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石油がもたらす各国の思惑・情勢・戦略を明らかに

オイル価格の下落が止まりません。

世界同時株安、イスラム国の台頭、米ソ冷戦の終結・・・・
これらの元をたどれば、すべて「石油」がキッカケだと語る著者。一見、複雑な世界の情勢やカラクリが、「石油」というフィルターを通すとスッキリ見えてくることを、わかりやすく教えてくれる一冊です。

石油で影響を受ける各国情勢

・ロシア
2014年後半から2015年初頭にかけて世界を揺るがした急激な原油安は、原油・収入を国家財政の柱としているロシア経済に大きなダメージを与えました。窮地に陥ったロシアに手を差し伸べたのが中国です。また、同ロシアとウクライナ間の問題もそのベースにあるのは天然ガスをめぐる争いなのです。

・ベネズエラ
原油の埋蔵量世界一の座にある南米のベネズエラは原油価格暴落で債務不履行の危機に瀕し、これに危機感を感じた同盟国のキューバがアメリカと急接近しました。キューバに見放されたベネズエラに接近したのはまたもや中国です。

・イスラム国問題
シリアとイラクで起きているIS(イスラム国)と西側有志連合の戦いの主ある原因も石油。一番大きな資金源はシリア北部とイラク北部で生産された石油の密売だからです。

このように、石油は一国の体制をも揺るがす存在なのです。また、世界各国の領土問題も長引かせている犯人でもあります。

石油の価格は誰が握っているのか?

ひところのように「石油メジャー」と呼ばれる欧米の大資本が価格を決定しているわけではありません。また、産油国で構成されるOPECがキャスティングボードを握ってたのはオイルショック前後までのことです。
現在は原油先物市場をはじめとした金融市場における「投機マネー」の跋扈が大きな影響力を持っています。その投機マネーは、中東の産油国がひしめくペルシャ湾岸の地政学リスクをはじめとする国際情勢の動きにも非常に敏感なのです。

米国のシェールガス革命の裏にあるもの

著者は、米国のシェール革命にも裏があるのではないかと読みます。
当初、シェール革命は米国に様々な利益をもたらすといわれていました。しかし、その後、石油価格は急落。2014年11月に行われたOPEC総会で、サウジアラビアが減産は行わないとしたことで、原油安が定着しました。シェールガス・オイルの油田を行う中小ベンチャー企業は、開発しても原油が安ければ、経営難にぶつかり、淘汰されます。

しかし、これら業者がもつ掘削の権利を大手石油会社が買い占めて一本化すれば、コストは割安になるのです。こうなって初めて、シェールガス・オイルが競争力を持ち、世界のエネルギー市場におけるアメリカの地位がより高まります。著者は、当初から、アメリカはそんな筋書きを描いていたのではないかと読んでいるのです。もしそれが事実だとすれば、事態は筋書き通りに進んでいると言えそうです。

米国の戦略

上記シェール革命の裏側にあるもの以外に、アラブの春にも米国の石油戦略が絡んでいると著者は指摘します。
米国はアラブの若者に携帯電話を使用した大衆伝達のノウハウを教えて革命を煽動。チュニジア→エジプト→リビアと革命の火の手が広がることを予測していて、混乱に乗じて良質なリビアの原油を手に入れる青写真を描いていたのではないかと指摘しています。