
「今週はFOMCがあるから、市場の動きに注意が必要だ」
「パウエル議長の発言でドル円が急変した」――
経済ニュースを見ていると、このような見出しを目にすることが頻繁にあります。
中央銀行であるFOMCや日銀の金融政策決定会合は、私たちの経済や日々の生活に非常に大きな影響を与えるため、その発表は世界の金融市場から熱い視線を浴びています。正式な政策発表はもちろんのこと、利上げ・利下げといった金融政策の変更への期待だけでも、金融市場は大きく変動します。
なぜこれほどまでに金融市場は中央銀行の動向に注目し、時には一喜一憂するのでしょうか?
その理由と、FOMC・日銀政策発表の開催スケジュールを以下にまとめます。
目次
2025年8月のドル円:日米中央銀行の動きを意識した綱引き 続く
中央銀行の動きを反映するのが金利。
そして、日米の通貨の強さ/弱さの綱引きの場がドル円市場です。
目下、ドル円市場は、日本が追加利上げへ踏み出す可能性と、アメリカの利下げ期待との間で 日米金利差が縮小する期待があり、「円高方向」へ動きやすい。しかし、要人発言、経済指標の発表で、金利縮小の期待度合いが日々変動し、ドル円は上下動を繰り返しています。
✅ 日本銀行(BOJ)
・2025年7月に短期金利を0.5%に引き上げた後、8月は据え置きを決定。
・ただし、インフレ見通しを上方修正し、今後の追加引き上げの可能性を示唆
・GDPの好調な伸びも円を支える材料に
✅ アメリカ連邦準備制度(FRB)
・米国では9月の利下げを織り込む動きが強まり、ドル圧力には一部陰りも。
⇒金利低下期待が高まる
・一方で、よい経済指標が発表されると、ドル高に一気に振れる状況
なぜ世界の金融市場は中央銀行の動きに注目するのか?
中央銀行の金融政策は、単に金利を調整するだけでなく、経済全体に広範な影響を及ぼすため、その動向は極めて重要視されます。
✅世界経済の基軸を握る通貨政策の舵取り役
・中央銀行が決定する政策金利は、その国の通貨価値、インフレ率、景気全体に直接影響
・わずか0.25%の金利変動でも、為替市場、株式市場、債券市場、商品市場に大きな影響
・→ グローバルな資金の流れを変化させる力
✅相場の方向性を示すシグナル
・、「利上げ=金融引き締め」「利下げ=金融緩和」という明確なメッセージとして市場に伝播
・→ 投資家や企業の将来の経済状況に対する見通しを形成
→ 投資判断や事業戦略に大きく関与
✅経済政策との連動性
例えば、
・利上げ期待:資金流入 → より高い金利を求めて円高要因 → 結果として、輸入価格が低下
・利下げ期待:景気を刺激 → 企業活動や個人消費を後押し → 株価や消費を後押し
以下では、FOMCと日銀政策、それぞれ分けて大事な理由を確認します。
【FOMC】大事な理由
FRBの決定が世界に大きな影響を与える最大の理由は、米ドルが世界の基軸通貨だからです。
✅ 開催スケジュール
・年8回、約6週間ごとに定期的に開催。必要に応じて臨時の会合も
・委員長の政策声明発表:2日目の午後2時(東部時間) ※日本時間で翌日の午前3時〜4時頃
・パウエルFRB議長の記者会見:2日目午後2時30分(東部時間)
✅ 世界の金融政策の中心
・米ドルは世界の基軸通貨
・→ FOMCの金利決定はグローバル資金の流れに直結。
✅ 市場への情報発信力
・会議で決まるのは、米国の政策金利(フェデラル・ファンド金利、FF金利)の誘導目標
・→ 市場は声明文や議長発言に注目 → 為替や株価が瞬時に反応
📌マーケット期待とのギャップがカギ
・発表の前提として市場がどう織り込んでいるか(予想と結果の差)が、相場の大きな動きの引き金となる。
【日銀政策発表】大事な理由
✅開催スケジュール
・年間約8回開開催
・展望リポート(経済・物価情勢の展望): 翌営業日の14時に公表
・日銀が日本の経済・物価情勢をどのように見ているか
・今後の見通しやリスク要因
・どのような金融政策を行うかの基本的な考え方
・主な意見:決定会合から約6営業日後8:50に公表
・会合での議論の詳細
・→政策決定の背景にある考え方がわかる
✅ 円相場と輸入物価への直接的な影響
・金利上昇
日銀が金融引き締めに動くと予測されると、円を持つ魅力が増す→円高
・金利据え置き・低下
長期的な金融緩和政策を維持。円を持つ魅力が薄れ → 円安 → 物価上昇
✅長期刺激政策の出口戦略
・ここ数年、短期金利を0.5%程度に据え置く一方で、国債の買い入れを徐々に縮小
・出口戦略のペースや方向性は、日本の景気回復や物価の安定に大きく影響
・テイパリング計画
時期 | 四半期ごとの削減額 | 月ごとの国債購入額(目安) |
---|---|---|
2024年7月〜2026年3月 | −4000億円 | 約5.7兆円 → 約3兆円 |
2026年4月〜2027年3月予定 | −2000億円 | 約3兆円 → 約2.1兆円 |
※2025年6月のBOJで、四半期ごとの削減額を半分の2000億円にスロー化することが決定
※急速に買い入れを減らすと、長期金利の急上昇を招きかねないことを避けるため
FOMC・日銀政策決定会合スケジュール
