【書評/要約】世界の一流は「雑談」で何を話しているのか(ピョートル・フェリクス・グジバチ著)(★4)

商談の前に行われる雑談
日本では、本題に入る前の「雰囲気作り」を重視して、天気や世間話などの「取るに足らない話」が展開されます。

しかし、これは、「どうでもいい無駄話」。世界の一流はこんな無駄なことに時間を使いません。彼らの雑談は戦略的。話す側と聞く側がお互いに信頼・信用・尊敬できる関係を構築し、スムーズに「成果」につなげるための武器です。

今回は、ピョートル・フェリクス・グジバチさんの『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』に、武器としての雑談の使い方を学びます。

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「世界」の雑談と「日本」の雑談

【書評/要約】世界の一流は「雑談」で何を話しているのか(ピョートル・フェリクス・グジバチ著):日本と世界の雑談の違い

ビジネスシーンの雑談たかだか5分。しかし、「本題に入る前の単なるイントロ」ではありません。雑談は相手(個人)を知ったり、スクリーニングをするための大切な時間です。

雑談は「相手を理解するための大切な時間」

日本のビジネスマンの雑談は、「社交辞令」「決まり文句」です。決まり文句からは、相手との関係を築くために必要な「相手に特化した情報」を得ることはできません。

大事なのは、雑談を通じて、相手のことをしっかりと理解ことです。 チームビルディングであれ、ビジネスであれ、お互いのことをきちんと理解し合うことが、成果を出すには欠かせません。日本のような雑談では、「時間」の損失だけでなく、相手を失望させ、「ビジネスの可能性」「評判」すら失う可能性があります。

世界の一流は「意図」を持って雑談

世界の一流は、以下の「5つの意図」をもって相手と向き合います。しかも、5分の雑談を有効な時間にするために、準備を怠りません。「雑談」を武器としてフル活用することで、仕事のパフォーマンスを上げ、成果を出すことを強く意識しているのです。

① 状況を「確認する」
② 情報を「伝える」
③ 情報を「得る」
④ 信用を「作る」
⑤ 意思を「決める」

なぜ日本のビジネスマンは雑談が苦手なのか?

相手から信用・信頼を得るには、相手との距離を縮めることが欠かせません。そのために、世界の一流は雑談を通じて「自己開示」し、自分を知ってもらいます。また、相手に対しても「自己開示」しやすい質問を投げかけます。

自己開示とは、プライベートな情報を含めて、 自分の「思い」や「考え方」などを相手に伝えることです。互いに自己開示ができれば、警戒心も弱められます。

しかし、日本人はこのような雑談が苦手です。その原因には様々な要素が絡んでおり、現在の「日本の凋落」にもつながっています。

「定型パターン」で対応「考える機会」が奪われる⇒考えない
阿吽の呼吸
以心伝心
島国で、多種多様な価値観を持つ人たちが周りに少なかった
⇒人間関係を築くための積極的な「自己開示」が不要
⇒多様性が低く、視野も狭く
自己開示が苦手積極的な自己アピール=自分勝手と見られがち
⇒意見を自粛⇒「自己開示」が苦手に

「自己開示」以前に必要な「自己認識」

そもそも、「自己開示」をするには、それ以前に「自己認識」が必要です。しかし、日本は、大学まではただ上を目指す、社会人になれば、新人時は、人事部などが適正を判断して各部署に配属するといった具合で、「自分が何をしたいのか?」「どうなりたいのか?」を真剣に考えなくても済む仕組みができあがっています。

「自分と向き合う」「自己認識」しなくとも何とかなる。そのため、日本人は、「考える」ことをしなくなりました。「マネシタ、松下」という言葉があるように、高度経済成長期には「考えない人材」「やれと言われたことを文句を言わずにやる人材」が重宝されました。しかし、平成・令和の時代にそれは通用しません。これが、現在のグローバル社会における「日本の凋落」につながっています。

今からでも、以下を意識して、「自己認識」を高めることが必要です。

自己認識を高めるために大事な3つのこと

価値観  :何を大切にしているのか
信念   :何が正しいと思っているのか
希望・期待:何を求めているのか

雑談を通じて「ラポール」を作る

【書評/要約】世界の一流は「雑談」で何を話しているのか(ピョートル・フェリクス・グジバチ著):雑談を通じて「ラポール」を作る

ラポールとは

ラポールとは、「相手との信頼関係」のことです。ビジネスシーンにおいては、上司・部下、クライアントとの関係でラポールを築くことが極めて大事です

雑談を通じて、相手が、そもそも「どういう人で、何を大切にしているのか?」 を知ることが必要です。この時、必要なのが、相手に対する❶「無条件の肯定的関心」と❷「共感」です。

無条件の肯定的関心とは、相手の話を良し悪しや好き嫌いで判断せず、「なぜそのように考えているのか?」を肯定的に知ろうとすることです。偏見、思い込みを捨て、相手の話に耳を傾ければ、相手は安心して話をすることができます。この時、相手の考えや気持ちを理解・想像するだけでなく、「相手の感情に寄り添う」ことができれば、より良好な関係が築けます。

相手との接し方:CtoCを大事に

世界の一流は、相手の表情や 佇まい、服装、仕草などを冷静に観察して、その場で確認の言葉を投げかけます。一方、日本人は、相手の表情を見ない人が大勢います。そして、いきなり「本題」に踏み入ろうとします。

相手の心情を無視して、無理にビジネスの話に踏み入っても、うまくは行きません。また、計算や打算だけではいいビジネスはできません。「CtoC」(個人と個人)な雑談で関係を築く必要があります。

・お互いに何が知りたいのか?
・どんな関係性を作りたいのか?
・その関係性は短期か長期なのか?
・相手は何を理解すれば納得するのか?

