コロナ禍で、世界から注目を集めた台湾のIT大臣 オードリー・タン氏。
私は、本書が彼女にして事前に知っていたことは、知能指数が180以上、中学以後は学校へ行っていないにもかかわらず、ビジネスで成功し、その後、IT大臣になったという程度。しかし、本書を読んで、単に彼女が天才であるだけでなく、考え方のすばらしさに感銘を受けました。
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彼女の考え・思想の根本にあるのは、「オープンソース」。良いアイデアは皆で共有。1人で独占することなく、皆とともによりよい価値を想像していくのが、最も人類が幸せに最も大事だと心底思い、行動している点です。1人だけ良ければいいという考えは微塵もない。
1998年にEric Raymondによって書かれたオープンソースに関する「伽藍とバザール」で提唱されているバザールモデルを地で行く生き方をされています。まさに、市民・国民とともに、さらに、国境をも超えて、社会を良くしていきたいという姿勢が伝わってきます。
日本にも、彼女のような考え・思想をもつ(後述)大臣がいたら、日本も変わるのに…と思わざるを得ません。
今回は著書「天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす問題解決の4ステップと15のキーワード」から、是非とも、覚えてきたい、これからの時代の物事の考え方、問題解決の方を紹介します。
目次
問題解決の4ステップと15のキーワード
オードリーは上記のような思いを持ち、国や世界が抱える大きな問題に立ち向かっています。オープンソースマインドで、皆で「共創」して解決に当たるべく、日々、紛争しています。
そのため、本書でいうところの「問題」とは、自分自身の問題ではなく、「社会が抱える問題」のこと。いかにこの世の中をよくしていくか、山積する社会問題を解決してくかという、台湾という国境も超えた「人類視点の問題」です。
本書のタイトルにある、問題解決の4ステップと15のキーワードは以下の通り。
❶問題と向き合う
解決思考、エンパシー、多重視点、取捨折衷
❷問題を受け入れる
持続可能な開発、集合知、不完全主義
❸問題に対処する
透明性、ソーシャル・イノベーション、市民協力、熟読
❹問題を手放す
競争からの脱却、自分と向き合う、至高の喜び、死を見つめる
以下では、上記の中から、私が、是非とも彼女に学びたいと思ったことを、ピックアップしてまとめます。
問題と向き合う
解決思考
- 「問題を見つける」最も簡単な方法は、各当事者の側に立って、当事者からひたすら話を聴くこと(傾聴)
- 問題解決プロセスは二つの段階
- 問題に直面した人それぞれにその人なりの解決策があるのだから、よい案を思いついたらまずは提案してみようと呼びかける
- いろいろな解決策が集まったら一歩引いて、みんなに共通する価値観が集まっている場所に立ち返る
- 「向き合って、受け入れて、対処して、手放す」という問題解決における共通の価値観が、お互いの信頼関係と友情を育み、もめごとを最小限に抑え、開発を喜びに変える。世界中とシェアし、その成果物の独占権を放棄=手放すは今の時代ではとても大事(互いに支え合い、皆で価値を創り出すという考え:オープンソース)
- ある程度の年齢になると、人は自分の人生に智慧が蓄積されていると感じて、社会にいろいろ提供できるはず!
エンパシー・多重視点・取捨折衷
- 人の話を聴くときは、ただ黙って聴くだけでなく、頭の中に反論や意見が湧いてきてもそれらは無視して、聴き終える。相手の心の声に耳を傾け、理解に努める。そうすれば、早急な判断を下さなくなる。
- すべての声が智慧。公的部門にできることは、対話の透明性を高めて公開し、参加者全員を参加で、さらなるコンセンサスを得られるようにすること
- 「対決」から「対話」への転換は、この時代に生きる私たちの使命
- 自分の中にさまざまな視点を積極的に取り込むと、ものごとをより深く理解できるようになり、知識も増える。たった一つの視点に沿った議論からは、ゼロサム(片方が得をするともう片方が損をする状況)の結論しか生まれない
- 無理やり理解する必要はない。最終的な共通認識や共通の価値観がまだ生まれていなくても問題はない。互いの信頼関係があれば、私たちはWin-Winを手に入れられる
- 私がアイデア・コンテンツの蓄積・公開にこだわるは、そうしておけば未来の誰かが、今の私には用途が分からないコンテンツの活用方法を思いついてくれるから。つまり、未来のために公開している
問題を受け入れる
持続可能な開発
- 企業はSDGsを使って企業活動を行う場合、ちょっと公益性の高いことをしてお茶を濁すのではなく、利益の追求という行為自体によって環境にプラスの影響を与えられる!