世界の金融市場は、FOMC(米国の金融政策会合)と日銀政策決定会合で動きます。数時間の発表が、数カ月先のドル円や株式市場の流れを決めることも少なくありません。そのため、投資家も生活者も、この日付をカレンダーにマークしておく価値があります。
投資家ならー
為替や株価は、FOMCや日銀の政策決定会合のたびに大きく揺れ動きます。金利の一言がドル円や日経平均を左右するため、投資を考えるなら開催日を押さえておくことが必須です。
すべての家計に対しー
私たちのローン金利や物価に直結するのが、FOMCや日銀の政策決定です。数カ月先の生活費にも影響するため、開催日を知っておくことは「家計防衛」の第一歩になります。
FOMC開催スケジュール(2025-2026年)
・経済見通し(SEP)が発表されるFOMCは、特に市場の注目度が高い。
・FOMCの結果発表の日本時間は、夏時間の場合は現地時間翌日午前3時ごろ、冬時間の場合は午前4時ごろ
開催回 | 開催日(現地時間) | 結果発表日(日本時間) | 経済見通し発表 |
---|---|---|---|
2025年 | |||
第1回 | 1月28日~1月29日 | 1月30日午前4:00ごろ | – |
第2回 | 3月18日~3月19日 | 3月20日午前3:00ごろ | 〇 |
第3回 | 4月30日~5月1日 | 5月2日午前3:00ごろ | – |
第4回 | 6月17日~6月18日 | 6月19日午前3:00ごろ | 〇 |
第5回 | 7月29日~7月30日 | 7月31日午前3:00ごろ | – |
第6回 | 9月16日~9月17日 | 9月18日午前3:00ごろ | 〇 |
第7回 | 10月28日~10月29日 | 10月30日午前4:00ごろ | – |
第8回 | 12月9日~12月10日 | 12月11日午前4:00ごろ | 〇 |
2026年 | |||
第1回 | 1月27日~1月28日 | 1月29日午前4:00ごろ | – |
第2回 | 3月17日~3月18日 | 3月19日午前3:00ごろ | 〇 |
第3回 | 4月28日~4月29日 | 4月30日午前3:00ごろ | – |
第4回 | 6月16日~6月17日 | 6月18日午前3:00ごろ | 〇 |
第5回 | 7月28日~7月29日 | 7月30日午前3:00ごろ | – |
第6回 | 9月15日~9月16日 | 9月17日午前3:00ごろ | 〇 |
第7回 | 10月27日~10月28日 | 10月29日午前4:00ごろ | – |
第8回 | 12月8日~12月9日 | 12月10日午前4:00ごろ | 〇 |
日銀金融政策決定会合スケジュール(2025-2026年)
・経済見通し(展望レポート)が発表される会合は、特に市場の注目度が高い。
・日銀金融政策決定会合の結果発表は、原則として会合最終日の午後(夕刻)
開催回 | 開催日(現地時間) | 結果発表日(日本時間) | 経済見通し発表 |
---|---|---|---|
2025年 | |||
第1回 | 1月23日~1月24日 | 1月24日午後(夕刻) | 〇 |
第2回 | 3月18日~3月19日 | 3月19日午後(夕刻) | – |
第3回 | 4月30日~5月1日 | 5月1日午後(夕刻) | 〇 |
第4回 | 6月16日~6月17日 | 6月17日午後(夕刻) | – |
第5回 | 7月30日~7月31日 | 7月31日午後(夕刻) | 〇 |
第6回 | 9月18日~9月19日 | 9月19日午後(夕刻) | – |
第7回 | 10月29日~10月30日 | 10月30日午後(夕刻) | 〇 |
第8回 | 12月18日~12月19日 | 12月19日午後(夕刻) | – |
2026年 | |||
第1回 | 1月22日~1月23日 | 1月23日午後(夕刻) | 〇 |
第2回 | 3月18日~3月19日 | 3月19日午後(夕刻) | – |
第3回 | 4月27日~4月28日 | 4月28日午後(夕刻) | 〇 |
第4回 | 6月15日~6月16日 | 6月16日午後(夕刻) | – |
第5回 | 7月30日~7月31日 | 7月31日午後(夕刻) | 〇 |
第6回 | 9月17日~9月18日 | 9月18日午後(夕刻) | – |
第7回 | 10月29日~10月30日 | 10月30日午後(夕刻) | 〇 |
第8回 | 12月17日~12月18日 | 12月18日午後(夕刻) | – |
最後に
中央銀行の一つの決断は、為替・株式・債券といったあらゆる市場を瞬時に動かします。とりわけFOMCと日銀の政策は、世界の資金の流れを左右する“決断の瞬間”です。
投資家にとって開催スケジュールを押さえておくことは、単なる予定管理ではなく、リスクを読み、チャンスをつかむため、イベント日、及び、金利について知識を持っておきましょう。
✅ 金融知識を深めるおすすめ本
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