そんなことを「家族との付き合い方」にフォーカスして教えてくれるのがトリセツシリーズで人気の黒川伊保子さんの「家族のトリセツ」です。
家族に対しては遠慮がないので、ちょっとした事もイライラの元になりやすい。しかし、欠点を排除しようと相手を怒ってもさらにイライラが募るだけ。欠点は長所の裏返しでもあるので、特に子供の場合は能力をつぶすことにもなりかねません。
夫婦仲をよくし、子どもの能力を伸ばすためにも、「脳の働き」を知ることが不可欠。一見マイナスに見える要素も、脳には必要。脳には無駄なことは少しも無駄なことはありません。家族が弱みを補完し合う、人生チームなのです。
これがわかると相手に寛容になり「愛おしい家族」「帰りたくなる家」が手に入り、幸せな人生が手に入れられます。大いに学びのある本です。今回は、今回は本書からの学びの一部を紹介します。
:脳の特性を理解する
なぜ家族にストレスを感じてしまうのか。その根底には、人間の最も強い本能「生存本能」、そしてそれを動かす「脳」が大きく関わっています。
男性脳・女性脳
なぜ、夫婦喧嘩は起こるのか。それは、男性脳と女性脳では根本が違うからです。この違いは狩猟時代から「人類という種」が命をつないでくるために勝ち得た進化ですから、まず、この違いを素直に受け入れなければなりません。
■男性脳
遠くの目標を見定めたら、それ以外が意識から外れる(目の前のことは見えなくなる)。
■女性脳
3メートル圏内を綿密にチェック。圏内のちょっとした変化も見逃さない。
上記、男女で異なる脳の違いがあることは極めて大事です。このような違いを獲得したからこそ、毎日がサバイバルな古代人は、家族を守り、命をつなぐことができました。
男女で異なるタスク管理の「世界観」と「手順」
上記、男女の脳の違いは、現代社会でも大切な役割を果たしています。一般的にですが、男性、特にできるビジネスマンは、高い目的意識を持ち客観的にモノを見られる人が多い。行処理工程で重要なクリティカルパスを意識して、計画的・生産的・合理的に物事を行います。
一方、女性は家族内の変化に敏感に気づき、子育てしながら、膨大な量の家事をテキパキとこなします。これに必要あのは、計画性よりも、場当たり的に目の前にある問題を同時並行で次から次へと対処していく能力です。
このように、男女ではタスク管理の「世界観」と「手順」が全く異なるのです。
妻は男性の家事不得手を多めに見よう
だから、妻は男性が家事が不得手であることは多めに見る必要があります。また、男性が家事を手伝ってくれる場合も、作業中の手元を見ないのがイライラしないコツ(見ていると要領が悪くてイライラする経験のある方は多いはず)です。男性が失敗したとき「あれば、こうすればよかったのよ」とさりげなく、かつ、優しく諭してあげた方がずっとうまくいきます。
さらに大事な「とっさの対処」の違いが家族を守る
このような脳の違いは、男女の「とっさ時=危険発生時(生死の際)」の思考・行動の違いにも表れます。
そもそも、大前提として、危険な時、脳は全方位の神経回路をフルで動かしていては機敏な動きが取れません。必要な部分を一転集中で動かさないと、感知・反応能力「感性」が全体的に弱体化されてしまいます(脳がとっさに流せる神経信号の数は有限)。
だからこそ、家族に危険が迫ったら、一般的に男性は、遠くの危険物に瞬時に照準を合わせて対処、一方、女性は目の前の大切なものから一瞬たりとも意識をそらさないように努めことで、大切なものを守る。ものの見方、考え方、ものごとの進め方がまったく違う男女が集まっていることで、家族はリスクに対して強くなれるのです。
夫婦も、自分が苦手なことを相手が補ってくれていると思えば、相手を優しい気持ちを持って接することができるのではないでしょうか?
