【書評/要約】ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか(ピアーズ・スティール 著)(★5) 先延ばしの代償の甚大さに気づけ!

先延ばしとは単に物事を延長することではなく、「自分にとって好ましくない結果を招くと知りながら、自発的にものごとを延長すること」。

すぐ行った方がいいこと、気になって頭がモヤモヤしていることも十分承知。
にも拘わらず、人は締切りが迫るという現実を遠ざけ、ますます逃避行動にのめり込む。現実をねじ曲げ、目標を引き下げる…

こんな自分に日々悩んでる人も多いのではないでしょうか。私もそんな一人です…
そんな方に、是非とも読んでいただきたいのが、ピアーズ・スティール著『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』。

本書は、人の宿命とも言える先延ばしが起こるメカニズム、先延ばしの結果として被る極めて大きな代償を明らかにしたうえで、悪癖を克服するための戦略を教えてくれます。

今回は、著書『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』からの学びをポイントを絞って紹介します。

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【重要】先延ばしの方程式

【書評/要約】ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか(ピアーズ・スティール  著)

先延ばしの方程式

まずは、私が本書で最も大事だと思った「先延ばし方程式」の方程式から紹介します。

先延ばしの方程式

モチベーション =(期待×価値)/ (時間 × 衝動性)

つまり、先延ばしを防ぐ(減らす)には、
❶「モチベーション」を高めることが大事であり、
❷ ❶の実現には「期待」と「価値」を大きくする、 あるいは、「時間」と「衝動性」を小さくする必要がある こと示しています。

先延ばしを防止する4つの要素

では、4つの構成要素「期待」「価値」「時間」「衝動」とは何なのでしょうか。

先延ばしを防止する4つの要素

期待 :成果・ご褒美が得られる確実性
価値 :成果・ご褒美の大きさ
時間 :成果・ご褒美が得られるまでにかかる時間
衝動性:誘惑への忍耐力

人は、意思決定の際、合理的に判断するなら「期待と価値を掛け合わせた値」を基準に判断を下します。しかし、人間は不合理です。締切りまで時間がある(あるいは、達成に時間を要する)とやる気は湧きませんし、目の前に誘惑があると衝動が大きくなり、モチベーションは下がります。

また、どんなに成果に価値があっても、それを達成できる見込み(確実性)が低いと、最初からあきらめてしまうので、モチベーションは上がりません。

さらに、衝動性が強い人は、時間に対する敏感さが高いので、輪をかけて先延ばし方程式の分母が大きくなって、モチベーションが低くなってしまうのです。

自分の「先延ばしのタイプ」を知る

先延ばしにはタイプがあります。例えば以下のようなタイプがあります。

タイプ傾向特徴
どうせ失敗すると決めつけるタイプ「期待」が低い・自信や前向きな考え方が欠如(自己肯定感が低く、学習性無力が強い)
・失敗経験が災いし、やり始める前に「ダメだ」と決めつける
・ダメだ…と思っているので、失敗しやすい
・「俺はその気になっていないだけ」と自己正当化
課題が退屈でたまらないタイプ「価値」が低い・課題に対して楽しさ(価値)を感じにくい
・「仕事が退屈」という思考が強い
・人から言われると、気持ちが萎える
・義務や責任を負うのが嫌い
目の前の誘惑に勝てないタイプ「衝動性」「時間」が高い・すぐに誘惑に負ける
・「いま、この瞬間」だけを考えて行動しがち
・将来の目標や、遠くの締め切りは、「今そのとき」になるまで無視する

自分の先延ばしタイプを知っておくことは重要です。どの要素が強いかを知ることで、「今、私は、●●の理由で、先延ばしをしようとしている」と気づけます。本書には、タイプテストが掲載されています。

なぜ、先延ばししてしまうのか

なぜ、先延ばししてしまうのか

なぜ、今すぐやった方がいいと分かっているのに、先延ばししてしまうのか。
そこには、脳の進化・メカニズムが関わっています。

サボる脳のメカニズム

ヒトには、古い脳が支配する「本能」と新しい脳が支配する「理性」があります。
先延ばしは、簡単に行ってしまえば「本能」が勝ってしまうので起こります。

脳の種類特徴
本能
(古い脳
=辺縁系)
・視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚を通じた直接的な刺激により活性化
 =「今」を優先する
・瞬間的・自動的に反応するので、そのプロセスに意識が介在しづらい
反応が速いだけでなく、影響力も大きく、優先される
理性
(新しい脳
=前頭前野)
・ヒトの思考を司る
・抽象的な概念、目標・計画が考えられる
・「どういう行動を取ればどういう結果になるか」考えられる

