世界に衝撃を与えているパナマ文書
2.6テラバイト、1150万件、21万4000社の企業および取締役等の租税回避情報が流出。既に要人スキャンダルが発覚しておりますが、分析が進むと益々スキャンダルが発覚する可能性があると報道されています。

報道では富裕層による租税回避行為ばかりが注目されがちですが、本書の著者 渡邊さんは「影響はそれだけにとどまらない」とした上で、大きな世界の闇を明らかにしています。

それは一体、どのようなことなのでしょうか?

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パナマ文章とは?

各国が富裕層の租税回避の動きに対し、各国、様々な対策を行っています。悪の枢軸とされるテロ国家やテロ組織、マフィアや暴力団、暴力的革命組織など反社会的勢力は強まる金融規制の中で、実名での金融取引を禁じられてきました。

一方、グローバル戦争の仕組みは、軍部オプションから金融制裁へと大きく変化しつつあり、直近では、核所有の北朝鮮やウクライナ問題におけるロシアなど、金融制裁が実施されています。

この対抗策として、悪の枢軸のみならず、税金を納めたくない個人・企業は、オフショアの非実名取引・匿名口座を利用。匿名性を利用し、「黒からグレー、グレーから白へ」と資金洗浄を行うことで、国際的な規制の闇から逃れてきました。

パナマ文書は、パナマにある「モンサック・フォンセカ」という法律事務所によって作成された資料であり、1970年代からの40年にもおよぶオフフォア金融センターを利用する企業や人の「黒からグレー、グレーから白へ」の変化の過程を克明に記載した資料です。「真の所有者」を明らかにするものであり、犯罪や脱税の確固たる証拠にもなり得るものとして、恐れられています。

パナマ文章の発覚が持つ「重要な意味」

タックスヘイブンは世界中にありますが、中でも英領バージンが最も選ばれています。理由は、会社設立に際して政府の許可がいらず、登録するだけでほぼ24時間以内に「免税会社」が作れてしまうから。また、事務所がなくても私書箱だけで会社をつくれるのが英領バージンの特徴です。ある意味で代理人とは、貸電話や秘書サービスのようなものであり、この代理業務と手続きを行っていたのがモンサックでした。

パナマ文章が大きな意味を持つのは、タックスヘイブンを悪用した脱税企業が見つかるということ以上に、こうした匿名口座や匿名資金の「真の所有者」が明らかになることで、テロ組織の活動やマネーロンダリングの実態、それに関連していた企業の存在をあぶり出し、これまで対応しきれていなかった金融規制の穴をふさぐことが期待できるからです。

世界で始まる「タックスヘブン狩り」

法の目をかいくぐっていた租税ですが、各国に関して各国で課税する動き厳しくなり、これが近年、アップルやマイクロソフト、スターバックスといったグローバル企業の業績悪化や株価低下の原因になっています。(本書では、Googleの租税課税(ダブルアイリッシュ&ダブルサンドイッチ)のスキーム例などについても解説されています。)

たとえ不正な資金であってもそれが資金として世界の市場を支えている実態がある以上、その原資が奪われることになれば、その額の数十倍の資金量が消失する可能性があります。本当に深刻なのは、オフショアに流入していた3000兆円ともいわれる資金ではなく、そこから派生し膨れ上がった額がどの程度になっているのかがわからないことことです。

パナマ文章で激変する世界情勢:窮地に陥る英国

タックスヘイブンというものは、かつての覇権国家であったイギリスとその主要産業である金融を支える仕組みの一つでした。
植民地や自治領で税金を納めれば本国には税金を納める必要がないという仕組みにすることで、各地での産業・金融活動の発展を助け、また税率を下げることで世界各国から企業の進出を促し、本国のシティはその手数料で潤うという、金融システムを世界各国に広げようとしたわけです
※シティは自治領

しかし、ここにきてタックスヘイブン狩りにより英国は窮地に陥っています。英国系銀行HSBCについても、2015年6月、本社所在地をロンドンから海外に映すと表明し、その候補地として香港か上海を挙げていましたが(つまり中国へ本社をシフトさせるという意思表示をしていた)、アメリカの圧力で断念しています。
また、一方で英国は、2015年に中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に表明するなど、中国に接近する動きがありますが、英国と米国の二つの金融大国の争いの一環としてみることもできます。

その意味は何なのか、本書では明らかにしています。腐っても米国。したたかです。

日本の地下経済から本来得られる納税額は?

OECDの調査によれば、海外への脱法的な租税回避なども含めた日本の地下経済の規模は名目GDPの12~15%と推定されるとか。

現在、日本の名目GDPは500兆円であることから、日本の地下経済の規模は約60兆円。さらに、日本の租税負担率平均である約20%を適用すると、地下経済から得られる税収は実に年約12~15兆円となると考えられます。
すべてが暴力団がらみとはいえないまでも、パナマ文書とマイナンバーにより暴力団の資金の流れが明らかになれば、国庫へ没収される資金はさらに増えることになります。

フリーライダーを許してはいけない

日本におけるタックスヘイブンの問題は、日本から海外に資金が逃避しており、日本国内に本来回らなくてはいけない資金が回っていないことです。この穴をふさいで日本国内でちゃんと回る仕組みを作らなければなりません。
故、税金を納めないフリーライダーは許してはいけないのです。

本書を読む前までは、「富裕層の脱税の話でしょ」と思っていました。しかし、その奥には国の覇権まで関与しているとは驚きでした。オススメです!
私にはまだ理解できていない部分もお多いので、関連本も読んでみたいです。