生存戦略的に大事!弱点を容認し合おう
私たちの脳は、生来の優先回路を持ちながら、生きる環境によって、それを調整して生きています。そして、それは、遠いものを見ると近いものが見えなくなるように、両方を同時に使うことはできません。
男性は問題解決型、女性は共感型と言われたりしますが、「問題解決」と「共感」は同時に行うことができません。合理的過ぎると創造力に欠、ぼんやりしすぎると、現実処理力に欠けてしまいます。脳は「完全無欠」にはできていない。だから、生存戦略的観点から、男女は惹かれ合うのです。
生物学的に、男女の脳は、免疫に関与するHLA遺伝子の型が一致しない相手に発情するように作られています。だから、夫婦で暑がり・寒がり、おっとり・せっかちなど、真逆のパターンの組み合わせになることが多い。これが喧嘩のもとになってしまうのですが、お互い違うからこそ、子孫の汎用性がさらに広がり、ウイルス・外敵から生き残ることができました。
つまり、人類の生存戦略上、弱点を容認しあうことはとても大事。 男女の最小単位でもある「家族こそ」大事にすべきなのです。
家族のイライラを軽減するコツ
男女の脳の違いを受け入れることが大事なことはわかりました。では、家族のイライラを軽減するコツはないでしょうか。
「やり方」を見直す
家族に対するイライラ。それは、家族の「欠点」です。これを直そうと、あれこれと注意する結果、家族がギクシャクします。
さて、ここで、残念なお知らせですが、「家族の欠点を直そう」としてもそれは徒労に終わります。脳の性質上、脳の個性はけっして治せません。だから、大事なのは、「家族を変えるより、やり方を変えること」。
夫婦喧嘩の元凶になりやすい「●●しっぱなし」も、相手の根本姿勢を変えようとするのではなく、導線を見直す、置き場所を変えるなどの「やり方」を見直すことが大事です。
家族ストレスを減らすコツ「甘やかし」
感性が弱体化すれば、個性が消えるので集団生活はうまくできます。高度成長期この没個性化がうまく機能しましたが、現在は「個」が大事な時代です。人工知能が益々活躍の場を伸ばすこれからの人間の仕事は「個性の発揮」です。「好きでたまらないものを探し出せ」「自分が本当になりたいものは、心と直感が知っている」ものに従って生きる必要があります。
こんな時代においては、当然、家族の在り方も変わります。 「世間の目」を判断基準にして、家族を断じる必要はありません。「隣りの●●ちゃんは…」「●号室の旦那さんは…」を他者を比較に出して相手を叱る・怒るのはやめましょう。
コツは「家族の甘やかし」。多少の欠点は治してもらったとしても、欠点を愛おしいと思う視点を忘れないこと、「世間」を敵に回しても、家と連帯を深める方が大事です。
「家族を甘やかす」の効用 :失敗が勘・センスを創る
家族を甘やかすということ言葉に違和感がある方も多いと思いますが、「家族の失敗を受け入れる」とも言い換えられます。ここからは、「親と子」の関係を中心に失敗の計り知れない効果について見ていきます。
結果にコミットしすぎる親の弊害
親は、子どもの幸せを願って、子どもの教育に熱心になりすぎるきらいがあります。しかし、「結果にコミットしすぎる親を持つ子は一流にはなれない」と指摘するプロがいます。
理由は、親が結果に一喜一憂すると、子どもは失敗を恐れるようになってしまいます。すると、本人の向上欲で頑張るのではなく、子どもはその親の顔みて頑張るようになってしまうのです。結果、失敗を恐れて、失敗するようなことをしないようになります。つまり、果敢にチャレンジしなくなるのです。
「失敗」は脳に不可欠
ニューラルネットワーク・ディープラーニングでは、膨大なデータを与えて、パターン学習を繰り返します。
この学習過程において面白いのは、成功パターンを要領よく取り揃えて学習させると、学習時間は短縮されますが、あえて失敗させて回路にショックを与えるようにすると、混乱してして学習時間が長くなるものの、失敗を経験させた方が「新事象への対応力」が格段にUPする点です。人間の脳をモデル化したニューラルネットワークの結果は、まさに、「失敗は成長の元」を示しています。
これからの時代、求められるのは、教えられた正しいことをそつなくこなす優等生ではなく、正解どころか命題もない世界では道を切り開いていく人材です。
失敗して痛い思いをすれば、寝ている間に要らない場所に電気信号を流さないように脳は最適化されます。失敗という経験を積み重ねることで、とっさに使うべき回路を正しく絞ることができる=直感的な「勘」「センス」が働くようになるのです。