先延ばしは生物の進化の副産物

本能か理性か――― 判断をする際、脳では辺縁系と前頭前野のせめぎあいが起きています。

ただ、本能の方が基本的には強い。それは、動物も人も最大の命題は「生きて命を繋ぐこと」であり、そのために必要なのは「本能的に基づく行動(食べる、危険を避ける、子をつくる など)」です。

では、現代はどうか。狩猟採集民時代のように、外敵に襲われる危険はなく、食べ物はお金さえあれば簡単に手に入ります。つまり、現代では、環境の変化のどに脳のメカニズムが変化していないので、むしろ、本能の衝動性が弊害となっているのです。ある意味、先延ばしは、生物の進化の副産物と言えます。

ちなみに子ども・若者は、誘惑に屈しやすいですが、それは、前頭前野がまだ十分に発達していないからです。だから、親は子供の前頭前野の代役を務める=指導・注意が必要なのです。

先延ばしの結果、失うもの、悔やむもの

先延ばしの結果、失うもの、悔やむもの

先延ばしを助長するのは、「誘惑の強さ」「誘惑の近さ」です。現代社会は刺激に溢れ、刺激との距離も近い。さらに、個人主義の傾向が強まり、他人に遠慮せずに自分の利害を優先する傾向も高くなっています。

つまり、誘惑への抑制を効かせづらい環境が整っています。しかし、この先延ばしの沼にまった先には、甚大な代償待っています

罪悪感と後悔の日々

先延ばし人間には何が待っているか――――。すぐ処理する人たちに比べて、貧しく、不健康で、不幸せを感じやすい人生にやりやすい。

衝動に負けず努力する一瞬の苦労以上の苦しみ… つまり、長期にわたって後ろめたさを感じ、さらに、その幸福に大きな苦労をしなければならないという負担が待っています。

先延ばしで最も失うのは「成功」

人生の主要な先延ばしは大きく「成功」「自己改善」「親密な人間関係」の3つにカテゴリーに分けられます。

この中で、最も先延ばし傾向が強いのが「成功」ジャンル。学び、キャリア、資産形成に関する努力を先延ばした結果、人生で失ったもの、手に入れられなかったものに心当たりのある方は多いはずです。
この部分は非常に大事なので、別記事にてまとめています。

先延ばしが生み出す経済的損害は甚大

調査によると、米国人は1日8時間労働の内、2時間を先延ばし・先送りで浪費していると言います。年間にすると414時間が無駄になっています。

すると、企業、国が被る損失はいかほどになるか。計算は割愛しますが、米国で1年間に企業と国家が払う代償=損失は10兆ドルと試算されます。極めて大きな経済損失です。

また、一方で、「企業」「国」には先送りがつきものです。あらゆる先延ばしの共通的な特徴は「意思と行動のギャップ」です。大きな目標が掲げられても、大体は、目先の問題にとらわれ、より重要な問題は先送りされます。

最大の先延ばしは「国の膨らんだ借金」「環境問題」「資源ん枯渇」です。国の先延ばしのツケは個人にも回ってきます。日本は国の借金が他国に比べて突出して多いことを考えると、日本人はぐずぐずしやすく、先送りしやすい体質を持っていると言えるのかもしれません。

いずれにせほ、私たちは、個人としても社会全体としても、先延ばしが原因で途方もなく大きな代償を支払わされています。これは、人類の歴史が始まったときからずっとそうです。それほど、早めに行動することは人間の性質を考えれば難しいのです。

先延ばしをいかに克服するか

先延ばしは人間の性(サガ)とわかっても、甚大な代償を少しでも軽減するためには、先延ばしを少しでもお克服する必要があります。

本書では、先延ばし克服する行動プランが3テーマ、合計13つ紹介されています。以下はポイントを私なりにまとめたものです。詳細は、是非、本書で学んでください。学ぶ価値は大いにあります。

