学ばなければ…
多くのビジネスマンは学ばなければと考えています。ここで言う「学び」とは多くの場合は「インプット」。「これから何を学ぶか? 何を得るか?」だけが重要視されています。
しかし、変化の激しい時代の大人にとって、インプット以上に大事なのは、「Unlearn(アンラーン)」だ、と提言するのが、今回紹介の本です。
「アンラーン」とは、これまでに身につけた思考のクセを取り除き、さらなる学びや成長につなげる学び方です。
私たちは、「思考のクセ」「ルーチン」を持っています。発想や選択をある程度のパターン化は迅速な決断・行動につながる一方、変化への対応が遅れたり、自己成長が阻害されるというリスクも持っています。この「思考のクセ」を捨て去ったうえで、学び直す。それが、アンラーンです。
今回は、柳川範之さん、為末大さん共著の『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』からの学びをポイントを絞って紹介します。
「アンラーン」とは何か:学びの質を高める方法
なぜ、今後、益々、アンラーンが大事になるのか。それは、「人生の長期化」と「時代の変化の早さ」に理由があります。
なぜ今、「アンラーン」が必要なのか
人生100年時代。私たちは、「セカンドキャリア」「サードキャリア」を考えざるを得ない時代に生きています。このような時、過去の知識・ルールにとらわれて次のステップを考えてしまうと、未来の選択肢が非常に狭くなってしまいます。
一方、時代・情勢の変化は益々加速しています。新しい変化に前向きに対応するためには、いったんクセのない状態に戻った上で、考えることが欠かせません。
まずは自分を見つめ直し、今までに身につけてきた「こうなれば、ああなる」的なパターン化された「思考のクセ」見つける。そして、それを取り払って、柔軟な発想ができるようになる。これが大事です。
誰もが持っている「思考のクセ」とは?
「思考のクセ」とは、「環境に適応してパターン化された意思決定プロセス」のことです。「AならB」と反射的に出してしまうような「思考の固定化」であり、これはほぼ無意識に行なわれています。
このような判断・選択は、スピーディーな判断を可能にします。しかし、一方で、「思考の固定化」していると、状況が変わり方向転換が必要になっても気が付けません。
「思考の固定化」──自分がカルチャー(環境)対応に染め上げられ、フレキシビリティ(柔軟性)がなくなっているかもしれない── と、気づきましょう。
ゴールは変わる。求められる柔軟な変化
現代社会においては「ゴールが変わる」「フィールドが変わる」というのは、日常茶飯事です。実際には「ゴールが明確になっている」ことのほうが珍しい。状況に応じて、最適解を導き出さなければならないことが大半です。
とすれば、一直線に速くゴールにたどりつくことを目指すのではなく、その都度、変化するゴールに柔軟に向き合って、素早く適切に方向転換することを大切にしなければなりません。
・「思考のクセ」から解放される
・固定化されたパターン化をいったん忘れる
・一点に集中し過ぎていると気づいたら、立ち止まる
・これまでの「当たり前」や既存の概念を意識する
大事なことは、「今までに積み上げたものの上に、さらに高く積んでいくことが正しい道だ」という発想から抜け出すことです。
アンラーンは「木の剪定」。視界よくして考える
アンラーンのイメージは、「木の剪定」。茂りすぎた木の「余分な枝や葉」を切り落として、風通しを良くしたり成長を促すのによく似ています。人の場合、剪定=アンラーンにより、視界が開け、新たに学び、柔軟に対処する余裕が生まれます。
私たちは、の自分が知らない間に「あれも」「これも」と抱え込んでいます。だからこそ、「何を残して何を捨てることが未来を活かすことにつながるのか」を考えることが大事です。
経験や学び──財産にするか、足枷にするかは自分次第。
「自分のなじんだ狭い世界で成功してきた人」ほど、アンラーンが大事です。本書には、「アンラーンの必要度が分かるチェックリスト」が掲載されています。
自分に余白を持つためにも必要なアンラーンを
変化以上に見分けるのが難しいのがチャンスです。本当ののチャンスは、「これが本当のチャンスだ!」とわかるような形ではやってきません。多くの場合、ぼんやりとした可能性にしか見えません。
つまり、チャンスをつかむには、「チャンスをつかむ技術」より、「チャンスだと気がつけるか」のほうが大事です。
チャンスは、頭・心がチギギチな状態では気づけません。自分に余白を持つためにもアンラーンは必要です。頭・心・時間に余白があれば、チャンスを見出す確度は高まり、また、方向転換に対処することが可能になります。
【実践】アンラーン:自分を「新しく学べる状態」に整える方法
アンラーンは、【自分自身の「思考の固定化」に気づく】ことから始まります。
「固定化した思考」を発見し、解きほぐす方法
無自覚のままに固定化・パターン化された思考・行動・動作がに気づく2つの方法が以下。
①無意識にやっていることの洗い出し
②「いつも」「これまでは」「通常は」の思考にとらわれていないの洗い出し
無意識にやっていることとは、深く考えずに自然とやっていること、身体が半ば自動的に動くようなことです。
自分自身が現時点では何ら問題を感じていないことに関しても、あえて見直すことがとても重要です。
❶「このルーチンが、本当に『今も』最適なのか