- SDGsの17個の目標は一歩一歩階段を上っていくようなもの。2030年にみんなで達成することが最も重要な目標
- すべての人はもともと一つで智慧はいたるところに転がっている
- 技術・科学の原理はどの場所でも同じ。この「どこでも同じ」という概念によって、文化の違う人をオープン・イノベーションに参加させることができる
- 「世界中の誰もが貧困や飢餓に陥いることのない状態」を実現するという目標はすでにSDGsに包括されているので、先に貧困や飢餓を解決してからSDGsに取り組む必要はない
集合知・不完全主義
- ソーシャルでオープンにつながる、これは集合知
- オードリーにとって思想とは、誰か一人だけで創造されるものではなく集合知の結晶。みんなのアイデアを凝縮したもの
- 最終的な目的は、誰もが学びを継続し、生涯学習の道を歩んでいけるよう導くこと
- 最終的に、一人だけ秀でた個人がいるチームを作るのではなく、チーム全体に競争力が備わる
- 学びのきっかけは未知への好奇心と探求心。そこからゆっくりと「集思広益」が始まる
- 現代の起業はメイド・イン・ザ・ワールド、全世界が一緒に行う創作活動
- 私たち一人一人が「集合知」というジグソーパズルの1ピース
- 負担をかけずに、勇気を出して社会参加してもらうためには寛容性(inclusivepopulism,包摂的ポピュリズム)をベースにしてやり方が必要
- すべては常に変化している。今は完璧に見えていたとしても、次の瞬間もそうだとは限らない。大事なのは透明性を高くすること
問題を受け入れる
透明性
- 私が知識を吸収する習慣は、著作権や財産権が放棄された環境によって養われたもの。ですから私は、誰かから受けた恩をほかの誰かに返している
- 私にとって無償提供やシェアとはライフスタイルのようなもの。作品は公開されることでより多くの人に届く。また、オープンソースモデルはリレー方式での作業に意欲がある人なら継続的に行うことができ、一生関わることができる
- オープンソースコミュニティは「不特定の人に向けたシェア」から始まり、「人々の貢献を結集する」過程を経て、持続可能でシェアが可能な、リレー方式による創造性が生み出されるという、一つの模範
- 何かをやり遂げたいなら、まずは着手。本当にやりたいのなら、全世界から助っ人が現れる
- 私は社会とは、独立性と自主性、そして非常に豊かな多様性が存在する生態系のようなものであり、一つの論述でものごとが決まることはない
ソーシャル・イノベーション
- ソーシャル・イノベーションとは「みんなのことにみんなが協力する」こと
- みんなが集まってよいアイデアが生まれたら、今度はその新しいアイデアを社会に広め、ひいては公共の利益を創造することができる。これはソーシャル・イノベーションによる一つの問題解決方法
- ソーシャル・イノベーションでは、誰もが自分の視点からアイデアを提供できる
- 環境を破壊したとき、私たちは同時に社会に流れているお互いの信頼感をも破壊している
- イノベーションの特徴は、誰でも元の意義に別な意義を乗せられることにある。新しい意義が加わったあと、誰かが別の意義を創り出し、またそれが使用される。そうやって拡張可能性や拡散性がさらに高まり、ますます強くなる
- イノベーションの源は「不満」
問題を手放す
競争からの脱却
- ちょっと休憩したくらいで敗者に転落することはない
- 人の価値を経済力ではなく、社会にどれだけ貢献できるかで判断してくれる場所に行ってみるのが重要
- 自分のできる範囲で、毎日たった15分でも社会貢献に充てると、まずあなたの気分がよくなる。しかも、同じように社会貢献をしている人々の存在に気づける
- 私たちの社会が「成功か失敗か」という価値観で人を判断するのではなく、「あなたが今興味を持っているテーマは何ですか」と問いかけるようにしたら、個人間の競争に起因する困難や問題は自然と消滅する
- 私が問題視しているのは、社会が個人間競争であること。「個人間競争」は必ず心がダメージを受ける
至高の喜び
- 満足感とは外側から肯定されることで生まれるものではなく、内在するもの。他人から承認してもらわなくても、目標の実現や協働関係を促す心理状態維持することが大事
- 私は「思考の運び手」にすぎない。思考だけが本物で、私は単なる器。しかし、その器に何を入れるか、それをどうやって使うかは自分で選択できる
- 苦しみはあなたに、これ以上この状況を続けるのは無理だよ、あなたの基本機能が損なわれてしまうよ、と教えてくれている
- 「いつか自分がログアウトするときの世界がログインしたときよりもよくなる」。そう思えるなら、非常に嬉しく幸せ。喜びも満足感も得られる
最後に
今回は、「天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす問題解決の4ステップと15のキーワード」から、私が覚えておきたい・まねしたいと考える素晴らしいオードリーの考え・思考法をまとめました。
素晴らしい人というのはいるものです。今後も、読書を通じて、素晴らしい人・考えに出会っていきたいと思います。
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