上記を認識していれば、相手との接し方を工夫することができます。雑談の準備・方向性も見えてきます。

「グローバル」な視点と「トランスナショナル」な考え方

国によって、文化や価値観は大きく異なります。その違いをどう乗り越えて信頼関係を築き、ビジネスで成果を出していくか―。

そのためには、「グローバル」な視点と国の枠組みを超えた「トランスナショナル」な考え方が必須です。

また、世界で求められる雑談は「リベラルアーツ=教養」。雑談を学びの場と考え、 お互いの人生を豊かにするための知識や情報を「やりとり」する時間 と捉えることが大事です。

武器としてのビジネスの雑談

【書評/要約】世界の一流は「雑談」で何を話しているのか(ピョートル・フェリクス・グジバチ著):日本と世界の雑談の違い

確認作業はビジネスや商談の基本中の基本です。雑談の最初のミッションは、「確認作業」をすることです。

ビジネスの雑談には4つの「目的」がある

ビジネスの雑談には4つの「目的」があります。

①「つながる」 相手との距離を縮めて信用を作る
②「調べる」  最新の動向や現状に関する情報を収集する
③「伝える」  自社の意向や進捗状況などを報告する
④「共有する」 最新の情報を相互に認識する

雑談の最初のミッションは「確認作業」です。① 相手の状況の確認、② ビジネス状況の確認、③ 新たに必要となる情報の確認 を行いましょう。

日本人の犯しがちなミス

日本のビジネスマンが犯しがちな雑談ミスは以下の2つがあります。

❶ 早い段階で相手企業の「意思決定」の流れを確認しない

日本のビジネスマンは、相手に効くことを遠慮して、相手がどんなプロセスを経て決定するのか、誰が予算を握っているかを知らないまま、ビジネスを進めがちです。これでは方向を見誤ります。

意思決定のプロセスと共に、「何が意思決定の決め手になるのか?」 「意思決定の障害になる要因は何か」は早い段階で把握する必要があります。

❷ 相手と「上下関係」を作ってしまう

日本の営業マンは自ら「クライアントが上、自分は下」という関係を作りがち。クライアントであっても、築くべきは「対等な人間関係」です。できるビジネスマンは、お互い共通する「趣味」「体験」「考え方」を共有して、対等なCtoC関係を上手に構築します。

いくら雑談をしても、 上っ面の表面的な会話ばかりを繰り返していたのでは、お互いの信頼関係は高まりません。一方で、相手の挫折体験まで話が及べば、お互いにリラックスした雑談ができます。日本では、学歴や出身地を共通の話題にすることが多いですが、実体験や考え方を共有する方が、はるかに深い雑談ができます。

大事なのは「ラポール」づくり

日本では、ビジネスマン向けの雑談に関する本がたくさんあります。その大半が「どんなネタを話せばいいか?」とか、「お互いが話に詰まったら、どうすればいいか?」という 小手先のテクニックの話です。

しかし、雑談の目的は何とかその場を「乗り切る」ことではありません。お互いの関係性を築くこと、雑談を通じてラポールを作ることです。

相手を知る7つの質問

相手とラポールを築くには、相手が大事にしている「価値観」「信念」「希望・期待」を知ることが欠かせません。
ピョートルさんは、ラポールを築くために相手を知る「7つの質問」を用意しています。雑談に努めています。相手の核心に触れる質問であるが故、表現を工夫してさりげなく聴く技量が求められます。

質問わかること
① あなたは仕事を通じて何を得たいですか?「価値観」や「信念」
② それはなぜ必要ですか?
③ 何をもっていい仕事をしたと言えますか?「仕事の基準」や「モチベーション」
④ なぜ今の仕事を選んだのですか?
⑤ 去年と今年の仕事はどのようにつながっていますか?「自分の成長」
⑥ あなたの一番の強みは何ですか?「仕事の進め方」や「協力体制」
⑦ あなたは今どんなサポートが必要ですか?

強いチームをつくる「社内雑談力」

【書評/要約】世界の一流は「雑談」で何を話しているのか(ピョートル・フェリクス・グジバチ著):日本と世界の雑談の違い

強い会社、強いチームを使うためには、お互いのことをきちんと理解し合うことが欠かせません。会社では、チームミーティングや上司との個別面談が行われたりしますが、このような場には「ホンネ」は出にくいものです。ホンネが分からなければ、チームビルディングもうまく行きません。

だからこそ、有効に活用したいのが、日常業務時間におけるちょっとした「雑談」です。

「雑談をするチームは生産性が高い」ということはエビデンスで明らかになっています。そもそも、雑談や笑い声が聞こえないオフィス・会社は人間関係や会社方針に何らかの問題を抱えています。

雑談のメリットは、相手の本音が聞けると同時に、周囲の「バイアス」を低減して相手に向き合うことができます。大事なのは、声のかけ方、聴き方です。

聴き方については、以下の本が参考になります。相手を感動させる・感嘆させるスキルを身につけることは簡単ではありませんが、聴き方を変えることは、明日からでも始められます。即効性のあるスキルです。

最後に

今回は、ピョートル・フェリクス・グジバチさんの『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』に、武器としての雑談の使い方を学びました。

本記事で紹介した内容はごく一部。「避けるべき雑難」など、すぐに役立つ情報がたくさん紹介されています。

日本人の間違った雑談に関する認識を大きく転換してくれる価値ある本です。是非、本書を手に取って、読んでみて頂けたらと思います。