「失敗を恐れずに挑戦する」のではない。「失敗をするために挑戦する!」 自分の好奇心の赴くままに、新しい扉を開きましょう。
成功・賞賛より、失敗・確信を
センスがいい、勘がいい、発想力がある、展開力がある。このような能力は、知識(成功事例) の上書きでは決して手に入らりません。自ら失敗して痛い思いをすることで、手に入れる能力です。
失敗して、痛い思いをして、また立ちあがって…脳にとって、それ以上のエクササイズはありません。
成功は一度キリ。しかし、失敗して手に入れた「センスのいい脳」は、その後何度も我が身を助けてくれます。我々は成功・承認・賞讃を求めて「他人の思惑」を生きる人になってしまいがちです。この生き方では、さらなる「承認」を求めて心の飢餓地獄を生きることになります。だから、「失敗」を忌避したり、恐れたりしてはいけません。失敗は自分の「確信」を強めてくれます。
正しい失敗の仕方:志は高く、結果に無頓着
戦略を必要とすることは、成功することより、失敗からのほうが学ぶことが断然多い。しかし、失敗のショックが大きすぎると、怖くなって再チャレンジ(反復学習)ができなくなります。では、どうしたら次につながる上手な失敗ができるでしょうか。
脳を最大限に活性化する失敗法は以下の通りです。
❶失敗を恐れず、挑戦すること
❷失敗してしまったら、潔く失敗を認め、きちんと胸を痛めること(脳が失敗したと認知することで、回路の書き換えが起こり)
❸「今夜、頭がよくなる」と信じて、 清々しい思いで眠ること
一言でいうなら「志は高く、結果に無頓着」です。この真逆「志が半端で、結果に執着」(失敗を回避した一方で、結果にこだわる) だと、脳がセンスアップしないので、同じ場所を堂々巡りすることになります。
親がまず、成果主義から自分を解放する
成果主義においては「失敗=悪」になります。しかし、人を成長させるのは失敗です。だから、子どもの失敗に苛立たず、成功に有頂天にならず、子どもが胸を痛めれば、共に痛がり、歓びもしみじみと共にすることが大事です。
失敗しても、「あの戦略はよかった」「あきらめないあなたを誇りに思った」と言ってあげれば、子どもは自発的に頑張るようになり、また、親の存在に感謝の念も生まれるはずです。
【まとめ】愛おしい家族・帰りたくなる家
人は、顕在意識では、相手の長所に惚れます。しかし、潜在意識では、相手の弱みを愛おしがります。恋が愛に変わるのは、後者が前者を超えたときです。
人は、「自分なしでは生きていけない」という相手の思いに強い快感を覚えます。故、弱い人を容易に突き離すことができません。だから、最初は、恋は、きれい、頭がいい、男らしいなどの惚れから始まっても、恋が愛する理由は「弱点」の方にあります。
惚れて、なおかつ、愛おしい。そんな極上の関係を築くには、長所と弱点のセットが必須です。弱点ばかりではただのダメ男・ダメ女ですが、弱点ゼロの相手は息苦しくなります。
弱点はまさに「チャームポイント」。互いが、弱点を見せられるようになるとお互いの愛おしさは増します。だから、相手に弱みを見せると同時に、相手の弱点をゴリゴリ怒ったりせずに、愛しましょう。そうすれば、人間関係は優しさで溢れます。
とは言っても、このような優しさがわからない、さらには、利用しようとする人もいます。そういう人に遭遇したときは、離れればいい。本当に優しい人は、「優しくない関係」にも執着しません。だから、いつも優しい人と一緒にいられます。
さて、ここまでをまとめます。帰りたくなるような居心地のいい家とは以下のような家です。
・失敗したとき、痛みに共感してくれ、「私も、できることがあったはず」と悔やんでくれる
・ともに善後策を考え、安らかな眠りをくれる
・ありのままの自分を、穏やかに認めてくれて、小さな幸せを共に喜んでくれる
そんな人間関係が溢れる家です。毎日帰るその場所が優しい場所であるように努めましょう。(これは、家に限ったことではありません。会社、その他、どんな人間関係でも当てはまります。)
最後に
今回は、黒川伊保子さんの著書「家族のトリセツ」からの学びを紹介しました。
上記で紹介したのはごく一部。家族にこそ必要な、4つの「やってはいけない」など、まだまだ、家族との関係をよくする教えが満載です。
本書からの私の大きな学びは、「人生チーム」である家族との付き合いにおいても、「人類の生存戦略としての脳の特性」を知ることがとても大事だということです。
脳の特性を知って生きるか、知らずに生きるか…これだけで人生の幸福度には圧倒的な差が出ます。私は「脳を喜ばす方法」をいくつも手に入れたおかげで、人生ラクになりました。
以下は、脳について学ぶことができる本の紹介です。ご参考になれば、幸いです。