ウィリアム D. ギャン(William Delbert Gann、1878-1955)は、テキサス州ラフキンの綿花農家に生まれた相場師です。
商品相場・株式相場において、勝率80%以上を誇った天才投資家です。1955年に78歳で生涯を閉じた時の遺産は5,000万ドルと言われる伝説の相場師です。ギャン独自の分析手法は「ギャン理論」として知られています。
商品相場・株式相場で複数の書籍、名言を残すだけでなく、有名なテクニカル分析を編み出しましたが、「ギャンの28のルール」はギャンのテクニカル分析以上に大事な投資の「正道」とも黄金ルールです。
今回は、「ギャンの28のルール」について紹介します。
目次
ウィリアム D. ギャンと相場
ギャンは綿花農家に生まれました。そのため、商品先物市場を重視。
「相場の基本は商品先物にある」とし、「需要と供給のバランス」を重要視しています。また、商品には需要にサイクルがありますが、サイクル理論・占星術も重要視しました。
ギャン理論で重視される「サイクル理論」
ギャン理論では「サイクル理論」が重視されます。占星術も、星の周期を読むサイクル論です。
ギャンのサイクル理論
・相場の動きには一定の周期と循環が存在する
・自然界の法則には大小あり、確かなものとあいまいなもの、その中間がある
未来は単に過去の出来事の繰り返しに過ぎず、全ての事象は大サイクルと小サイクルの組み合わせで成立します。
・新しいサイクルが始まるのは、価格の極端な乱高下の直後
・最高値と最安値は共に過去の長い時間の結果として現れるもの
・この結果へと至るには一定のサイクルがある
としています。
ギャン理論では「時間と価格の関係(比)」が大事
テクニカル分析では、ギャンの分析手法として、「ギャンライン」「ギャンファン(ギャンアングル)」がよく用いられますが、これも時間と価格の比、そして、サイクル理論を重視し考案されたものに他なりません。
「時間と価格の間にどのような比例関係を見つけるか」
これが重要なポイントとなります。
ギャンの28のルール
上記ではギャンのテクニカル理論の概要を示しましたが、このテクニカル理論のさらに根幹にあるのが「ギャンの28のルール」です。彼の投資の成功や失敗を集めてまとめられたルールで、まさに、投資の「正道」です。あらゆる市場の相場においても役立つ教えとなっています。
①総資金の1/10以上の損失が出るようなリスクはとるな
1回の売買において、損失リミットはこの総資金の10分の1以上にするなというものですが、資金管理の法則で、「一度に大きく賭けるな」ということです。
リスク割合は人により異なりますが、多くの著名投資家が口酸っぱく指摘する点です。
②毎回ストップ・ロス注文を設定せよ
リスク管理のために、毎回「ストップロス(逆指値)注文」をしなさいということです。損失を限定し、資産保全のために大切なルールです。
③オーバー・ポジションは厳禁
過剰な売買をしてはいけないということです。オーバー・ポジションはリスクが高いだけでなく、その保有の緊張感から間違った投資判断の元凶となります。
④トレーリングにより利益を伸ばせ
人は弱い生き物です。多くの人は、利益がでるとすぐに利確するのに、損が出ているときは含み損に耐えるという「損大利小」行為を行います。また、変に欲張って利が乗っていたものをマイナスにしてしまうこともあります。
しかし、目指すは「損小利大」です。
故、ポジションに利が乗った場合、結局は損切りとなる愚を犯さないように、トレーリングストップを置き、利益を確保しながら利益を伸ばすことことを大切にしています。
⑤トレンドに逆らわない
ギャンは順張り・トレンドフォローを大事にしています。
その上で、チャートが明確なトレンドを示していない場合は、売買をしてはならないとも述べています。
⑥迷ったら手仕舞う。トレードしない
方向感がわからぬ中、ポジションを持ち続け失敗トレードになることはよくあります。迷ったら手仕舞うが鉄則です。
「ポジポジ病」という言葉があるように、人は方向感に確信がなくとも、ポジションを持ちたがる傾向があります。しかし、これは大きな間違い。よくわからなかったら休む。「休むも相場」です。
⑦値動きのある市場でのみ売買を行う
相場には、「上昇」「下落」「もみ合い」の3つの相場局面があります。
もみ合い相場は、「今後、相場がどのように動くかわからない、判断が難しい局面」です。こんなときは手を出さないのが最も賢い選択です。
⑧1銘柄に全力投入はNG
一つの市場にすべての資金を集中してはいけません。リスク分散が大事です。
⑨成行注文のみで取引せよ
多くの投資家は、「この価格で買いたい、売りたい」を実現する「指値注文」を行います。しかし、皆がそう思っているので、買えるとは限りません。
⑩確固たる理由がない場合は手仕舞いしない
