元敏腕トレーダーのジムクレイマーが、自身のトレーダー人生を通じて学んだノウハウを個人投資家向けの投資戦略としてまとめた著書「ジム・クレイマーの株式投資大作戦」。
400ページ以上ある骨太な本で、投資に役立つノウハウが多数ちりばめられた株式投資の指南書です。株式投資のイロハから、市場の心理、人間の心理(強い規律と自制心)に至るまで惜しみなくノウハウを公開しています。
さて、ジムの株式投資の特徴は、短期的(スイングトレード)に利益を上げる方法から、一生かけて着実に成果を上げ続ける長期投資の方法についても紹介していること。
別記事で「短期投資=投機=トレーディングのための10のルール」を紹介しましたが、今回はジムが提唱する「長期投資のための25のルール」を紹介します。
目次
- 1 ジム・クレーマーの長期のトレーディングルール:概要
- 2 ジム・クレーマーの長期のトレーディングルール:個別解説
- 2.1 1.ブルでもベアもそれなりに成功するが、「ピッグ」(欲張り豚)は身を滅ぼす
- 2.2 2.税金は積極的に払うべし
- 2.3 3.一時に全額を投入すべからず
- 2.4 4.事業は傷んでいないのに株価が傷んでいる銘柄を探せ
- 2.5 5.分散投資は百利あって一害なし
- 2.6 6.「バイ・アンド・ホールド」ではなくて「バイ・アンド・ホームワーク」だ
- 2.7 7.パニックは一文の得にもならない
- 2.8 8.ナンバーワン企業を持て
- 2.9 9.すべてを守ろうとするものはすべてを失う
- 2.10 10.TOBに関してはファンダメンタルズを重視せよ
- 2.11 11.あまりたくさんの銘柄を保有しないこと
- 2.12 12.一時的にはキャッシュに避難するのも賢明だ
- 2.13 13.「たら」「れば」は禁物
- 2.14 14.相場の調整を恐れず常に備えよ
- 2.15 15.債券のことも忘れるな
- 2.16 16.損している銘柄を救うために儲かっている銘柄を売るべからず
- 2.17 17.希望的観測の入り込む余地はない
- 2.18 18.こだわりを捨てろ
- 2.19 19.会社のトップが急に辞めた時は要注意だ
- 2.20 20.忍耐は美徳、短気は損気だ
- 2.21 21.「テレビで言ってたから」は失敗のもと
- 2.22 22.業績の下方修正の第一報では絶対買い出動してはいけない
- 2.23 23.証券会社の銘柄推奨力をあなどるな
- 2.24 24.買う理由を誰かに説明できるか
- 2.25 25.常に市場のどこかに「上げ相場」がある
- 3 まとめ
ジム・クレーマーの長期のトレーディングルール:概要
ジム・クレイマーはその著書の中で、短期投資・長期投資の両方を薦めていますが、その基本は「長期投資」です。
本書の中でも、以下のように説明しています。
- 長期的は株式投資は他のどんな資産クラスよりもよいパフォーマンスをもたらす
- しかし、ほとんどの人は、成功するのに必要な期間、じっと我慢してゲームに参加し続けられないが故、株式投資で金持ちになれない
と説明いています。
そんなジムが提唱する「長期投資のための大事な25ルール」は以下のようになります。
- ブルでもベアもそれなりに成功するが、「ピッグ」(欲張り豚)は身を滅ぼす
- 税金は積極的に払うべし
- 一時に全額を投入すべからず
- 事業は傷んでいないのに株価が傷んでいる銘柄を探せ
- 分散投資は百利あって一害なし
- 「バイ・アンド・ホールド」ではなくて「バイ・アンド・ホームワーク」だ
- パニックは一文の得にもならない
- ナンバーワン企業を持て
- すべてを守ろうとするものはすべてを失う
- TOBに関してはファンダメンタルズを重視せよ
- あまりたくさんの銘柄を保有しないこと
- 一時的にはキャッシュに避難するのも賢明だ
- 「たら」「れば」は禁物
- 相場の調整を恐れず常に備えよ
- 債券のことも忘れるな
- 損している銘柄を救うために儲かっている銘柄を売るべからず
- 希望的観測の入り込む余地はない
- こだわりを捨てろ
- 会社のトップが急に辞めた時は要注意だ
- 忍耐は美徳、短気は損気だ
- 「テレビで言ってたから」は失敗のもと
- 業績の下方修正の第一報では絶対買い出動してはいけない
- 証券会社の銘柄推奨力をあなどるな
- 買う理由を誰かに説明できるか
- 常に市場のどこかに「上げ相場」がある
ジム・クレーマーの長期のトレーディングルール:個別解説
以下で、25のルールについて、補足してきたいと思います。
