【書評/要約】システムトレード 基本と原則 (ブレント・ペンフォールド 著)(★5)

投資とは、トレーダーの90%が負ける過酷な世界。
そんな世界において勝者と敗者を分かつトレーディングの原則とは何なのか?

本書「システムトレード 基本と原則」は、誰もが知りたい「勝者と敗者の差」を明確に指摘した一冊。システムトレードに限った話ではなく、トレードに対する考え方が具体的な根拠として示されており、初心者から中級者に相場で勝ち残るための大切な教えを与えてくれます。あくまで「基本」と「原則」なのですが、この基本と原則を守れないために、多くの人が相場から立ち去ります。

トレーディングに大切な要素には、「資金管理」「売買ルール」「心理」がありますが、中でも「資金管理」と「売買ルール」が重要な理由を、徹底的に明らかにしています。

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資金管理:破産リスク(破産確率)の検証

資金管理の章では、破産確率を下げるポイントを説明。7つの資金管理法を紹介し、それらにおけるリスク度合いを比較検証しています。

敗者が勝てないのは自分の手法を確認して検証することを知らないから、または怠惰で検証しようとしないことが問題だと指摘していますが、破産確率はおろか、簡単な検証すら行わずトレードする人が多いのが現実。破産確率を知り、資金管理を学ぶ重要性は本書を読むことで再認識できるでしょう。

無理なトレードはお金を溶かす...
資金管理なしの無理なトレードはお金を溶かす…

破産確率を下げるためにできること

投資で勝者になるためには、「確率」という考え方なしに長期的に勝ち残ることはできません。

破産確率が1%でもあるトレードは、将来にわたって、何百回、何千回とトレードを積み重ねると、いずれ破産します。

では、破産確率を下げるためにはどうしたらいいでしょうか?

破産確率を下げるためにできることは以下の3つです。

破産確率を下げるためにできること

①リスクにさらす資金を減らす
②勝率を上げる
③リスクリワードレシオ(損益比率)を下げる

以下で詳しく見ていきます。

①リスクにさらす資金を減らす

早期に大きな資産を手にしたいという焦りから、資金を投入し、無理なレバレッジがかかった取引をして、投入額以上の大きな資金を失ったという経験はないでしょうか?

リスクにさらされる資金割合が大きければ、破綻するのは時間の問題。一回のトレードがすべての資金を失う結果に陥ります。欲張りすぎて、投資の虎の子を失っては、もはや勝負するチャンスすらなくなってしまいます。

リスクにさらされる資金割合が大きければ、いずれ破綻する
リスクにさらされる資金割合が大きければ、いずれ破綻する

リスクにさらす資金の割合は、値動きと異なり自分でコントロールできることです。誰でも実践できるのでまずはここから着手しましょう。

ちなみにリスクにさらす資金割合は2%以下が理想とされています。まずは、教えに習って2%を守ることをお勧めします。

②勝率を上げる & ③リスクリワードレシオ

②勝率を上げる、 ③リスクリワードレシオ※を上げることも破産確率を下げることにつながります。

しかし、現実的には②と③を両立するトレードは存在しません。リスクリワードレシオが低くても、勝率が高ければ利益を上げることができますし、リスクリワードレシオが高ければ、勝率が多少低くても利益を上げることができるという関係になります。

ただ、個人は相場を動かすことは不可能ですが、損切りの水準や利益確定のタイミングはトレーダーが自由に決めることができるという点から考えると、「リスクリワードレシオ」をコントロールするという方が「勝率」を上げるより難易度は低いと考えられます。

この点を考慮し、自分のトレード手法を改善していくことが求められます。

用語解説 リスクリワードレシオ
リスクリワードレシオとは、損益比率のことで、利益確定と損切りのバランスです。以下の式で表されます。

リスクリワードレシオ = 勝ちトレードの平均利益÷負けトレードの平均損失

リスクリワードレシオは0以上の数値で示され、勝ちトレードの平均と負けトレードの平均が同じ数値であれば1となります。
この数値が1を超えて高くなれば高くなるほど、負けトレードの損失よりも勝ちトレードの利益が大きい状態を示しています。

売買ルール:支持線・抵抗線を利用したシンプルなトレード

多くのトレーダーがトレードの聖杯を求め、フィボナッチ、エリオット波動、テクニカル分析などを用いた複雑なトレードを行っています。しかし、テクニカル分析は価格から派生した指標であり、変数により売買ポイントが異なってしまうのが現実であり、これは大きな問題です。その変数でうまく機能することがあったとしても、それが永遠に続くことはないからです。

故、著者は、加工されていない生の価格と出来高により、小学生でもトレードできるぐらいシンプルな売買ルールを構築することが大切だと指摘します。

トレードに聖杯など存在しない
トレードに聖杯など存在しない

トレーダーの典型的な行動が壁を超え、覇者へと変わるとき

どんなベテラン投資家も最初は初心者です。しかし、その中から凄腕トレーダーが生まれます。では、敗者が陥る典型的な負けパターンとトレードで成功する人の成功パターンがはいかにして分かれていくのか?

敗者

ニュースに振り回され、売買ルール/師/市場/時間枠/ブローカーを変え、結局うまくいかずに「結局心理面が弱かった」と心理の性にして市場を去る

勝者

負け続ける中、破産確率や資金管理の手法を学び、単純な売買手法で検証を行いながら、控えめな期待値を設定し、規律と一貫性を保って利益を拡大していく。

敗者と勝者の違いは、決して「心理」のみで実現できることではありません。勝ち続ける人には理論による裏付けがあるのです。それを知らずして、覇者になることはできません。

最後に

今回は、ブレント・ペンフォールドの良書「システムトレード 基本と原則」を紹介しました。

相場で生き残るためには、「基本」と「原則」が非常に大事であることを再認識させられます。本書の内容はやや冗長ですが、ある意味、しつこく「基本」と「原則」が大事と繰り返していると言えそうです。
いろいろな学びがある本ですので、初心者から中級、上級者まで、自分のトレード手法を見直すための参考書として手に取ってみてはいかがでしょうか。