2022年の開始と共に変調が明確化した「株式投資」。各国のインフレと政策金利の上昇が、株式投資をより難しくしています。
では、プロは今後の世界経済(経済成長)をどのように見通しているのか?
2023年1月31日、国際通貨基金(IMF)が、「世界経済見通し2023年1月 改訂」を発表しました。レポートの副題は「緩慢な経済成長 インフレ、ピークに達する」。
投資先のヒントを探るべく、最新の見通し「IMFの世界経済見通し(PDF)」を確認してみました。
目次
2022年、2023年と世界経済成長は減速する
2023年1月31日、IMFが発表した 世界経済のGDP成長率は、2022年の3.4%から2023年には2.9%まで減速。
ただし、この数値は、10月に示した予想値(2.7%)から小幅に引き上です。欧米の需要が「驚くほど底堅い」ことやエネルギー価格の上昇一服、中国の経済活動再開を上方修正の理由として挙げています。同様に、2024年の成長率予想については、各国中央銀行の利上げで需要が減少するとして10月予想の3.2%から3.1%に引き下げています。
1年前(2022年1月発表)の見通しとの比較
本記事の最後に【参考】として、1年前、2022年1月時点での発表内容を掲載していますが、2022年・2023年時点の見通しを比べると、見通し数値は大きく下振れ。世界成長が鈍化しています。
プロとて1年後の経済を予測することは難しいことを再認識させられる内容です。
世界経済見通し:抜粋メモ
以下、2023年1月時点の見通しの中から、個人的に興味深いと思った点をメモしておきます。
【緩慢な経済成長インフレ、ピークに達する】
- 2023年の予測は、歴史的(2000―2019年)な平均 3.8%を下回る
- 物価上昇に対処するための中央銀行による利上げと、ロシアのウクライナでの戦争が引き続き、経済活動の重し
- リスクのバランスは依然、下振れ方向に傾く(2022年10月時点よりは下方リスクが緩和)
■上振れリスク
・各国で見られる繰延需要による景気の押上げ
・中国のコロナ政策の方針転換
・ディスインフレの加速
■下振れリスク
・ウクライナでの戦争激化
・中国での新型コロナウイルス再拡大による景気回復失速
・インフレの長期化
・金融市場の突然の価格調整
・地政学的分断(世界経済のブロック化) - 生活費高騰の危機が続く中、大半の国において優先課題は引き続き、インフレ対策
- 政策上の優先事項
・世界的なディスインフレの確保
・新型コロナウイルスの再燃を阻止
・金融の安定性の確保
・債務の持続可能性の回復
・弱者への支援(弱者以外への財政支援措置は廃止すべき)
・供給の強化 - 金融安定性リスクは総じて高止まり
・景気後退リスクの高まりと金融政策の不確実性により、市場は高ボラティリティ
・引き続き、高止まりが予想され、市場流動性の低さによってさらに悪化する可能性も
国別・エリア別の成長率
では、次に、国別・エリア別の成長率を見てみます。気になるのが、米国の成長率回復の鈍さです。
米国経済は2024年に向けて減速
米国の成長率は 2022年:2.0%から、2023年:1.4%、2024年:1.0%に減速すると予測されています。
2024年の成長率は、FRBの政策金利に大きく左右されます。政策金利は2023年中に約5.1%でピークアウトするとの予測の上で、その影響を受け、2024年はさらに成長鈍化すると予測されているようです。
米国だけじゃない。先進国経済は急減速
米国に限らず、先進国経済の減速は一様に厳しい。成長率は2022年の2.7%から、2023年と2024年は1.2%と1.4%へ鈍化し、10か国中9か国の経済が失速すると予測されています。
株式投資が難しい状況は続く
株式投資とは、経済の成長に賭ける投資です。IMFは2023年に景気が底を打つと予測していますが、【緩慢な経済成長】は2024年も続くと予想しています。先進国の成長率は鈍化傾向にあります。
これはすなわち、「今までのように先進国(特に、米国投資)でリターンを得るのは難しい」ということを意味します。
米国 国家50年サイクルは今が「株価ピークの10年」
現在の覇権国は「米国」です。圧倒的な力を持っています。米国が風邪を引けば、世界も風邪をひきます。
しかし、米国の覇権国としての歴史は「第二次世界大戦以降」。イギリスから奪った覇権です。そして、圧倒的な力を持っている国が次の国に追い上げられる時期は様々な事件が起きることは、歴史は証明しています。
今すぐ覇権が奪われるという話ではありませんが、追い上げを狙っている国「中国」の力は、10年前と比べて確実に強まり、冷戦終結後に手に入れた米国の強さは、少しずつ弱まっています。
国家50年サイクルで見ると、米国は「庶民台頭期」。国家50年サイクルで見る経済のピークは「庶民台頭期」で、米国の場合、2018年~2027年が該当します。
動乱期 :国に様々な価値観が溢れ、貧富の差が拡大する時代
教育期 :人材育成に力が入る時代。新旧の価値観が衝突する鬼門通過現象が起こる
経済確立期:有能なリーダーが現れ、国がまとまり、経済的基盤が整う時代
庶民台頭期:国が平和になり、民衆の文化が花開く時代
権力期 :政治家や官僚など支配層が民衆を押し付け、国力が衰退する時代
庶民が強い時期は、経済は安定しやすいですが、この時期を過ぎると、権力期→動乱期 へと突入。国が混乱しやすい時期に入ってきます。
奇しくも、今の10年が株価がピークとされる「庶民台頭期」。将来はわかりませんが、ポートフォリオを今一度再検討してみたいと思う次第です。
最後に
今回は、難しくなった株式投資にヒントを求め、2023年1月時点でのIFM世界経済の最新の見通しを確認してみました。
株式投資は、1年、2年という短期ではなく、次の10年(20年??)といった低成長=低リターンな時代に入ったとみた方がいいのかな…と思います(だからといって、株式投資をしないというのは違う。「過去に比べて低リターンを受け入れる」という意味です)。
そして、もっと機動的に、世界の変調に合わせて投資スタイル(ポートフォリオ)を調整していく知識と実行力が必要だなぁ…と改めて感じる次第です。実行のための決断には知識が必要。勉強という修行は続きます。
株式投資を長期軸で見る目を養う本
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日々の株価の値動きに右往左往してしまい、長期視点が足りないと感じる方は、まずは1冊でいいので読んでみることをおすすめします。