西野亮廣さんの『夢と金』は、夢を実現するためのお金の稼ぎ方について書かれた本です。しかし、節約・貯金・株式投資でのお金の増やし方を紹介する本ではありません。
よりよい人生を生きる上で、非常に大切な学びに満ちた本です。今回は、この本からの学びを紹介します。
『夢と金』ってどんな本?
耳を傾ける必要はない。あんなのは全て寝言だ。
「夢」と「お金」は相反関係にない。僕らは「夢」だけを選ぶことはできない。
「お金」が尽きると「夢」は尽きる。これが真実だ。
西野亮廣さんの『夢と金』は、夢を実現するためのお金の稼ぎ方について書かれた本です。しかし、節約・貯金・株式投資でのお金の増やし方を紹介する本ではありません。本書のテーマは以下の3点。
・夢とお金の関係
・これからの「売る」の新常識 ~薄利多売からの脱却
・「機能」より「意味」を売る仕組みづくり
充実した人生を送るには「夢」が必要。しかし、その夢を実現するにも「金」が必要です。また、一方で、アクションを起こさない人にお金は巡っては来ず、20代でついた格差は年齢を重ねるごとに大きくなります。
だからこそ、「1日でもお金について早く学び、1日でも早く勝て!」と西野さんは訴えます。本書では、そのために必要な「実践に基づく生きた知識・考え方・手法」が惜しみなく紹介されています。
常に時代の先を行き、ビジネスモデルから販売・ファンづくりまで、全てを作り出し、動かし、数字を作り上げていく西野亮廣さんの頭の中が、この一冊で垣間見れます。
お金と夢の関係
「お金」の知識がないと「夢」を持てない
現代日本は「夢もなければ、金もない」人が溢れています。平成以降生まれの人とっては、日本は生まれた時からデフレが続く衰退国。自分の将来に希望が持てない理由も、「お金の不安」があるからに他なりません。
お金はすべてじゃない。しかし、「貧すれば鈍する」という言葉が象徴するように、現実世界では「お金がない」と判断を誤りがち。また、多くの人が「お金がないから…」を言い訳に、思考停止しています。これでは夢など持てるはずもありません。
貧乏とは
貧乏とは「選択肢がない状態」です。貧乏になると衣食住の選択肢に始まり、インプットの選択肢、未来の選択肢も減ります。貧乏になってしまうのも、「お金を作る選択肢が少ないから」です。
この選択肢を減らす大きな原因が「無知」です。無知は貧困を招きます。
お金を作る選択肢が少ない人は、「お金を作る選択肢の少なさ」にすら無自覚です。結果、行動・チャレンジもできず、貧しさに向かうことになります。
加速した時代の変化
時代の変化はどんどん早くなっています。時代が変われば、仕事も、生き方も、売り方も時代に合わせて変化が必要です。ここでも学びは必要になります。
「機能」がコモディティ化した2024年現在、小売店は「誰から買うか?(機能検索から人検索)」という競争を始めており、 AIに代替されるどころか、「人じゃなきゃダメ」になっています。もはや、「クラウドファンディング」どころか、「クラウドメイキング時代」の時代に突入しています。
一方、生成AIはたった数ヶ月でビジネスの現場を大きく変化させました。Web3の意味合いも変化。新Web 3は、これまでAIに代替されないとされていたクリエイティブな仕事も代替可能にしました。このような時代の変化も知らなければ、淘汰される側⇒貧乏に陥ります。
Web 1 | お客さんが、サーバー(メディアや法人)にある読み取り専用ページを閲覧した時代 データの作成は、主にサーバーの管理者 |
Web 2 | お客さんが、サーバー(YouTube、Twitter、Facebook、LINE、Instagramなど)を介して、他のお客さんとやりとりできる時代 お客さんが、データを作成・発信することができるように |
新Web 3 | AIによってクリエイティブスキルが低い人でも、ハイクオリティーの作品を生成・発信できるようになった時代(生成AIの時代) あらゆる「職人技術」が無価値化した |
Web 4以降 | サーバーを介さず、お客さん同士が直接繫がって、お客さん同士でデータ(NFTなど)を共有・管理する時代 サーバーの支配から解放 ※Web 2の次にくると思われていた時代は、Web 4以降に持ち越し |
1日でも早く学び、1日でも早く勝て
30代は、20代で勝った者同士で手を組み、20代で負けた者同士で手を組むことになる。
40代は、30 代で勝った者同士で手を組み、30代で負けた者同士で手を組むことになる。
当然、「与えられるチャンス」「使える人脈」、そして「使えるお金」には差が生まれる一方だ。 (略)
