【書評/要約】水曜日の手紙(森沢 明夫 著)(★4) 見知らぬ人からの手紙が、人々の人生を変える。ほっこりやさしい涙が流れる小説
誰かの言葉があなたを変える。 あなたの言葉も誰かを変える。
そうして世界は変わっていく。

想いのつまった手紙、真剣に書いた手紙の「言葉」には力がある。
昨日は、10年前の自分から届いた手紙が、人生につまづき、毎日悶々とした気持ちで過ごしていた受取人たち心に火を灯す小説「株式会社タイムカプセル社」の感想をこちらの記事で紹介しました。

今回紹介の森沢明夫さんの小説「水曜日の手紙」も、手紙が受取人、そして、手紙を書く本人を変えていく小説です。

「水曜日の手紙」の登場人物も、今の自分を変えたい!変えなければならない!と思いながらも、平凡な毎日を過ごしている普通の人たち。「水曜日郵便局」から、見知らぬ誰かの手紙を受け取った受取人たちが、自分の心に火を灯し、それが、周囲の人の人にも連鎖し、未来が変わっていく様が描かれています。

著者の森沢 明夫さんの小説は、日々忙しかったり、生活に悩んでいる私たちの心にほっこりとした温かさを与えてくれる作品を数多く書かれている作家さんです。今の自分には「やさしさが足りない」と感じる方にも、おすすめしたい小説です。

今回は、森沢明夫さんの小説「水曜日の手紙」のあらすじと感想を紹介します。

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水曜日の手紙:あらすじ

【書評/要約】水曜日の手紙(森沢 明夫 著)

水曜日の出来事を綴った手紙を送ると、見知らぬ誰かの日常が記された手紙が届くという「水曜日郵便局」。
主婦の直美は、職場や義父母との関係で抱えたストレスを日記に吐き出すだけの毎日を変えたいと、理想の自分になりきって手紙を出す。
絵本作家になる夢を諦めて今後の人生に迷っていた洋輝も、婚約者のすすめで水曜日の手紙を書くことに。
不思議な縁で交差した二人の手紙は、かかわる人々の未来を変えていく――。
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日記に浄化を日課にしていた直美

毎日頑張っているのに、自分の求める自分像・生活とのギャップに、悶々とした生活をしている主婦の直美。友達とお茶をしても、悩みのなさそうな裕福な生活をしている友に、トゲのある言葉を返してしまうような状態でした。

そんな彼女が、自分の胸のなかに生じてしまった「心の毒」を解消し、気持ちを楽にするために行っている習慣は「日記」。直美にとって日記は心の浄化。自分の不満を日記に書き出す「自己との対話」によって、友達に愚痴を聞いてもらったときのような心の安らぎを得ていました。しかし、ある日、日記を読み返し、その言葉の毒が自分に逆流してきそうな感覚に襲われます。

浄化より、前を向くことに

「つねに浄化を必要とする人生」が、いいはずもない

そう気づいた直美は、たまたま聞き知った「水曜日郵便局」に、ポジティブな内容の手紙を送ってみようと思い立ちます。水曜日郵便局は、全国から集まった手紙を局員さんがシャッフルして、見知らぬ誰かに送ってくれる郵便局です。「どうせ、いまの自分の日常には、とりたてて書くことも見当たらない」と思った直美は、昔、素敵な未来の空想し、高校時代に夢見ていたパン屋さんの夢=理想の自分を現実の出来事として手紙にしたためます。

そんな直美のもとに、水曜日郵便局から届いた手紙は、人生を変えたいと強く願う「再出発の宣言」がしたためられた男性からの手紙でした。

言葉がさらなる連鎖を生む

通常、水曜日郵便局の配送先はランダムに選定されます。しかし、ここにさらなる「言葉の力」が作用し、郵便局員さんの気持ちも動かしました。

「夢を叶えて前向きな女性」と「大きな決意をもって夢に向かって歩み出そうとする男性」をマッチングさせて配送すれば、さらなる素敵な未来が生まれるのではないか―――と。