❷改めてその理由を突っ込まれたとき、納得のいく説明ができるか
自問し、言語化してみることです。これにより、自分本来の思考や、「今の」自分にとって「ほんとうに」大切なことが見えてきます。
「小さなアンラーン」を習慣化する
生活をしていると「ハッ」と驚くことがたくさんあります。自分の中での価値観の揺らぎ を感じたとき、その時がアンラーンのチャンスです。
小さな驚きや気づき(多くは「違和感」)を無視したり拒んだりするのではなく、自分の「当たり前」のほうに少し疑問を持ってみるのです。このような「小さなアンラーン」を繰り返すことで、 視界が少しずつ広がり、新しいものが突然目の前にやってきたときにも、適応していく柔軟性を育てることができます。違和感に敏感に、必要によってメモっておきましょう。
①「これは、今の会社・環境でなくとも通用するだろうか」と問う
②今の仕事に就こうと思った理由を問い直す
③専門外・業界外の人と話す
④多様な人、異質な人と接する
⑤自分がどう見えているか、どうなったらよりよいと思うかを、周囲にインタビューする
⑥「行動を言葉だけ」で、「自分の仕事を専門用語抜き」で表現する
⑦副業をする
⑧「早くなじもう」「それらしくなろう」としない
会社・環境に順応しすぎると、成長は止まります。「変化し続ける」世の中で、強くしなやかに生きるには、今の環境でなくとも通用するか、見極めておく必要があります。
また、今の仕事に就こうと思った理由など、「自分の本質に関わる問い」を投げかけることも大事です。改めて自分を問い直すことが、会社への順応とのギャップへの気づきとなります。
また、私たちは、「自分のことは自分がいちばんわかっている」と思っていますが、「自分だけに見えていないこと」が、実はたくさんあります。それを気づかせてくれるのが、人の助言であり、価値観の異なる人とのコミュニケーションです。
「学びのチャンス」を逃さないために
もう一つ、何歳になってもアンラーンを実践し、学び続けていくにあたって重要なことがあります。それは、「人の話を最後までちゃんと聞く」ことです。
経験を積んだ人ほど、聞いているつもりでも、無意識のうちに、勝手に「これは大事」「これはいらない」と自己判断で整理します。また、話を途中で区切ります。これでは、学びのチャンスは得られません。
アンラーンを阻む壁の乗り越え方
人の多くの意思決定は「パターン」です。パターンは「これまで通り」であり、私たちは、「これまで通り」を快適・安心と感じます。
しかし、それは、〝かりそめの安心感〟かもしれません。
アンラーンを阻む7つの壁
パターンが固定化しないようにアンラーンし続けるには、それを阻害する「壁」を知っておくことが大事です。
壁①「このままでいいんじゃないか」
壁②「今あるものを手放したくない」
壁③「せっかくここまでがんばってきたのだから」
壁④「自分のやり方でやりたい」「他人には分からない」
壁⑤「あの人の言うことなら間違いない」
壁⑥「だって、これが好きなんだもん」
壁⑦誰の中にも潜む様々な「バイアス」
「このやり方が好き」「これが好き」を持つことは悪いことではありません。しかし、「好き」と「慣れているから心地いい」ことの線引きがしっかりできているか、意識することが大事です。
アンラーンの壁を乗り越えるヒント:無条件に選ばない
簡単なようでいて、自分自身の思考のクセに気づくのはなかなか困難です。どうすれば気づけるか、著者らのアドバイスは3つです。
自分の中に「優秀なコーチ」を持つ
スポーツのコーチは、技術指導者であり、モチベーターです。このようなコーチを自分の中に持つことです。
技術指導面は「フィードバック」。自分のやったことを常に振り返ることです。「この一件で、自分は何を学んだのか?」に真摯に考えることによって、ただの反省で終わることなく解決策を見出すところまで自分を導くことができます。
モチベーター面は、どうすると自分のやる気が出てくるか知るために、自分自身に対して「いい質問を浴びせる」ことです。
自分自身を再定義する
自分自身を定義している言葉は、時代とともに変えていく必要があります。元の定義にこだわり過ぎないで 勇気を持って、「今」と「これから」に合うように「ずらしてみる」ことです。本質的な部分を変える必要はありません。
変化し続ける強さの源「コア」を知る
違和感をきっかけに、変化に気づき、それに対応していくことの重要性は既に述べました。しかし、これは「後手」です。「先手」で動くには、自分の「コア」を知っておく必要があります。
自分の中で「コア」にあたる揺るぎないスキルと、カルチャー対応から生じた「クセ」を整理して切り分けておく。すると、コアが切り分けられているからこそ、環境変化に先手で向かっていけるようになります。
最後に
今回は、柳川範之さん、為末大さん共著の『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』からの学びをポイントを絞って紹介しました。
日本は真面目に必死でがんばっている割に「幸福度」が低いのも、固定観念・ルール・過去の成功体験が邪魔をして、或いは、周りに気遣いをしすぎて、「変化できない」ままだからです。余計なものをそぎ落として余白ためにも、小さな積み重ねの逆、「小さな崩し」は大事です。
本書には、「アンラーン」を人生とキャリアの武器にする方法についても解説されています。ここでまとめたことは、本書の一部です。是非、本書を手に取って、新しい学び方を学んでみてください。