世界は〝最初に勝った人間〟を贔屓し、〝最初から持っている人間〟を贔屓する。 学校じゃ教えてくれないけど、これが世界の理だ。後から取り返せると思うな。
残酷ですが、これが世の現実です。だからこそ、西野さんは「1日でも早く学び、1日でも早く勝て」と力説します。
【人生攻略法】努力量の配分とあくなき挑戦
人生は初戦で勝つことが大事。故、人生の努力量を「100」とするなら、人生の前半戦に努力を集中投下することが大事です。初戦で勝つためにも、周囲の「ドリームキラー」の声を跳ね除け、夢に向けて、学び進まなければなりません。
いや、でも、私には夢もやりたいこともないという方も多いでしょう。しかし、「やりたいこと」も「モチベーション」も、ある日突然降ってくることはありません。これらをもたらすのは「小さな成功体験」です。とにもかくにも、始めてみないことには、何も始まらないのです。
そして、ここで再び直面するのが「何かをはじめようとするとお金がかかる」という現実です。だからこそ、繰り返しになりますが、1日でも早くお金について学ぶことが必要になります。
これからの「売る」の新常識 ~薄利多売からの脱却
なんだかんだいって、「世界はお金」で回っています。人口減少の日本で今後もビジネスで収益を上げるには、富裕層の理解が欠かせません。それは、ビジネスに利益をもたらしてくれるのは、富裕層だからです。
私は、お金の本を多読してきました。以下では、他の本には書かれていない「お金の真実」を中心に本書からの学びを紹介します。
❶富裕層商品に学ぶ、高く売る秘訣
❷一般消費者に商品を高く売る秘訣
❶富裕層商品に学ぶ、高く売る秘訣
「高価格帯」が利益を生む
富裕層を知るには、高価格帯商品の理解が必須。本書では、「東京→ニューヨーク間の航空券の料金」を例に説明しています。
エコノミークラス:22万5000円
ファーストクラス:188万円
1座席に150万円以上の価格差があります。この現状に対し、世には「高価格帯商品」を批判する人がいますが、西野さんは、「バカの意見」だと言い切ります。理由は、VIP席のお客さんが多くの金額を負担してくれているから、エコノミー席を安く提供できるという現実を知らずに語っているからです。
「高価格帯の商品」をなくしてしまうと、待っているのは、「お金に余裕がない人からお金を取る世界」です。
例えば、上記航空券の場合、ファーストクラスを失くし、全てをエコノミーにするとどうなるか?ファーストクラスの価格はエコノミーの8倍以上。これをエコノミーにしても8席を調達することはできません。つまり、飛行機1台全席エコノミーにしてしまうと、企業が利益は同利益を確保するために、エコノミー席の料金は大幅にアップせざるをえなくなるのです。これは、新幹線、コンサート・スポーツの席なども同じです。
ビジネスを仕掛ける側は、富裕層を大事にしなければなりません。また、利用者も、VIP席に座る人を「金持ちが贅沢しやがって」思うのではなく、彼らがいるから安く利用できていることを感謝しなければならないのです。
富裕層を知り、「プレミアム」と「ラグジュアリー」の違いを知れ
では、富裕層はどんな思考で、どういうことにお金を支払うのか?
これを理解するに当たって、大事なのが「プレミアム」と「ラグジュアリー」です。
項目 | 違い | 特徴 | <価格決定者/th> |
---|---|---|---|
プレミアム | 競合がいる中でも最上位の体験 高級 | 役に立つもので、高級 納得感がなければ買われない 意味があるモノ~ないモノまで存在 | お客さん |
ラグジュアリー | 競合がいない体験 | 夢・憧れ 必ずしも役に立つものでなくてもいい 売値の「言い値」でも買う人がいる 存在に意味がある 価格はプレミアムより1桁・2桁上! | 商品販売者 |
車で言えば、プレミアムの代表は「レクサス」や「ベンツ」。対して、ラグジュアリーの代表は「フェラーリ」。フェラーリを求める人は、もはや、機能・性能に対する費用対効果など気にしていません。「高くても欲しい」夢の商品なのです。
これに応えるため、ハイブランドは「ブランド価値・信用」を守るために大きなコストを支払っています。ハイブランドは、売るためだけでなく、売った商品のその後の価値を守る活動もしているのです。そうしなければ、ブランドは維持できません。
ラグジュアリーの作り方
ラグジュアリー(夢) = 認知度 ー 普及度
ラグジュアリーを別の視点で見てみましょう。ラグジュアリー商品とは、「皆が知っているけど、誰も持っていない(買えない)」商品です。多くの商品は「普及度を上げる=多売」で、利益を得ようとします。しかし、この考えでは、富裕層に刺さる商品は作れません。
ラグジュアリーで大事なのは「認知度」と「意味」です。
