日本では年間どのくらいの夫婦が離婚しているか知っていますか?
厚生労働省公表の「令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和3年における婚姻件数は50万1116組に対して、離婚件数は18万4386組。単純計算で日本の離婚率は36.8%。3組に1組の夫婦が離婚しているのが現状です。
「私たちの愛は永遠!」と思って結婚しても、長い人生、何があるかはわかりません。
離婚は決して人事ではありません。だからこそ、結婚相手と結婚タイミングで変わる「人生のリスク」を理解した上で、最良のタイミングを見計らって結婚することが大事です。
今回は、前回の記事の後半、どんな結婚相手を選ぶべきか、藤沢数希さんの『損する結婚 儲かる離婚』からの学びを紹介します。
婚姻届けに判を押すのは、借金の連帯保証人より怖い
バラ色の人生を夢見て届け出る「婚姻届け」。しかし、結婚はそんなに甘くありません。
婚姻届けという契約書
結婚は、マネーやリスクの観点から見ると、株式をはじめ、金融商品を買うのと同じ。結婚とは「所得連動型の債券」の譲渡契約です。
そして、婚姻届けに判を押し、役所に届け出ることは、「離婚」というリスクを考慮した際、男女の内、所得の多い方が「借金の連帯保証人より恐ろしい契約書にサイン」したことになります。
なぜ、金銭的な側面から、婚姻届けの提出が連帯保証人になるより怖いのか、その理由を知らずして、結婚することは、人生のリスクを高めます。
正しく理解されていない「離婚」
そもそも、巷で言われる以下のような離婚に関する話は嘘です。少なくとも表現に大きな誤りがあります。
・ビック芸能人カップルの離婚、慰謝料1億円
・相手が浮気をしたら裁判で簡単に離婚できる
・不貞行為をした相手からは莫大な慰謝料が取れる
一般人の離婚の実態は赤裸々にされることはありません。離婚の話は、センセーショナルな離婚騒動をワイドショーネタで聞く程度ではないでしょうか。そのため、結果、多くの方は離婚の真実、マネーゲームの実態を正しく知りません。
まずは、以下の記事で、離婚で繰り広げられる男女の熾烈なマネーゲームの実態を理解してください。
前記事での結論
上述の記事のポイントを、おさらいしておきます。ポイントをは3点です。
・結婚のリスクを考えるに当たって大事なのは、男女間の収入の価格差
・婚前の財産は離婚に当たって無関係
結婚タイミングで、人生のマネーリスクが変動する
↓
・結婚相手だけでなく、結婚タイミングについても十分なデューデリジェンス(収益性やリスクなどを総合的かつ詳細に調査)が必要
結婚相手の見分け方・結婚届け提出のタイミング
では、私たちは結婚相手にどのような人を選べばいいのでしょうか?
また、結婚相手が決まっている場合、どのようなタイミングに結婚するのが最良なのでしょうか?
以下では、収入が少ない方の視点から、理想の結婚相手の話を進めます。これがわかると、収入が多い側も、人生のリスクを小さくする対策が見えてきます。
ストックよりもフロー
結婚と離婚でどのようにお金が動くのかを理解すれば、女性はどのような男性を結婚相手として選ぶべきか(狙うべきか)が見えてきます。
離婚によって動く大きなお金は、「婚姻費用」と「財産分与」であり、これは結婚してから稼ぎ出された収入に基づくものです。
結果、以下に該当する人は、一見、よい結婚相手に見えて、ベターな結婚相手とは言えません。
・将来にわたって働く必要も・働く気もない資産家のボンボン
・収入が人生の絶頂期にあると思われる人
極端な例ですが、「引退した資産持ち(資産を切り崩して生計)」と「年収400万円のOL」。このカップルが離婚裁判に至った場合、法律的には、年収400万円のOLの方が、「婚姻費用」と「財産分与」を請求されます。
一方で、資産MAXでモテモテの時に結婚すれば、自分の資産が奪われるかもしれない離婚のリスクは下げられます。
優良銘柄は「安定した将来キャッシュフロー」がある人
では、どのような人が有望な結婚相手となるでしょうか。
それは、「安定した将来キャッシュフロー」がある人です。具体的には大手企業の会社員、公務員、医師。これらの相手は、離婚裁判になったときも、資産の差し押さえがかなり容易なので、「婚姻費用」と「財産分与」などをととりっぱぐれることがありません。
一方、経営者、事業家の場合は、事業の安定性次第です。大手企業の会社員以上に、「将来キャッシュフローの予測が極めて重要」になります。
創業間もない企業家の場合は、ベンチャー投資のようなもので、ハイリスク・ハイリターン。相手の事業の将来性を見抜く目利きが求められます(しかも、株のように10個の内、1つ当たれば…というわけにはいかない)。
高所得者側が資産を守るためにできること
収入が高い側が、少しでも自分の資産を守るためにできることは、「大きな臨時収入をもらった後に、婚姻届けを提出する」ことです。
たとえば、
・遺産が入りそうなら、結婚を先延ばす
・ボーナス日の翌日以降に結婚日を段取る
などです。
そして、万一の時に資産の証明ができるように、結婚前に、通帳のコピーをはじめ、資産証明書類を整えておくことです。
玉の輿・逆玉は?
