人間関係の心理学理論です。交流分析では、性格を5つのキャラクターで分類します。ここから繊細さんの特徴を見ていきましょう。
5つのキャラクター
キャラクター | 特徴 |
---|---|
きびしい父親 Critical Parent CP | ・批判的な親の姿勢を持つキャラクター ・他人に対して厳しい態度をとり、指摘や非難をすることがある ・規則を守ることや他人を評価することに重点に置く ・強すぎると威圧的・偏見が強い・人を小馬鹿にする ・弱すぎるとけじめにかける・自己主張ができない |
やさしい母親 Nurturing Parent NP | ・肯定的な親の姿勢を持つキャラクター ・他人に対して保護的、思いやりがある ・親切で面倒を見る姿勢を持ち、指導や助言を行う ・強すぎると過保護体質 ・弱すぎると共感力が低い人 |
成人 Adult A | ・現実的で客観的な姿勢を持つキャラクター ・客観的に状況を判断し、合理的な行動をとる ・強すぎると感情を表さない・人間味がない人 ・弱すぎると感情が先に出る・計画性に欠ける・現実を考えない人 |
自由奔放な子ども Free Child FC | ・直観力、創造性、好奇心を子どもの姿勢を持つキャラクター ・自発性、表現力をもつ ・強すぎると自己中心的・短気・軽率・無責任 ・弱すぎると自由な表現ができない・たてまえが多くなる・面白みに欠ける |
従順な子ども Adaptive Child AC | ・適応的な子供の姿勢を持つキャラクター ・協調性、忍耐力があり、礼儀正しい ・相手の期待に合わせた行動をとることが多く、受容されることを求める ・強いとよい子・優等生、強すぎる ・我慢しすぎる・人の目を気にしすぎる・依存的・自信がない ・弱すぎると我慢をしない・配慮に欠ける・自己中心的になる |
「AD:従順な子ども」の特徴が強すぎると
繊細さんは「NP:やさしい母親」と「AC:従順な子ども」の特性を強く持つ人です。
幼少より、常に周囲に気を配り、親・先生・周囲の人の期待を裏切らない行動を選択し続けて大人になります。いわゆる「いい子」です。
しかし、レールや正解のない人生を生きなければならない大人になるとどうなるか。自分軸で物事を決めることができず、自分がやりたいことも分からなくなってしまうのです。
CPとNP、FCとACはそれぞれシーソーの関係です。繊細さんは、NP、ACに隔たったバランスを改善すればいいのです。特にキーになるのは「FC:自由奔放な子ども」のように生きることです。
背負い込むことだけが優しさではない
著者の月下ナツさんは、「自分が背負い込むことだけが優しさではない」と気づいたことが、「繊細だけど悩まない私になる」転機となったと言います。
例えば、人を助けたいと思った時、自己犠牲(背負う)で対処するのではなく、「もっといい方法・アイデアはないか」と違った方法で考えてみたり、みんなに意見を聞いたり、負担をシェアする方法を考えてみたりすればいいのです。
「気にする自分」とうまく付き合う
子供の頃から長期にわたってACの自我状態で生きてきた人にとって「自分軸で物事を決める」のは難題です。そのため、「自分はどうしたいんだろう?」と立ち止まることはできても、その答えを見つけられないことは珍しくありません。
この課題をどのように乗り越えればいいでしょうか。
【基本】毎日笑顔で過ごすために大事な3つのこと
まずは、日常生活で以下を心がけることです。❶❷がむずかしければ、❸を実践しましょう。そうすれば、おのずと❶❷も達成できます。
❶ポジティブシンキングの訓練
❷完璧主義をやめる(すべてに応じることをやめる)
❸正しさよりも、自分が何をしたいか・どうしたら笑顔でいられるかを考えて行動する
【さらに改善】『気にする自分』の5つ改善法
さらに、改善するには、以下を実践してみましょう。
・心の声を掘り起こす―自分年表の作成(その時、あなたはどうしたかったのか書き出す)
・疲弊しにくい環境に身を置く(身を置く環境を選ぶ)
・【自己否定・他者肯定】をやめ、自分を大切にする
・【自己肯定・他者肯定】で考え行動する
・ニコッと笑ってご馳走様(善意に恐縮しすぎず、感謝の念を示す)
以下、分かりにくい項目の補足です。
疲弊しにくい環境に身を置く
繊細さんの人口の20%なら、5人に4人は非繊細さんです。繊細さんは、共感性の高い「繊細さん同士」でいた方が、ストレスを抱えずに済みます。
例えば、自己肯定感が高い人たち、オラオラの人たちが多い職場、出生競争が激しい職場、数字を追い求める職場などは、繊細さんにとってつらい職場となります。一方、人の心に寄り添うような職場・職業なら、仲間である繊細さんは多いはずです。
【自己否定・他者肯定】をやめ、自分を大切にする
今すぐ、「自分が我慢すれば、波風を立てずに済む」 という考えはやめましょう。「自分が我慢」は「自己否定・他者肯定」。これを続けると、自己肯定感がどんどん低くなります。
最後に
今回は、月下ナツさんの本『「そんなこと気にしなければいいのに」ができない人のための本』からの学びを紹介しました。
ストレスは健康の最大の敵です。自分を追い込まないためにも、本書を通読されることをお勧めします。月下ナツさん自身が、同じ問題を抱えていらした方なので、共感しながら読み進められるはずです。
なお、自己肯定感を高めたいなら、以下の本もどうぞ。