目覚ましい進展を遂げる人工知能。
人工知能が単純作業から高度な知的作業までもこなせるようになり、これまでの人間の価値が見直しを迫られています。

では、単純な脅威論に踊らされず、人工知能の限界を見極め、対処していくにはどうすればいいか?
また、人間の可能性を引き出すためには何をすべきか?

上記2つの問題をメインテーマに、多角的な視点から人間と人工知能について語ったのが本書です。

本書の中で、著者は、上記2つの問題を解くカギは「二者の思考のメカニズム」、つまり、
人:直観的思考、人工知能:アルゴリズム的思考
にあり、本書のタイトルの答え、「人間の強み」とは突き詰めると「直感」に起因すると述べています。

人間が人工知能時代にいかに賢く生きていくのか、そのための答えが本書にあります。

人間の直観的意思決定 VS 人工知能の思考メカニズム その違いとは?

人間と人工知能の強み/弱みを明らかにするには、その思考法の違いを理解することが必要になります。

人工知能の思考を支えているのは、アルゴリズム、統計、確率です。規則性がある現象を予測し、パターン化された大量の知的作業を迅速にこなすことは得意ですが、カオスな現象が発生すると、正確な判断や予測ができなくなります。

一方、人間の思考を支えるのは「直観」です。人間の直感と感覚が伴う知識や技能に「暗黙知」や「身体知」というものがありますが、一言では「コツ」のようなものです。これらは人間同士なら共有できますが、人工知能が学習して把握するのはなかなか難しいものです。

直感と直観

ちょっかんには「直感」「直観」があります。
この「直感」と「直観」を厳密に区別するのは難しいですが、直感を研ぎ澄ますのに学習や訓練の必要があまり強調されないのに対し、直観を高めるには学習や訓練が必要となります。

「直観」とは、自分の経験に基づいて判断と意思決定をするための方法であり、認知パターンに当てはめることで状況の成り行きを判断し、とるべき行動プランを決定する能力のことを指し、これが人と人工知能の思考の大きな差です。

プロ棋士の羽生氏は著書「大局観 ~自分と闘って負けない心」の中で、「ここは攻めるべきか」「守るべきか」などの方針は「大局観」から生まれると言い、『「大局観」で無駄な「読み」を省略でき、正確性が高まり思考が速くなる。また、未知の場面でも対応できるようになる』と述べています。

つまり、エキスパートやプロは、特定の状況を見て、その状況の意味が直観的にわかり、細部にとらわれることがないのです。これは、人工知能が最も苦手とする「センスメイキングによるフレームシフト」のことではないかと著者は考えます。人工知能にはない強み「直観」を伸ばすことが人には大事になるのです。

直観を高める8つのコツ

人間は学習や経験を積むことなく直観を働かせることはできません。ではどのようにしたら直観は高まるでしょうか?

著者は以下の8つを挙げています。

1.ある一定以上の学習時間と絶対量を確保する
2.記憶と忘却の繰り返しを面倒くさがらない
3.「ゆっくり丁寧な訓練」と「スピード重視の訓練」を使い分ける
4.緊張とリラックスを繰り返す
5.ちょっとした遊び心を忘れない
6.細部や論理にこだわり過ぎたら全体像を眺める
7.異なる分野に触れて刺激を求める
8.能力を多角的に鍛える

直観とは、過去に習得した知識や認知パターンを想起し、それを適切に組み合わせて問題解決する能力。基礎的な知識や技術を習得することなくして、エキスパート並みの直感を働かすことはできません。

個人的には、著者は人工知能の発展を少し軽んじているようにも思いました。しかし、いずれにしても「直観力」を伸ばすことが大事なことには賛同します。

ちなみに、人間が機械より優れている点は以下になります。日ごろから上記を伸ばすべく努めたいですね。
1.経験に基づいた豊かな発想力
2.高い創造力
3.察知力
4.環境の変化に対応しようとする積極性
5.意思決定の柔軟性

羽生さんの本、過去に読みましたのがおすすめです!