【書評/あらすじ】最後は会ってさよならをしよう(神田 澪 著)(★4) 140文字にドラマ。感動、そして、想像もしないラストあり!

本を読んで感動したいけど、時間がない…
読書習慣はつけたいけれど、長文は苦手…

と思っている方は多いのではないでしょうか。そんな方に、是非、おすすめしたいのが、神田澪さんの140文字の超短編小説最後は会ってさよならをしよう』。

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X(Twitter)の1投稿で完結する超短編の物語は、恋愛、ミステリー、など内容いろいろ。

本作品を読んでとにかく驚いたのは、たった140文字でも、ほろっと涙があふれそうになったり、想像もしないラストがあるドラマがあることです。

たった140文字でも、「厳選された言葉」「構成力」があれば「涙を誘う小説」も書けるのだと、ただただ、神田澪さんの筆力・構成力に魅せられました。

是非、多くの人に、そんな感動を味わってもらいたい。今回は、『最後は会ってさよならをしよう』から、私が気に入った作品をいくつか、紹介させていただきます。

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140字で、ドラマはつくれるのか?

140字の中でどんなドラマを作るれるのか―。

本作は、作家の神田澪さんが、そんな試行錯誤を繰り返し、紡ぎ出された超短編小説の作品集です。

超短編と長編という文芸を1冊で味わえるように、以下のような構成でまとめられています。

❶140文字超短編
❷140文字の物語の連作による中編小説

❶140文字超短編 は一つ一つは140字で完結。しかし、それら一つ一つを、全体としてまとめてみると、また、異なる「物語」も広がる。

「言葉の力」「構成力の妙」に感嘆させられました。

140文字にも起承転結!削ぎ落されて残る洗練された「言葉」の凄さ

冒頭でも記した通り、厳選された「一作品=140文字」から、登場人物が心を悩ませたり、喜んだりしているシーンが自然と頭に浮かび上がってきます。

時には、主人公がいる季節感、室内の雰囲気や、屋外の雑踏、木々が風に揺れる音まで聞こえてくるよううな映像まで頭のイメージに思い浮かびます。

以下は、本作で一番最初に登場する作品「ナチュラル」です。

ナチュラル
彼と別れてスッキリした。

何度も泣いて喧嘩をして、けれど最後は別れる覚悟を決めた。
彼好みの長い髪を切って一人旅へ。

旅立ちの朝、昔のように濃いメイクをしようとして、
手が止まった。
ナチュラルな色のコスメしかない。

使い慣れた桜色のリップを伸ばす。
鏡に映る私は、まだ彼の色に染まっていた。

映像が頭に思い浮かびませんか?むしろ、削ぎ落された言葉だからこそ、創造力が膨らみます。

しかも、最後の最後に、起承転結の「結」「オチ」まである。

和歌然り、短歌然り、厳選された「言葉」「構成」のもつ力の凄さを感じずにはいられません。

作品紹介

本作には、ほっこりする話、キュンとする話、ドキッとさせられる話、イラっとさせられる話、140文字で涙がウルッとしそうなストーリまで、いろんな物語が収録されています。

超短編小説から味わった感動を忘れたくないので、本作から5作品を紹介させていただきます。

どれも最後の一文のオチが凄いです。

うるっとなる作品

彼が生まれた日

結婚する前に聞いたことがある。私は彼と向かい合った。

「子供のことだけど…」
彼は目を伏せた。
やはり、子供は望まないのだろうか。
「怖いんだ、どうしても」
「父親になるのが?」
彼は首を横に振った。

「僕の誕生日が、母さんの命日なんだ」

私は人生で一番泣いた。彼の苦しみを何も知らなかった。

ドキッ!はっとした作品

言葉だけの恋
言葉だけの恋人が嫌で別れた。
私がいなくなっても平気な気がして。

でも優しい人だった。
喧嘩中でさえ穏やかな口調で、
私はそれを、本気の恋じゃないからだと考えていた。
最後のLINEを受け取るまでは。

『ごめんね、俺ばっかり幸せだった』

何気ない日常を愛する彼の隣で、私はいつも求めすぎていた。

妻は恋愛小説家
妻は恋愛小説家だ。
けれど、彼女の本は少しも読んだことがなかった。

私が死ぬ前には読んでね、と言われていたのに、
彼女は先に亡くなってしまった。

妻の死後、僕は初めて本を手に取り、そして泣いた。
どの本にも僕と似た人物が頻繁に登場する。

僕はいつも、愛よりも孤独を与える人として描かれていた。

本当のこと
「付き合って一年経つけど」
彼女は深夜の喫茶店で言った。
「最近なんか冷めてきたなあ、って」
すぐには反応できず沈黙が続いた。あまりに急な話で。
「どうしたの急に。冗談だよね?」

だって昨日までは笑い合っていた。
彼女はフッと表情を緩め「うん、嘘」と頷いた。

「本当はずっと前から冷めてたんだ」

離婚の後で
両親が離婚した。

「お母さんとお父さん、どっちと暮らしたい?」
そう聞かれた私はお父さんと答えた。
母はいつも顔色が悪く、
毎晩のように酔い潰れていたので二人になるのは不安だった。

その日から半年。
久々に会った母は別人のようだった。
穏やかな笑顔を見て、誰がその顔を暗くさせていたのか悟った。

最後に

今回は、神田澪さんの超短編小説『最後は会ってさよならをしよう』を紹介させていただきました。

厳選された言葉を推敲して作られる「言葉の力」の凄さ。最近は、短歌・和歌も人気ですが、短いフレーズから溢れる「人の心」「浮かぶ情景」に魅了される理由も少しわかった気がしました。

心に響く作品は人それぞれ。同じ私でも、読む時々で心に響く作品はことなります。あなたはどんな作品に魅せられるか、是非、本書を手にとって、感動を味わっていただきたいと思います。

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