2017年、倒産した企業の数、約8400社。
1日当たり23社。この数には、自ら廃業を決めた数は含まれない。
かつて、会社の寿命は30年と言われましたが、社会の変化が加速してる現代では、どんなに優れたビジネスモデルでも短期間に陳腐化する。後継者がイノベーションを起こし、企業自ら変革しない限り、企業の存続はないのです。
本書「なぜ倒産」は、23社の中小企業の倒産を通じ、「失敗の定石」をまとめた一冊。
元社員、取引先、そして経営者本人の苦渋の証言に基づき、「なぜ運命は変えられなかったのか―。」に迫っています。
倒産の真相は、まさにドラマ。しかし、そこには、はやり倒産すべくして倒産したという「失敗の定石」があることを、大いにうなずき、そして、教えられます。
企業の行く手を阻む「壁」
本書で取り上げられている中小企業の倒産事例を見ると、企業には成長レベルに応じて、行く手を阻む「壁」があることが理解できる。
例えば、
ベンチャー企業であれば、急成長による人材不足、事業拡大のペースの読み間違え、
老舗であれば、カリスマ経営者の死亡、事業継承、古いビジネスモデルからの変革、などなど
或いは、企業の成熟フェーズに限らずとも、
景気変動の影響、ブーム終焉前に次の商品を世に送り出せるか、或いは、経営の多角化での失敗等
本書を読むと、企業を襲う数々の「壁」が如何に多いか、そして、それでもその壁を乗り越えられなければ、待っているのは売上減、利益減、赤字、そして最後には倒産であることをまざまざと教えられます。
再現性の高い「成功」、再現性の高い「失敗」
ビジネスをするうえで、企業の成功事例を知ることは大切なことです。
しかし、そのやり方を取り入れても成功するとは限らない。成功事例は再現性が低いのです。
これに対して、失敗事例は再現性が高い。「こうした局面でこうした判断を下したから会社が傾いた」と言う情報は、別の会社に置き換えても高い確率で当てはまります。
それは何故なぜか?
経営とは人、モノ、カネの状態をバランスよく保つことであり、そのバランスが大きく崩れると失敗を招きます。そして、崩れた原因を突き詰めると、「あの時こうした判断をしてしまった」と言う転換点にぶち当たるのです。
失敗から学ぶことが多いという意味をよく理解できます。
成功はアート、失敗はサイエンス
成功はいくつかの要因の組み合わせですが、失敗は究極的には1つの判断ミスによるものなのです。
例ええば、成功は小さな成功のブロックをバランスよく積み重ねることで得られるのに対し、失敗は、その積上げたブロック群のある一箇所にひずみ(大きな力)が生じた状態。
成功はアート、失敗はサイエンスなのです。
11の失敗の定石
本書は、失敗の原因を3つに分類し、さらにそれらの3つの失敗の原因に対し、破綻の定石を明らかにしています。
以下はその章構成ですが、非常にうまくまとまっています。
取り上げられた企業は架空の名前に変換して紹介されていますが、破綻の真相はまるでドラマ。
ただし、失敗はまさに破綻するべくして破綻したと言えるものばかり。「破綻の定石」という意味が非常によく納得できます。
①急成長には落とし穴がある
■ 破綻の定石1 脚光を浴びるも、内実が伴わない
■ 破綻の定石2 幸運なヒットが、災いを呼ぶ
■ 破綻の定石3 攻めの投資でつまずく
②ビジネスモデルが陳腐化したときの分かれ道
■ 破綻の定石4 世代交代できず、老舗が力尽きる
■ 破綻の定石5 起死回生を狙った一手が、仇に
■ 破綻の定石6 負の遺産が、挽回の足かせに
■ 破綻の定石7 危機対応が後手に回る
③リスク管理の甘さはいつでも命取りになる
■ 破綻の定石8 売れてもキャッシュが残らない
■ 破綻の定石9 1社依存の恐ろしさ
■ 破綻の定石10 現場を統率しきれない
■ 破綻の定石11 ある日突然、謎の紳士が……
感想
本書ですが、1ヵ月に「読売新聞」「週刊文春」「週刊ダイヤモンド」など、メディアで話題を呼ぶ本ですが、読んでみると、なるほどと納得できる仕上がりの本です。
自分の会社に倒産につながる危機はないのか?
また、そういった芽はないのか?
本書を読むと、倒産への変化点となり得る事象に学び、自分の会社のリスクに備える知恵が備わります。役職を持つビジネスマンなら、読んでおくべき本と言えそうです。