バフェットにも大きな影響を与えた成長株投資の開祖であるフィリップ・フィッシャー。
スタンフォード大学ビジネススクールの株式投資論の講座でも40年以上にわたってフィリップ・フィッシャーが書いた本が利用されています。
彼は、「保守的な投資とは、減らさない投資、保持する投資ある」と定義しています。これは言葉を変えると「チキン/臆病/気弱な投資」です。
この投資スタイルをわかりやすくまとめた著書「気弱な人が成功する株式投資」(岩崎日出俊 著)には、このフィッシャーの投資スタイルがわかりやすくまとめられているので紹介します。
目次
チキン・気弱な人の株式投資:「買い」の極意
チキンな投資、気弱な投資とは、けなし言葉ではありません。非常にまじめで慎重な投資のこと。慎重であるがゆえに、リスクを減らした効果的な投資ができます。
それではそんな人のための「買い」の極意は何でしょうか?
- 個人投資家が機関投資家に対して優位に立ちうるのは、長期投資ができること
- 健全な投資には、「知識」「経験」「感情の制御」の3つの要素が不可欠
- マクロ的に見て、マーケットがかなりの確度で全般的に上がっていくと思われるときはには、いたずらに個別株を吟味して時間を浪費するよりも、手っ取り早く、マーケット全体が上がること(ETF等)に賭けて相場を張ったほうがいい
チキン・気弱な人の株式投資:「利食い」と「損切り」
- 株式投資で難しいのは「買い」よりも「売り」。特に「損切り」
買いが間違っていたと判明した時には売らなければならない。これは投資家が感情のセルフコントロールができるかにかかっている。 - 投資家の適切な処置を狂わせるセイラーの「所有効果」
自分が所有に対して、人はより高い価値を勝手に与えてしまう。保有する株式の売りは、この「所得効果」に抵抗することから始まる。 - 「所有効果の罠」に陥らないためには、どうしたらいいのか?
投資家が持っている株に対して、「今、余分な金があったら、もっと購入するか?」を確認してみよ。
チキン・気弱な人の株式投資:「損切り」の3つのルール
それでは、どのように「損切り」をしたらよいのでしょうか?
損切には3つのルールがあります。大事なのは「事前準備」です。
- 買った値段に比べて何%下がったら即刻売るとあらかじめ決めておく。
その水準まで落ちたら有無を言わさず切る。 - 今、その値段で持っていることは、その値段でその株を今新たに買うのと同じと考える。
今日の株価を見て、もしその銘柄を買い増す気が起きないのであれば、持ち株の売却を考える。 - 買った値段を忘れる。
重要なのはこれから株価が上がっていくか、それとも下がるかであり、過去いくらで買ったかは関係ない。むしろそういったことにとらわれると、これから先の冷静な判断ができない。
チキン・気弱な人の株式投資:売らなければならないとき
上がると思って買った株も、時に、状況が変わり、ずっと持っていることが損失につながることがあります。それを見極めるには、「売り見極めのルール」を持つ必要があります。
- そもそも当初の買いが間違っていた時
フィッシャーによると、株式投資の醍醐味は大きな利益を上げることができること。大きな利益とは数年のうちに5倍、10倍になること。少ない利益で満足してはいけない。間違った株を買ってしまった場合は、損がわずかばかりの利益になることを時間をかけて待つようなことをしてはならない。固執することは大きな魚を逃すことにつながる。 - 時とともに投資した先の企業が変遷してしまう場合
フィッシャーの15原則(後述)から外れた場合。大きなのは、経営陣の劣化。
フィッシャーの15原則
フィッシャーは、株式を購入する価値のある会社かを見極めるために、以下を確認せよと提案しています。
- その会社の製品やサービスには十分な市場があり、売り上げの大きな伸びが数年以上にわたって期待できるか
- その会社の経営陣は現在魅力のある製品ラインの成長性が衰えても、引き続き製品開発や製造過程改善を行って、可能なかぎり売り上げを増やしていく決意を持っているか
- その会社は規模と比較して効率的な研究開発を行っているか
- その会社には平均以上の販売体制があるか
- その会社は高い利益率を得ているか
- その会社は利益率を維持し、向上させるために何をしているか
- その会社の労使関係は良好か
- その会社は幹部との良い関係を築いているか
- その会社は経営を担う人材を育てているか
- その会社はコスト分析と会計管理をきちんと行っているか
- その会社には同業他社よりも優れている可能性を示唆する業界特有の要素があるか
- その会社は長期的な利益を見据えているか
- 近い将来、その会社が成長するために株式発行による資金調達をした場合、株主の利益が希薄化されないか
- その会社の経営陣は好調なときは投資家に会社の状況を饒舌に語るのに、問題が起こったり期待が外れたりすると無口になっていないか
- その会社の経営陣は本当に誠実か
上記は、以下の本で詳細解説されています。フィッシャーの著作の中で最も評価の高い本です。
チキン・気弱な人の株式投資:売ってはならないとき
個人投資家の悪い癖は、利益がでるとすぐに売却してしまいたくなることです。そのため、「損大利小」(損切りできないが故に損ばかり大きくなり、一方で、利益確定を急ぐため利益が小さい)となってしまいます。
フィッシャーは株価が高くなり過ぎたと思って売り急いではいけない。と提案。「株を買う時にやるきことをちゃんと行ってさえいれば、その株を売るべき時期というのは、ほとんど永遠に来ない」と指摘しています。
最後に
今回は、フィッシャー流:チキン・臆病者のための株式投資の「売り」と「買い」について紹介しました。
フィッシャー自身の本を直接読むのが一番ですが、投資初心者には、投資に関わる良書を多数出版しているパンローリング社の本は少し難解かもしれません。そんな時は、優れた投資家の投資スタイルをわかりやすく解説してくれる本がおすすめです。
上記内容の多くも以下の本で紹介されています。よい本なので是非読んでみてください。
上記は以下の本でより詳しく紹介されています。おススメ良書です。