金融の聖地で30年暮らしてわかった、日本人が知らない為替の真実をわかりやすく解説
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタートした松崎氏。その後、ロンドン・シティーの投資銀行などでの経験を持つ、本物のトレーダーです。
著者は、金融の聖地での経験をもとに、日本人トレーダーに対し、「とりあえず円(を取引)」はやめようと助言。代わりに欧州通貨のトレードをススメます。本書では、ユーロドルやポンドドルがいかに魅力的な通貨ペアであるかを、その特性とともに解説。なぜ、ファンダメンタルズを重視することが大切かについて、わかりやすく解説されています。
トレードするなら欧州通貨で稼ぐべき理由
欧州市場の規模は日本株式市場の200倍。政府でも止められない為替市場の巨大な流動性を持ちます。故、トップディーラーは欧州市場で稼いでいます。
著者が、欧州通貨、特に「ユーロドル」の取引を薦める理由は、為替取引の50%近くを占めるロンドン市場は、時差の関係から日本の兼業トレーダーが活躍できる時間帯。主要マーケットの時間帯の中で最大の収益タイムは欧州時間であり、深夜や早朝に作業しなくてすみます。
具体的には以下の時間帯です。
■日本時間16時(冬時間17時)からの3時間:ロンドン市場
- 16時前後にドカーンと一発動くことがよくある。理由はアジア時間に大きな玉が入ると、それらの銀行は流動性の厚い欧州時間まで待ってから市場に注文を出す傾向があるから。
- 毎日ではないが、月末・期末・半期末など、投資資産からの配当のレパトリエーション(資金還流)のような特殊玉が出やすいのもロンドン市場の特徴である。
- 著者自身は、ロンドン市場オープン直後の時間帯に限り、すぐにポジションは作らず、マーケットが何をやりたいかを見極めることに専念して、想定外の玉で振られないように注意しているそう。
- 英国の経済指標の発表は日本時間17時30分。総合すると日本時間16時から3時間の間には、思惑・実需・投機・投資など、あらゆる種類のフローが相当でるのも特徴です。
■日本時間21時30分(冬時間22時30分)からの1時間
- 次によく動く時間
- ロンドンのトレーダーがランチから帰り、米国の経済指標の発表があるのがこの時間から。特に毎月第1週金曜日の米国雇用統計はボラティリティが上がる。
■日本時間24時前後:ロンドンフィックス
- 東京時間9時55分の仲値発表と同様の役割をロンドンで果たす時間
- 41%を占めるロンドン市場の取引ボリュームは以下の通り
世界全体の為替取引:600兆円
うち ロンドン市場:40.9%(最もEUR/USDが活発に取引される)
NY市場 :18.9%
東京 :4.5%
ユーロの特徴
・消費者物価指数(HICP)は、ECBにとって重要度NO.1の指標
・中央銀行総裁の議会証言は質問に答える義務があるため、思わぬ本音が聞ける。
・流動性No.1
・5月9月に動きが大きくなる傾向がある
・値動きがある(米ドル/円は値動きが大きくない)
2001年1月からのユーロドルの月間変動幅:900pips以上動いた月は18回
ポンドの特徴
・値動きが大きい
2001年1月からのポンドドルの月間変動幅:900pips以上動いた月は25回
ユーロ/米ドルの18回と比べても多い。動きに乗れば「神の恵み」となる
・国民の持ち家率が高い英国の経済は不動産がカギを握っている
・住宅政策からポンドの動きを見極めることが可能
・絶対に目を通したいのがBOEが四半期に一度(2,5,8,11月)に発表する
マクロ経済と金融政策の見通しを盛り込ん「インフレーション・レポート」
・BOEはインレーションレポートが発表される月に金融政策を変更する可能性が高い
・毎月6月の「マンションハウス・スピーチ」は本音が出やすく要チェック
インフレーションレポートでは、英国の経済・財政・金融事情を掘り下げて分析しているため、今後の政策金利の見通しなど、ポジション作成時に大いに利用できるそうです。また、BOEはかなり高い確率で、このレポートが発される月に金利政策の変更に動くことで有名です。