先延ばし克服の行動プラン

項目対策
自信喪失と自信過剰の最適バランス -「どうせ失敗する」を克服する
❶成功の螺旋階段・まずは、小さな成功体験の積み上げで、自己肯定感を上げる
・成功体験からくる自信でモチベーションを上げ、成功の好循環を作る
・コツは課題を細分化し、手の負えるサイズにすること
・マイナス思考の悲観主義と能天気な楽観主義の適度なバランスが必要
❷鼓舞される物語・仲間・成功体験記など、心を鼓舞される映画、伝記などにふれる
・前向きな思考の人と付き合う
❸脳内コントラスティング法・自分にとって理想的な人生の未来像を明確化する
・その未来像を魅力的と感じる理由を具体的に思い描く
・理想の自分と現実のギャップをクリアにする
・ギャップを埋めるために、やるべきことを明確にし、やる気を湧かせる
❹失敗を計算に入れる・自信過剰は、深刻な課題をも軽く考えさせる(対応遅れは=先延ばし)
・自信過剰の取り締まりに、適度な悲観主義を導入する
・自分が先延ばしに陥る定番のパターンをリストアップし、見えるようにしておく
・危険なパターンに陥りそうなところに近づかない
・ピンチからの復旧プランをあらかじめ用意しておく
❺先延ばし癖を自覚する・計画の実行後回しにして困った経験を思い返す。先延ばし行動を日記にとどめる
・自分の最大の弱点が意思の弱さだと認識する
・一度でも先伸ばすとズルズルと先延ばしを許すことになると認識する
やるべきことに価値を吹き込む -「課題が退屈」を克服する
❻ゲーム感覚・目的意識・退屈な課題は後回しになる。課題を「自分の意思を試すゲーム」にする
・将来の大目標を目先の課題に結びつける。1歩1歩ゲーム攻略する意識を持つ
・「失敗したくない」ではなく、「成功したい」と考える
❼エネルギー戦略・疲労は物事への興味を薄め、手強い仕事をことのほか苦痛に感じさせる
・意思エネルギーに余裕があるうちに、誘惑から自分を守る方法を整える
・午前中や昼前後の最も効率のいい時間に最も難しい課題に取り組む
・運動し、健康に気づかい、規則正しく寝る
❽生産的な先延ばし・今実行すべきなのに先延ばしし続けてる重要課題は何か、
 まずはそれをはっきりさせる
・最重要課題を先送りする代わりに、副次的課題を処理する
❾ご褒美効果・褒美リストをつくり、課題に取り組むのが楽しくなるようにする
・お気に入りのBGM、コーヒーなども、ご褒美になる
❿情熱を燃やせる仕事・やりたい仕事に就くことは、先延ばしを減らす
・転職が難しければ、せめて嫌でない仕事ができるように努力する
現在の衝動と未来のゴールを管理する-「誘惑に勝てない」を克服する
⓫ プリコミットメント戦力・プレコミットメントで、退路を断つ
・まずは、どういう誘惑が自分に待ち受けているのかを把握する
・敵の正体が分かれば対処法を大きく分けて3種類
 ①誘惑を手の届かない場所に追いやる。遠ざける
 ②欲求が膨れて妨げになる前に欲求を満たすように心がける
 ③誘惑に屈すると不愉快なことが起きるようにペナルティを課す
⓬ 注意コントロール戦略・気が散る原因に策を講じる。方法は3つ
 ①誘惑の対象に悪いイメージを抱くように自分を仕向ける
 ②誘惑にさらわれた時は、例えば以下のように考える
 例)ダイエット中のチョコレート⇒脂肪・砂糖の塊
 ③誘惑物を思い出させるきっかけを排除する。身の回りの整理整頓はその一助
⓭ ゴールを設定する・ゴール達成の指標をわかりやすくする
 「なにを成し遂げるべきなのか」「いつまでに実行すべきなのか」を具体的にする
・長期のゴールは短期のゴールに分割する
・同じ場所・同じ時間で行動を習慣化させる(ジムなど)

最後に

今回は、ピアーズ・スティール著『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』のポイントを紹介しました。

本書には、様々な先延ばしの具体例が紹介されており、正直、耳が痛いです。しかし、それが、大きな気づき・反省につながります。

本書で散々述べられているように、「先延ばしの克服」は脳の構造的に難しい。しかし、少しでも克服すれば、必ず、人生は、今よりもよくなっていきます。

自分が欠点を持つ人間なのだと認めてそれを前提とした対抗策を取り入れる。

完璧を目指す必要はありません。まず、「やらなくちゃ」と頭の中にモヤモヤしていることを1日1個でも攻略していく。そう、努めていきたいと思います。私の人生を変える1冊となりました。