「機能ではなく、意味を売る」という視点はとても大事です。「機能を売る」と、そこには常に競合と相場が存在し、否応なくコスト競争に巻き込まれます。しかし、「意味を売る商品」はこの競争の範疇外です。
意味を持つ商品の一つの代表が、誰もが認めるドヤれる商品。「これ持っている俺ってどうよ」と自慢できる商品は、高くても買われます。
❷一般消費者に商品を高く売る秘訣
ここまで、富裕層・ラグジュアリーについてみてきましたが、世界の人口の大多数は「お金持ちじゃない人」です。故、現実的には、「ブランドになれない人が、お金持ちじゃない人に、これまでよりも 少しでも高く商品を買ってもらう(意味ある商品を売る)にはどうすればいいか?」を考える必要があります。
人生の「資源分配」を考えよ
ただ、キミが調達する「お金」と「時間」には限界(天井)がある。
そのことを踏まえると、 大切なのは「自分の資源(お金と時間)をどのように分配するか?」 だ。
キミの人生は、この「資源の分配」に尽きる。 「資源の分配」を制した者が勝ち、「資源の分配」を考えなかった者が負ける。 それ以上でも、それ以下でもない。
これが現実だ。
「良いモノだから売れる」は間違い。オーバースペックに注意せよ
西野さんは、日本人の職人気質(とことんクオリティにこだわる癖)が、日本人を苦しめているといいます。
2024年現在、多くのサービス・商品は一定の満足が得られるハイスペックです。しかし、さらにクオリティを高めようと「97点」のラーメンを「 98点」にすることにあなたの資源を投資じても、お客さんはその差がわかりません。お客さんの満足ラインを超えた技術はオーバースペックであり、それはただの「自己満足」です。
「味」「便利さ」「パフォーマンス」の追求することはすばらしいことですが、「資源の分配」「お客さんの満足度」を無視して追求しても商売にはなりません。
そもそも、自分の労働力に頼ると、生み出せるお金には限界があります。自分の労働限界を突破して夢を追い続けるには、「商品を高い値段で売る」以外に「自分以外の何かに働いてもらう」という意識も重要です。また、(売上より)「利益」を追求するために、対象を絞る(手間のかからないお客さんを対象にサービスを展開する)という発想も必要になります。
「正しさ」にかまけるな。惚れさせろ
機能の差別化では商売が難しい時代に必要なのは「惚れさせる」こと。2024年現在、小売店は「誰から買うか?(機能検索から人検索)」の方が大事になっています。機能を買う「顧客」を、意味を買う「ファン」にすることが大事です。
【人検索】は相場に 抗うことができる数少ない打ち手の一つだ。これをモノにしない限り、キミは薄利多売合戦から抜け出せない。
なお、ファンを作る際に覚えておくべきことは、広告を打って認知度アップに努めてもファンが増えるとは限らないこと。ファンを増やすためには、❶「コミュニティ」と❷「自分がどこに向かっていて、今、どれぐらい足りてないのか?(現在地と目的地)」を周囲にさらし続けることが必要です。
コミュニティがあれば、人は仲間から商品を買います。そして、仲間は相手が目指したいことがあれば、それを応援・支援してくれます。コロナ過で、苦しくなった経営を支えるために行われたクラウドファンディングはその典型です。
不便のあるところにコミュニケーションが生まれる
人類誕生から今に至るまで、不便のないところに、コミュニケーションは生まれません。そして、 機能で差別化を図れなくなった現代においては、「コミュニケーション」こそが最大の付加価値になっています。
いたずらに「不便」を取り除くと「機能」しか売れなくなります。商品開発には、「不便」を 戦略的に デザインするという考え方も大事です。
不便の種類 | 不便から得られる喜び |
---|---|
1人で楽しむ不便 | 成長の確認、達成感 |
複数で楽しむ不便 | 達成感の共有、コミュニケーション |
上記のような不便が生じるモノ・サービスでは、お金の流れが逆転します。人は不便に対してあえて高いお金を払うのです。
最後に
今回は、西野亮廣さんの『夢と金』からの学びを紹介しました。
本記事で紹介したのは一部に過ぎません。特にこれからのファンづくり・応援スタイルに関わるNFTについては本記事では全く触れていません。世の中一般では、NTFは単なる投機対象ですが、西野さんが考えるNFTはコンセプトが全く異なります。ビジネスの設計思想を学ぶ上で、重要な学びが得られます。
どんな世代の人にも読む価値のある本です。また、お子様がいる親御さんにとってもとても大事な学びが得られます。是非、本書を手に取って、人生戦略で大事なことを学んでください。