【書評/要約】意思決定の心理学 ~脳とこころの傾向と対策(阿部修士 著)(★4)
▼シェア&フォローする▼

人生は「意思決定」の連続。
お金の損得、他人との付き合い、道徳的な善悪など、私たちは日常生活で常に意思決定を迫られます。そして、時に悩み、悩み、或る時には、頭ではやめた方がいいとわかっているのについやってしまうなど、様々な間違いを犯します。

なぜ、悩んだり、誤った意思決定をしてしまうのでしょう?
我々、自分の「こころ」をわかっているようで実はよく分かっていません。故、より良い&スピーディーな意思決定には、脳とこころの癖や傾向を知ることが求められます。

本書「意思決定の心理学」は心理学と脳科学の最新の研究から、さまざまな具体的事例や実験の結果を紹介しながら、わたしたちの意思決定のメカニズムを探る一冊。マシュマロテスト、トロッコジレンマ、歩道橋ジレンマ、損失回避性、疲労、ブドウ糖、依存症等、意思決定のメカニズムと影響を与える要因を徹底的に検証しています。

株価を見つめ取引する投資家にとって、価格変動(情報)は私たちに絶え間ない「意思決定」を求められ、それらに私たちは翻弄され、時にはパニックに至ります。
正しく行動=利益につながる意思判断→行動をするためにも、意思決定のメカニズムを知ることは非常に価値があると言えます。
chami
chami

理性と情動の対立

意思決定の多くの場面では、こころの中で以下の2 つのシステムが機能しています。

意思決定のもとになる2つのシステム

①速いこころ:素早く湧き上がる「情動や欲求」
②遅いこころ:時間をかけた思考に基づく「理性や自制心」

「速いこころ」と「遅いこころ」

2つの心は以下のように定義できます。

システム1「速いこころ」
直感的・情動的な反応、本能的な欲求の発現を支える。論理性よりも直感に依存する。
 
システム2「遅いこころ」
合理的判断や自制心など、意志の力によるこころの働きを支え、システム1 の働きにブレーキをかけようとする。これを働かせるには集中力が要り、別のことに気をとられるとうまく機能しない。

この2つのシステムによる心の動きは「二重過程理論」と呼ばれますが、これを端的に表す研究の一つが、保育園児が目の前のマシュマロを食べずに我慢できるか、意志の力を試す「マシュマロテスト」です。

速いこころと自制~マシュマロテストの結果から

マシュマロテストは子ども時代の自制心と、将来の社会的成果の関連性を調査した大変有名な実験です。

4歳児に「目の前のマシュマロを15分間食べるのを我慢できたら、2個にしてあげる」と伝えて立ち去り、その子が我慢できるのかをみるというシンプルな実験。ここで試されるのは、「目の前の欲求を我慢することで、将来の大きな成果を得る」ことを理解し、食べたいという「欲求を自制・コントロールできるか」です。

マシュマロ

目の前のマシュマロ、15分食べずに我慢できる?

この結果は、3人のうち2人がたった15分間が待てずに食べてしまいます。これから学習・成長を重ねていく4歳児を対象にしていますが、その後の人生ででは、我慢できた子の方が将来人生で成功しやすいという結果が出ています。

我慢できた子供の将来傾向

・青少年期には、他の子供より強い自制心を持ち、理性的な判断を下す能力にも優れる
・我慢できた子供たちが中年期になった頃、脳活動を調べると、脳の前頭前野(衝動の制御や論理的思考を担う領域)の活動が高い

「遅いこころ」、自制心の限界

システム2の「遅いこころ」を働かせるには、ある程度の集中力を必要とします。何か別のことに気をとられていると、うまく機能しません。一度に処理できる量には限界があるのです。自制心には限界があるのです。

睡眠不足や飲酒も、「遅いこころ」の働きを弱めます。睡眠不足は集中力を低下させるばかりか、「早いこころ」のコントロールも奪い、エラーが顕著になります。故、寝不足だったり疲れていたりすると、誤った意思決定をしがちで、あとで悔やむことになります。

どうやって「速いこころ」と「遅いこころ」をコントロールするか?

上記のこころの2つのシステムからわかる通り、理性と情動のバランスがどうにも取れない局面があることを理解しておくことは、自分のこころと付き合うために非常に大事で、こころのバランスを俯瞰することに役立ちます。

上記を整理すると、マシュマロテストで我慢できなかった子供は、「速いこころ=情動や欲求)」をコントロールできなかった子供、我慢できた子供は「速いこころ=情動や欲求」をコントロールし、「遅いこころ(理性や自制心)」で意思決定した子供です。

では、「情動や欲求」をコントールするために、どのように「理性や自制心」を働かせたらよいのでしょうか?

結論は次のようになります。

結論

・欲求の対象を抽象化したり、欲求の対象から意図的に気をそらせたりする。
・俯瞰的に2つのこころの働きをとらえ、遅いこころをサポートする。

簡単に言えば、「我慢の対象から気持ちを他のこと/もので紛らわす・気をそらす」です。

「気をそらす」なんてなんて、あいまいで適当な解なんだ!と思った方も多いと思いますが、「気をそらす」というのは非常に大事なテクニック!我慢できない対象物から、気をそらし自分を遠ざけることで、誤った判断をすることを回避できます。

これは大人も日常生活で大いに使えるテクニック!
例)
ケーキ食べたい… →散歩に出かける
トレードでのポジポジ病 →必要以上にポジりたくなるようなら、チャートを閉じる。☕ブレークする 等
chami
chami

最後に

今回は、阿部修士さんの「意思決定の心理学 ~脳とこころの傾向と対策」を紹介しました。

自分のこころの取扱説明書的な本です。読んでおくと、今の自分のこころを俯瞰的にみることができ、よりよい判断に役立つ一冊となりました。
脳や心理を知ることは自分を知ることにつながり、それが、自分を成功に導くための指針となります。非常に有益なので、是非、手によって読んでみてください。