ぐだぐだ要領を得ない話にイラっとした経験は誰にもあるはず。こんな人は、たとえ名刺の肩書が立派でも「頭のよさ」は感じられないものです。
説明とは理解度のアウトプット。その人の知性が丸見えになる場です。
では、複雑なことを整理してわかりやすく説明する「説明力」を身につけるにはどうしたらいいのか?
それをわかりやすく教えてくれるのが、齋藤孝さんの著書『頭のよさとは「説明力」だ』
説明力を伸ばすのには、理解力以外にも複数の力が求められます。本書では、基本となる3の力と、それをさらに強化する様々なトレーニング方法がわかりやすく紹介されています。
今回は、齋藤孝さんの著書『頭のよさとは「説明力」だ』からの学びを、ポイントを絞って紹介します。
目次
説明力とは何か
「この人、頭がいい」というとき、評価しているのは「理解力」です。複雑なことを理解・整理できる人を指しますがが、説明はアウトプットなので、理解力だけでは説明はうまくなりません。では、どのような力が必要なのでしょうか。
先に結論を述べると、説明力が高い人とは次のような力を併せ持っている人です。
❶人の時間を無駄にしない「時間感覚」
❷内容の本質をつかむ「要約力」
❸具体例を挙げる「例示力」
よく理解している人は、複雑なことであっても、シンプルに整理して、わかりやすく順序立てて話します。
例えば、何かのトラブル処理の際も、「こうすればいいんですよ」と、本質的な部分、結論から教えてくれます。しかも、長々とは説明しません。そして、時に、すぐに腑に落ちる上手な具体例を使って、わかりやすく教えてくれます。
3つの能力を伸ばす
説明力高い人が併せ持つ3つの力を個別に見ていきましょう。
「時間感覚」を鍛える
ほとんどの人は、自分が1分間でどれだけのことを話せるか、15秒だったらどれだけ話せるのかといったことを知りません。これを知ることが先決です。
時間感覚は、「1分間スピーチ」などの実践で、自分の発言を「時間」で管理するクセをつけましょう。訓練あるのみです。
chuu
「要約力」を鍛える
要約力とは、ことの本質・ポイントを的確にズバッと表現する力です。
chuuba
ポイントを述べた上で各論に入れば、聞き手は話がどこに向かっているのかがわかり、安心して聞けます。このとき、相手が知りたい部分を把握したうえで、相手のレベルに合わせて説明を行います。
話が下手な人・話の要領を得ない人は、自分の話したいと思った箇所を優先的かつ重点的に説明しがちです。さらに、相手の理解度レベルを考えることもなく話します。相手が「わかった!」と思うには、1~10まですべて話すことをやめてポイントを絞り込んだ方が、がわかりやすい説明につながります。
まずは、話のポイントは3つに絞りましょう。「3つ」という明確な目安を定めると、他の要素を切り捨てることも容易になります。また、伝えるときは、3つの関連性、優先度を明確にして提示しましょう。
「例示力」を鍛える
例示とは、「相手がまったくわからないものを、そわかるもので説明する」ことです。概念的なもの、形のないもの・ことも、「例」を使って説明してあげると、聞き手の理解が進みます。
また、「見ればわかる」というように、もし、現物を見せられるものなら、現物を見せるのが最強です。
【実践】上手な説明にはルールに従え!