人生逆転の方法として「玉の輿」「逆玉」という方法はあるでしょう。確かに夫婦関係がいい間は、いい生活ができます。
では、離婚となったときは?
繰り返しになりますが、婚前の資産は「資産分割」の対象になりません。よって、ポイントは、相手が所有資産から収益を得られる、結婚後も金持ちの親から資産を受け継ぐ、節税対策として役員報酬があるかです。この場合、離婚裁判に至ったとき、分割を受けられる可能性は高いでしょう。
もう一つ注意すべきは、代々お金持ちの家系は、金融知識にべらぼうに強いことです。お抱え弁護士をお持ちのご家庭もあるでしょう。このような家系を相手に離婚裁判で自分が勝てるか?という点もとても大事です。
結婚という制度について考えてみる
国家を成り立たせるためには、「国民」が必要です。
国を支えるためは「子供」は必要です。
しかし、そもそも、結婚は必要なのでしょうか?
一夫一妻制の元、夫婦一緒に子供を育てる必要があるのでしょうか?藤沢さんはこの点でも面白い視点を与えてくれます。
恋愛市場は一夫多妻制
日本は、「一夫一妻制」の国です。一人の夫に対し、一人の妻が基本です。
しかし、実際の恋愛市場はどうか。実際の恋愛市場で成り立っているのは「緩やかな一夫多妻制」です。言葉を選ばずに言えば、男女の恋愛を楽しめる経済的余裕がある男性、魅力のある男性が、妻以外にも外に女性を作る社会が現実に存在しています。
実際、生物学的な考察や実際の結婚前の男女の自由恋愛に関する調査などから、人間の配偶システムは、法規制が何もない状態で自由になれば、緩やかな一夫多妻制になると思われます。しかし、文化的制約、法規制等で一夫一妻制を善とする社会規範としている国が多くあります。
一方、世界には、一夫多妻制の国もあります。遺伝子の生存戦略は、「優れた遺伝子を残すことで、種を繋いでいく」ことです。この観点から見れば、裕福=稼げる能力の高い遺伝子を持つ男性に、複数の女性が交わることで、優秀である可能性の高い遺伝子を持つ子を多数生み育てる方が、「人類の生存戦略」的には合理的と言えるかもしれません。女性も子供も、安定的な生活が確保されます。
一夫一妻制は下から6~7割の男性のための法制度!?
先進国が一夫一妻制を社会規範とする理由の一つに、「政治的な安定性の確保」があると言います。
お金・生活の心配なく自分の遺伝子を残せる(肉体的関係を持てる)男性は、3~4割程度に限定されるでしょう。見た目がカッコイイも遺伝子的に優位性があるという観点から、上位3~4割に含まれます。
このことは、男性よりも女性の方がエッチがしやすいことを示しています。事実、20代以上の男性を見たとき、一度も異性と肉体関係を持ったことがない人は、明らかに男性の方が多いことがわかっています。
そういう観点から見ると、一夫一妻制の結婚制度はなるべくたくさんの男性に女性を分配するシステムであるとも言えます。
感覚的に「一夫一妻制は女性を守る制度」のようにも感じますが、実際は、多数派の男性(下6~7割の男性のシステム)ではないかと、藤沢さんは指摘されています。
子どもが欲しい。結婚する必要ある?
さて、今度は、結婚と極めて強い関係のある「子供」についても考えてみましょう。
結婚をせずに子供をもうける「婚外子」。日本は子供は夫婦のもとで育てられるべきという社会規範が強く、「婚外子」に対するマイナスイメージの強い国です。実際に日本は、婚外子率が世界的に見て極めて低い特徴があります。
また、結婚→妊娠という規範を守るために、子どもが欲しいのにもかかわらず、中絶という「子殺し」が行われることもあります。これは、少子化が深刻な日本にとって、大きな損失です。
しかし、世界の事情は大きく異なります。現代の世界の先進国では、婚外子の増加など、一夫一妻制が徐々に崩れつつあります。つまり、世界では、家族の在り方にも多様化が進んでいるのです。そして、シングルでも子供が育てやすい環境整備も整えられています。
女性が社会進出すると婚外子が増加
男女平等が極めて進んだ国では、婚外子が非常に多くなっています。一方、女性の社会進出が遅れている日本や韓国は、婚外子率も極めて低い。多様性が低い社会である証拠です。
多様性は大事です。社会・個人が幸せになるためにも多様性は欠かせません。
結婚の在り方について、もっと、婚外子、或いはシングルでも子供が暮らしやすい社会制度を整えられていくべきです。そうすれば、中絶という子殺しも減り、子どもが増えて、日本全体にとってよりよい社会になるのかもしれません。
今、日本政府は少子化対策に巨額のマネーを投じて対策しようとしていますが、「結婚」という観点からも社会通念を変えていくことが望まれます。
最後に
今回は、藤沢数希さんの『損する結婚 儲かる離婚』からの学びを紹介しました。
本書には今回紹介した以外にも、
・個人としての結婚
・遺伝子の生存戦略的な意味での結婚
・社会にとっての結婚 など、
人生に役立つ多くの知見が得られる内容が詰まっています。
是非、本書を手に取って読んでみて頂けたらと思います。