1.ブルでもベアもそれなりに成功するが、「ピッグ」(欲張り豚)は身を滅ぼす
ピッグとは「強欲な豚」のことです。
株式投資の場合、いくら高くなろうとずっと持っているべきだと思う人が圧倒的に多いですが、盲目的なバイアンドホールドは資産を溶かすと指摘。「まだいける」 という考えは危ないと提唱します。
2.税金は積極的に払うべし
金を払うのを嫌がるあまり、健全な判断ができなくなる人がいます。しかし、税金を投資判断(売却、税金の先送り)の基準にすべきではありません。しかるべきタイミングで「売って利益を実現すべき」という意味です。
3.一時に全額を投入すべからず
投資タイミングの時間分散は必要性を説いています。
ジムは401系も年額拠出額を1/12に分けて毎年投資しているのだとか。理由は、投資タイミングに関して用心深くしているのは、自分が完全無欠ではないことを自覚しているから。 明日、相場が絶対に暴落しないという保証はどこにもないとも指摘しています。
4.事業は傷んでいないのに株価が傷んでいる銘柄を探せ
長期投資の基本は、これと決めた銘柄の株価が下がれば、買い下がることです。 そのためには、「暴落時に買いたい銘柄リスト」を作成し、大幅な値引き価格、より多くの株数を取得する準備をすることが大事です。
5.分散投資は百利あって一害なし
特定銘柄、特定セクターへの集中投資は自殺行為そのもの。
時間分散にプラスし、銘柄分散をしよう。
6.「バイ・アンド・ホールド」ではなくて「バイ・アンド・ホームワーク」だ
1銘柄の分析に時間を費やし調べることができないなら、個別株に投資すべきではありません。ホームワークの狙いは、将来立ち直りが期待できない企業見極め、いつ手放す化の目処をつけることにあります。近い将来化ける可能性があるホットな銘柄をいち早く見つけることより、ポートフォリオ全体を傷つけかねない不良品から身を守るために必要です。
できないならインデックスファンドを買うか、いくつかの投信に投資し、その運用報告書をマメにチェックせよ。
7.パニックは一文の得にもならない
パニックに陥るのは最悪の投資戦略にも関わらず、多くの投資家は最悪のタイミングで損失を出して撤退してしまいます。 「落ち着いて実行する売り戦略」の方が、常により良い結果をもたらします。
8.ナンバーワン企業を持て
一般投資家のほとんどは、いわゆる「安い株」がいいと思っています。
しかし、ナンバーワン企業の方が株価収益率が高くなってしまうのは、内容が良いことの反映であり、例えば経営環境が悪くなった時、2番手以下よりはるかに迅速かつ適切に対応する経営力を持っているということです。
9.すべてを守ろうとするものはすべてを失う
全てを守ろうとするものは全てを失う、気に入った銘柄を全て持とうとするのは間違いです。
全ての銘柄をキープすることが不可能な時は、もっとも期待が持てる選ばれた銘柄が値下がりすれば買いまし、それ以外は見捨てることです。暴落時にはランクの低い銘柄を処分し、代わりに高い銘柄を買い増しすべきです。
そのために、保有銘柄を4つに順位付けしましょう。
①今の株価でもすぐ買い増したい銘柄
②もし株価が下がれば買い増したい銘柄
③もし株価が上がれば売りたい銘柄
④今の株価ですぐに売りたい銘柄
このランク付けは銘柄選択の厳しい訓練を必要とし、あなたの能力をUPするでしょう。
10.TOBに関してはファンダメンタルズを重視せよ
誰かがTOBすることを期待してダメ企業にかけてはいけません。
11.あまりたくさんの銘柄を保有しないこと
保有銘柄のファンダメンタルズの変化を十分把握するためには、 毎週1銘柄につき1時間の調査時間が必要です。よって、個人投資家が管理できるポートフォリオの適正規模は5から10銘柄程度。それより少ないと十分な分散効果が得られず、銘柄数が多くなりすぎるとフォローができなくなります。
12.一時的にはキャッシュに避難するのも賢明だ
多くの投資家はどんな相場環境でも、常に株式で運用していなければならないと考えていますが、その考えはナンセンスです。時には、一時的にほとんどの株式を手放して、キャッシュで持つという選択も必要です。
キャッシュこそ、市場変動のリスクに対する究極のヘッジです。キャッシュポジションを高め、来るべき下落局面に備えるましょう。
13.「たら」「れば」は禁物
「たら」「れば」を考えている分だけ、次の勝ち馬に備える時間を捨てていることになります。
投資ゲームには強い心が必要で、球が次々飛んでくるので、後悔している暇などありません。頭を冷やして次の打席に立て!