このような、言葉の出会いが、さらなるよい連鎖「バタフライ効果」を生んでいきます。

水曜日の手紙:記憶にとどめておきたい言葉

【書評/要約】水曜日の手紙(森沢 明夫 著)

実は、「水曜日郵便局」は、過去、宮城県東松島市宮戸島に実在していた「鮫ヶ浦水曜日郵便局」がモデルとなっています。

以下では、小説の中の言葉で、素敵だなと思ったフレーズをセレクトして紹介します。

どの道を選ぶかよりも大事なこと

人生の方向転換をする。
リスキーな道を歩き出す。
あるいは、そんな格好いいことを言いつつも、やっぱり怖くなって、いままで通りに生きていく。

なんだか、どれでもいいや、とわたしは思った。
きっと、どれを選んでも正解なのだ。大切なのは、どの道を選ぶかよりも、むしろ選んだ道を自分たちがどう感じ、どう生きるか──、それと、誰と一緒にその道を歩むのか、だと思えた。

言葉で変わっていく人生

自己犠牲の先に本当の幸せはあるのか?
自分の人生をないがしろにしているぼくが、家族を本当に幸せにできるのか?

この手紙(ナオミの手紙のこと)から漂いだす「幸せのオーラ」にあてられたぼくは、心を鷲摑みにされ、強く揺さぶられたのだった。

(略)

ナオミさんからの手紙の後半には、こんな一節があった。
《最近、分かってきたことがあります。それは、人が幸せになるには、いくつかの法則があるということです。たとえば、わたしがこれまでに実践してきたことは──》

そこから続けて書かれていた三つの法則こそが、まさに、いまのぼくの人生の羅針盤となっています。

・自分の心に噓をつかない。
・よかれと思うことはどんどんやる。
・他人を喜ばせて自分も喜ぶ。

幸せな成功者が直々に教えてくれたこの三行は、当時のぼくの胸のど真ん中を射貫いた。

言葉で変わっていく社会

【書評/要約】水曜日の手紙(森沢 明夫 著)

実は、前節で示した「3つの法則」は、直美が、いら立ちを感じた友達から受け取った言葉です。当時、直美は、イラっとしながら「そんなの当たり前じゃん」とネガティブに3法則を受け取りました。

しかし、人生の再出発しようと心に決めた洋輝はポジティブな気持ちでこの言葉を受け止め、自分を変える原動力にします。まさに、冒頭に示したように「誰かの言葉があなたを変え、あなたの言葉も誰かを変え、そうして世界にも変えていく」のです。

一匹の蝶の羽ばたきが、遠く離れた場所で嵐を起こすほどの影響力を持つという「バタフライ効果」。日々の何気ない人との出会い、言葉との出会いも、大なり小なりこの世界に影響を与えています。

しかし、ここで大事なのは、言葉は、受け取り方次第だということです。

ポジティブ思考で生きるか、ネガティブ思考で生きるか――――。どちらが、よい人生が送れるかは言うまでもありません。ネガティブ思考をしないよう、ネガティブな思考が貯まらないような生き方をしたいですね。

最後に

今回は、森沢明夫さんの小説「水曜日の手紙」の感想を紹介しました。

人との出会い、言葉との出会いを大切に生きたい。そして、いい影響を及ぼし合えるような人間として、生きたい。そんな気持ちで本書を読み終えました。

本小説を読むと、荒んだ気持ちに、ほっこりとした気持ちをもたらしてくれる効果もあります。最近の自分には優しさが足りないと思った方も、是非、本小説をお手に取って読んでみてください。

「夏見のホタル」もめちゃくちゃいいお話です。泣けます!!Amazonでもコメント数も非常に多く、多くの人に支持されています。合わせて、読んでいただきたいです。