④に通する考えです。利が乗ったからと早々に手じまいしていては、利益は伸ばせません。手仕舞いにもルールを設け、利を伸ばすことが大事です。
⑪利益が出たら分けて管理せよ
儲けたお金は再投資するという考え方もありますが、ギャンは儲けたお金は余剰資金として別口座に分けることを推奨します。
確かに、この方が、心の余裕が保たれ、また、相場が荒れたときも余剰資金を利用して大きく賭けることもできます。
⑫薄利を稼ぐための売買しない
スキャルピングはしないということです。ギャンはトレンドフォロー投資家で利を伸ばすことを信条としているので、スキャルピングは不要でしょう。
⑬ナンピンはしない
ギャンは、「ナンピンは最悪の方法」と教えます。ナンピンは一発逆転の可能性もありますが、「退場」の確率を高めます。トレンドに逆らう売買はしない。これが大事です。
⑭投資には我慢が必要。焦るな
投資には「我慢」が必要です。
我慢できず手仕舞いしたり、また待ちきれずにポジション・メークをしてはいけません。待つことも大切なことだと認識しましょう。
⑮小さな利益・大きな損失を避けよ
まさに、「損大利小」はダメ、「損小利大」に徹せよということです。
⑯ストップロス注文は決してキャンセルするな
いったん設定したストップ・ロス・オーダーは、決してキャンセルするなということです。②に通ずる教えです。
⑰過剰に頻繁な売買は避けよ
③のおさらいです。
⑱カラ売りも使え
ギャンのトレンドフォロー手法は、上昇局面に買いで参戦するが基本です。しかし、下落時でも空売りでトレンドに乗りましょうと教えます。
⑲値頃感からの売買をしない
一般投資家がよくやりがちな過ちです。
⑳買い増し・売り増しはレジスタンスやサポートをブレークしてから
価格抵抗水準をブレークするまでは、買い増し・売り増しのポジションを作る(ピラミッディング)ことを禁止しています。
㉑ピラミッディングはトレンドが明確なときだけ
買い増し・売り増しのポジション・メークをするのは、強いトレンドが出ている銘柄に限定です。成功時は利益が大きく伸びますが、失敗すると見る見るうちに含み益を減らします。
㉒ヘッジの両建てはするな
買いと売り、両方のポジションを同額立てる両建ては、本来は意味のないポジションです。原則的に、両建てするなら損切りを選択すべきです。
㉓確固たる理由なき、ポジション決済はしてはいけない
⑩のおさらいです。売買に関しては確固たる理由のもとに、自分の確立した明確なルールに従うことが大事です。
㉔儲けた後、意味のない頻繁な売買をしない
利益がでて調子にのって売買をすると、気持ちが大きくなったり、自分のトレードスキルを過信し、間違った判断をしやすくなります。
このような過ちを起こさず冷静になるためにも、一旦休むことも大事です。
㉕相場の天井・底を推測しない
多くの投資家は、安易に天井・底を推測し、ポジションを持ちがちです。しかし、誰も、天井・底を当てることはできません。その場の状況に応じて判断することが大事です。
㉖他人の意見を鵜呑みにしない
投資に勝てるのはごく一部の人のみ。人の意見に従っているようでは、いつまでも勝てる用意なりません。自分の確固たる投資手法を身につけることが大事です。
㉗損失が出た後は取引量を減らせ
人は損をすると、つい、取り返したいという気持ちになりがちです。そのため、損を取り返そうとリスクの高い取引をしがちです。これが「相場からの退場」につながります。
うまくいかないときは冷静になるためにも、取引量を減らすことが大事です。
㉘間違ったポジション・メーク、間違った手仕舞いをしない
間違たエントリー、間違ったエグジットはするなということです。当たり前のことですが、それをするためには、自分の取引ルールが確固としていることが大事です。これはなかなか難しいルールだとわかるでしょう。
同時期の投資家リバモアとの比較
ギャンと同じ時期に活躍した投資家にはジェシー・リバモアがいます。リバモアも何度も巨額の富を築いた相場師ですが、その度に資産を吹き飛ばしたことでも有名です。
ギャンとリバモアの決定的な違いは何だったのか?
それは、資金管理力に他なりません。
どんなに市場を読む力に長けていても、資金管理のルール、特に損失に対するルールを持っていなければ、財を築くことはできません。
この点を重視して、今一度「ギャンの28のルール」を読み直してみてください。
最後に
今回は、投資の王道ともいえる「ギャンの28のルール」について紹介しました。
投資で利益を出すには、テクニカル分析マスターになることも大事ですが、それ以上に、投資の基本ルールを守れるかの方が大事です。
ギャンの28のルールはまさに投資に対峙するなら絶対に守るべきルールの王道です。
今一度、これをきっかけに自分の投資手法を顧みてみましょう。