14.相場の調整を恐れず常に備えよ
大きな調整相場(下落相場)が来ると、金融相場とは縁を切りたいと思う人が続出します。これは大きな間違い。 すべての調整相場は絶好のチャンスです。
15.債券のことも忘れるな
金利水準と債券市場には常に目を見張る必要があります。無視すれば必ず痛い目にあいます。
16.損している銘柄を救うために儲かっている銘柄を売るべからず
ダメな株を売りたくないのは、あまりにも損失が大きくなってしまうからですが、これは大きな間違い。 ダメな銘柄を売り、儲かっている銘柄を買い増すべきです。
17.希望的観測の入り込む余地はない
多くの人は投資をまるで宗教のように一生懸命お祈りすれば願いがかなうとでも思っています。希望的な観測とか祈りとかといった感情は、優良銘柄選択の眼を曇らせる大敵です。
18.こだわりを捨てろ
こだわりすぎると判断を見誤る。業績の変化を正しく早く察知し対応することが大事です。
19.会社のトップが急に辞めた時は要注意だ
CEO もしくは CFO が急に辞めた会社の株式は直ちに売るべき。確かに早売りしすぎるケースもあるが、その10倍ぐらいの頻度で損失を回避できます。
20.忍耐は美徳、短気は損気だ
これだと思って買った銘柄も、全く一向に動かないときもあります。そんな時は、株価に反映されるまで2年くらいのタイムラグが必要な場合があることを覚えておきましょう。
21.「テレビで言ってたから」は失敗のもと
テレビのコメンテーター、アナリストの声を鵜呑みにするのは危険です。ウォール街の人間が売り推奨することはほとんどありません。
22.業績の下方修正の第一報では絶対買い出動してはいけない
マイナスの第一報で株価が下がったらからという理由で、決して買い出動しては受けません。損失に終わるのがオチです。
どうしても買いたい場合は第一報が出てから少なくとも30日間買うのを待つべきです。その頃には第一報の背景にあるマイナス材料の全貌がほぼ株価に織り込まれているはずで、その先にあるプラス材料を織り込み安くなっているでしょう。
23.証券会社の銘柄推奨力をあなどるな
証券会社の推奨で短期的に株価が切りあがった時は海ではなく回収に入るべきです。
24.買う理由を誰かに説明できるか
買う前に、以下を自問せよ
・この銘柄の株価が上昇すると期待できる理由は何か
・あなたが株価を上昇すると考えるタイミングで、なぜ上昇すると言えるのか
・今がベストな買い時と言えるのか
・もうすでに遅すぎるのではないか
・もう少し株価が下がるのを待って買うべきではないか
・この銘柄に関してあなただけが知っていることはあるか
・あなただけが持っている有利な要素は何か
・今保有している他の全ての銘柄よりも魅力的と思うか、またそれはなぜか
25.常に市場のどこかに「上げ相場」がある
どこで相場上昇のブームが起きているかは、ETFの値動きを見れば明らかです。株価が全然動かないと愚痴を言う前に、きちんと勉強せよ。
どの銘柄がブームかを見るならThe Fidelity Sector Fund Reportがおすすめです。
まとめ
今回は、ジム・クレイマーの「長期投資のための25のルール」について紹介しました。
「そんなことは分かっている」という声もあるかもしれません。しかし、それを忠実に実践できていたら株式投資でこんなに多くの負け組個人等医師化はいないはず。「頭」「理屈」としてわかっているだけで、実際はルールのように「行動」できていない人が大半ではないでしょうか。このルールは実践できてこそ意味があります。
なお、今回紹介のジムの本には、これ以外にも様々な生きた投資のノウハウがあります。是非、一読をおススメします。