上手な説明は、前述の3つを使って、ルール(順序)に則って説明すると、自然にできるようになります。
❶まず、一言でいうと〇〇です :本質を要約し、一言で表現
❷つまり、詳しく言えば〇〇です:ポイントを最大3つ。重要度・聞き手の優先度を考慮。
数字を含めると、説得力が増す
❸具体的に言うと〇〇です :例示。エピソードなど、経験などで補足
❹まとめると〇〇です :最終的まとめ
以下では、シーン別に3つのトレーニングを紹介します。
【まずはじめに】1分間トレーニング
上記順序に沿って、「1分間」を目安に簡潔にまとめる訓練をしましょう。この時、以下にも意識を払いましょう。
■話の冒頭
❶の説明冒頭の一言要約は、人の心をぐっと引き寄せるキャッチフレーズを意識するとより効果的。単なる平凡な要約では、聞いている人の心が動きません。聞き手の興味・関心に注意を払い、「聞いている人は、どう言えば心を動かされるのか」から考えて、キャッチコピーを作りましょう。
出だしから相手を引きつける「通説But説明法(しかし、実は〇〇)」も効果的です。説明をするときには、まず相手に興味の興味を誘うことも大事です。話のはじめで「つまらないな」と思われてしまうと、真剣にきいてもらえなくなります。
■話の中盤
話の中盤では、以下の点に注意しましょう。
・全体のなかで、どの部分を話しているか常に明確にして話す(事柄同士の関連性を明確化)
・感情表現も取り入れる(相手に刺さる)
・比較で説明(比較のポイント、共通点、異なる点を明らかにする)
プレゼン練習トレーニング
プレゼンに限ったことではありませんが、説明の盛り込みすぎはNGです。まとめる際には、説明とは、言葉を尽くして丁寧に言うことではないことを意識。「相手のわかることだけ」「いま必要なことだけ」にポイントを絞ってプレゼン準備を行いましょう。「わかる。なるほど!」という感覚をテンポよく与えることが大事です。
・問いかけを説明の推進力に :聞き手が話に引き込まれやすくなる
・わかりづらい箇所は説明は後回し :いつも十分な説明時間があるとは限らない
・専門用語を使いすぎない :ある分野に詳しすぎる人が陥りがち
・聞き手に理解度確認 :「ここまでわかりましたか?」
・自分のエピソードを盛り込む :わかった感につながりやすい
・聞いて「得した」」と思える話題を盛り込む
日常生活に行うトレーニング
久しぶりにあった人の場合は「近況報告」、はじめてあった人とは「自分自身について」話すことが多くなります。よく話す内容は、説明力トレーニングを兼ねて、用意しておくのがおすすめです。話が盛り上がり、自分に興味を持ってもらうことにも役立ちます。
・「お変わりありませんか」、「最近、調子はどうですか」といった問いの答え
・自分について語る際のエピソード(趣味、経験、エピソード)
【実践】さらに説明力を上げるトレーニング
説明力UPのトレーニングは、日常生活の様々なシーンに盛り込めます。そんな、さらに説明力を上げるトレーニング方法を紹介します。
15秒説明から始める
私たちは、1分と言われても、その時間間隔がありません。普段から、ストップウォッチで時間を図り、自分の時間意識を磨きましょう。そして、はじめは1分間トレーニングより実践が容易な、1つのネタを15秒で話す「15秒トレーニング」を行いましょう。15秒のパートを4つ組み合わせれば、1分説明になります。
15秒はあっという間ですから、「えーっと」や冗長な説明はNG。「15秒単位のなかにどれだけの意味が詰め込めるか」意識しましょう。
先生となるのが「テレビCM」です。単なる言葉による説明だけでなく、映像の使い方や、フリップの使い方、歌も利用なども勉強になります。
子供にもわかるように説明する
子どもへの説明は、「平易な説明」が必須である、「平易な言葉に言い換え」は、意味や本質を理解していなければできません。子どもへの説明練習を繰り返すことで、必然的に本質への理解が深まり、わかりやすく翻訳する能力や語彙も鍛えられます。
人の説明を採点しながら聞く
説明力を向上させるためには、人の説明を第三者として客観的に聞くことがとても勉強になります。ここでも、CMと同じくテレビ番組の出演者の説明は参考になります。
参加型にする
相手の心を動かすような上手な説明には、聞き手参加型の説明も一つの方法です。ただ、聞くだけでなく、実際にやってもらう、体験してもらう方法です。
体験型の学習は、10年、20年たっても覚えていたりするものです。実体験は非常に強い説明方法なのです。最近は、用紙も配らず、パワーポイントの説明で終わるものも多いですが、自分の手を動かし書き込ませるよう、説明していくことも大切です。
対面での説明時、相手に忘れてほしくない内容があるときは、渡した資料に手描きでマークしたり、手描き説明を加えて渡してあげるのも有効です。読み込まなくても、資料を見た瞬間にポイントが目に飛びこんでくるように、「一目瞭然」してあげることが狙いです。例えば、医療現場での病状説明などには最適です。書き込みが加えられた資料は、資料のポイ捨ても減らせます。
最後に
今回は、齋藤孝さんの著書『頭のよさとは「説明力」だ 』からの学びを紹介しました。
長い説明をする人の特徴に「そもそも…」から話が始まることがありますが、本人もゴールがわからないまま話がグダグダ続く典型です。日ごろから、相手にゴールがわかるような話し方、説明の仕方ができるように、注意を払いたいと思います。
なお、齋藤さんは、説明力トレーニングに「本のA1 1ページ要約」をおすすめしています。特に、新書の要約はおすすめで、学生への授業でも実践しているそうです。1冊の本をわかりやすくまとめるための要約テクニックも紹介されているので、是非、本書を手に取って、さらなる学びを手に入れてください。