2015年、突然世界の注目を浴びたドローン。
著者である高城さんは、2012年夏にドローンと出会い、それに可能性を感じ、おもちゃ、市販品、自作機、業務機と、わずか3年半で30機(およそ1000万円)のドローンを手に入れたと言います。
これまでも、LCC、イビザ島などブームを先取りした(仕掛ける)本を出されたり、また、将来の未来予測に関する本を複数出版されるなど、時代を先取りする感性には驚かされます。ハデなこともされますが、経済から技術まで幅広い知識をお持ちなことには敬服します。
さて、話を本書に戻しますが、高城さんがドローンに注目した理由はなんでしょうか?
2045年に人工知能が人間の知能を抜くとされるシンギュラリティーに向け、IT(AI)技術はますます進んでいくのですが、この先駆けとなるのが、これから起こるロボット革命であり、中心的存在が、「インターネットの延長線上にあるドローン」であると予想しているからです。これまでデジタルでしかつながっていなかった「インターネット」が、Uberなど現実空間へと広がっていく。その先導役がドローンなのです。米国NPOである国際無人機協会(AUVSI)は、12013年に発表したレポートで、2025年における米国内のドローン市場を820億ドル(約9.8兆円)、10万人規模の雇用を生むと予測しています。
本書ではドローンの現状や今後について、以下のような観点からまとめられています。
・なぜ、今後ドローンなのか?
・ドローンの3大開発企業
・なぜ日本から世界に通用するドローンができないのか?
・米中仏の狭間で日本の選ぶべき道は?
目次
今後30年間に起きる革命、「RNG」とは?
テクノロジーの進歩によって、今後30年間に起きる革命は「RNG」と呼ばれています。R・N・Gとは以下の3つを指し、それらは次のようなスケジュールで訪れるといます。
・R=ロボット 2015年~2024年:ロボット革命
・N=ナノテクノロジー 2025年~2034年:ナノテクノロジー革命
・G=遺伝子工学 2035年~2044年:遺伝子工学革命
上記を分子とすると、その母体となるのはAI=人工知能であり、2045年には人工知能の進化のもとに「シンギュラリティー」が起きると言われています。
シンギュラリティーとは?
シンギュラリティーとは、グーグルのAI開発責任者であるレイ・カーツワイルが提唱する、技術的特異点のことです。2045年にシンギュラリティーを迎えると、テクノロジーは全人類の知能を超えて、以降は、テクノロジーがテクノロジーを開発し始めることになります。
現在時点では、人はこの人の脳を超えるテクノロジーを気持ち悪いもの、仕事を奪うものと見ています。しかし、我々は今から20年前に、すべての人のポケットにGPS受信機=スマホが入っている未来を想像したでしょうか?できた人は少ないはずです。
シンギュラリティーの先駆けとなるロボット革命の中心的存在が「ドローン」
これらの先駆けとなるのが、これから10年にかけて起きるロボット革命であり、中心的存在が、「インターネットの延長線上にあるドローン」であると、著者は予測します。
これまでは「デジタルの中のインターネット」が主流でしたが、世の中にはデジタル化できないものが圧倒的に多いのです。それらが移動し動くための物理的なネットワークをドローンが担うのです。インターネットが現実空間へ拡張していく時代に突入するのです。
アマゾンのコストの1/5は不在宅
アマゾンのコストの1/5は不在宅。一説には、米アマゾンでは、1配送あたりのラストワンマイルに7~8ドルの費用が掛かるといわれています。日本の大手宅配便もおよそ同じです。これまで、集荷・配送センターのロジスティクスのハブは先鋭化したが、ラストワンマイルは非効率化がどうしても解消できずにいました。
ドローンはこの解決策を与えてくれます。ドローンによるラストワンマイルの配送が実現化すれば、「音楽ダウンロード完了まで30秒」がごとく「お買い上げの商品はドローンエクスプレスにより到着まで後2分40秒」の連絡が実現するのです。
地上61~122メートルのブルーオーシャン
2015年12月10日、日本でも新しいドローン法(改正航空法)が施行されると同時に、日本政府は千葉市をドローン特区にすると発表し、アマゾンがその事業にいち早く手を挙げました。
現在、それには現在利権のない新領域である手つかずの「61~122メートル帯」があります。これをつかんだ会社が今後のドローン産業を大きく一歩リードすることができるのです。
ドローンの3大開発企業
ドローン技術にリードする企業は世界に3社あります。
・米:3Dロボティクス
・中:DJI
・仏:パロット
ドローンに対する考え方・開発の原点は三者三様です。
フランスのパロットはデザインの美しさと新しいおもちゃとしての楽しさを追求。
中国のDJIは、コストパフォーマンスと開発スピードは圧倒的で、その勢いは市場を席巻しています。
米国の3Dロボティクスは、オープンソースを使って多くの意見を集めながらドローンを作り、その「箱」よりも仕組みを追求しようとしています。
ドローンと日本
日本は3大ドローンメーカーに重要部品の多くを供給しており、「準日本機」と言える程、ドローンの技術を支えています。しかし、日本には、ロボティクス研究への投資額が少なすぎますし、また、ビジョンもないため、世界をリードする存在にはなれないのです。