「お金持ち=富裕層」って、どんなイメージですか?

「お金持ちなんて自分には関係ない世界の話」と思っている人がいる一方で、「実感がないけれど、資産クラス的には私も富裕層」という人が増えているのが現在の日本

事実、近年、日本でもこの「富裕層」が右肩上がりに増え続け、その資産総額はなんと日本の全世帯の2割以上を占めています。

この現象は、経済学者トマ・ピケティが提唱した「r > g」という、あの有名な公式、つまり、「資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回る」というピケティの指摘と切っても切り離せません。

日本の富裕層がなぜ増え続けているのかー
その背景にある経済構造をピケティの理論も絡めて、改めて確認。その上で、高所得者たちの最新の「お金の使い方」から、資産形成に役立つヒントを探ってみたいと思います。

[スポンサーリンク]

日本の富裕層、なぜ増え続ける?「r > g」が示す不労所得の力

富裕層・超富裕層の世帯数は、2005年以降の最多に(2023年時点)

野村総合研究所の最新データ(2025年2月発表)によると、純金融資産が1億円以上5億円未満の「富裕層」は日本に153万5000世帯(2023年時点)。さらに5億円以上の「超富裕層」を合わせると、165万3000世帯にものぼります。この数は、2013年以降、実に一貫して増加傾向にあります。

富裕層世帯の推移
2005年: 86万5000世帯・213兆円
2015年:121万7000世帯・272兆円
2021年:148万5000世帯・364兆円
2023年:165万3000世帯・469兆円

驚くべきは、これらの富裕層・超富裕層の純金融資産の合計が推計469兆円に達し、日本の全世帯の純金融資産総額の約26.1%を占めていること。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2023年6月1日現在における全国の世帯総数は5445万2000世帯なので、日本のお金の約4分の1は、このわずか3%の世帯が持っていることになります。

富裕層が増える一方、ニュースを騒がせる、インフレ・物価上昇で生活が苦しいという実態がうかがい知れます。

トマ・ピケティ「r > g」が加速する世界

この状況はまさに、ピケティの『21世紀の資本』で語られた「r > g」の原則を彷彿とさせます。

彼が主張したのは、資本が生み出す収益(r)が、労働による所得や経済全体の成長(g)よりも速いスピードで増大する傾向があるということ。

しかも、世界的に株価指数は最高値圏。日経平均も史上最高値付近の4.1万円です。

つまり、元手となる資産を持っている人が、持たざる人よりも加速度的に豊かになっていくメカニズムを表しています。

富裕層はどのように資産を増やしたのか/増やしているのか

では、具体的に日本の富裕層はどのような形で「r」を最大化し、資産を増やしているのでしょうか?

❶ 株式市場の活況で「不労所得」が加速


日経平均株価推移 (2010年以降)

アベノミクス以降の株価上昇、そしてコロナショック以降も続く株高は、富裕層の資産を大きく押し上げました。彼らは元々、株式や投資信託といった「リスク資産」への投資比率が高い傾向にあります。株価が上がれば上がるほど、資産が資産を生む「資本収益」の好循環を享受しているのです。

これはまさに「r」の恩恵を最大限に享受しているに他なりません。

❷ 急激な円安が「外貨建て資産」を膨張させた


ドル円推移(2010年以降)

2021年以降進んだ急激な円安も、富裕層の資産増に大きく貢献しました。

富裕層はリスク分散のために早い段階から、「外貨建て資産」を保有していることが多く、この価値が円換算で大きく膨らんだことで、実質的な資産が増加。為替変動もまた「r」を加速させる要因となりました。

米国株米国債、さらには、金、ビットコインなど仮想通貨まで、グローバルで価格が変動する資産を持っている人は、その恩恵を受けています。

❸ 「資産の世代交代」で富が再分配

資産家は金融リテラシーも高いです。課税の贈与制度などを活用した計画的な資産承継も進んでいます。

これにより、団塊の世代から子世代への相続や生前贈与が増加し、一気に富裕層入りするケースが増えています。いわゆる「親ガチャのラッキー資産家」です。彼らは、総じて金融リテラシーも高めです。親からの資産を投資で増やす知識も身に着けています。

こうして、既存の「資本」が次世代に引き継がれ、新たな富裕層を生み出している現象です。

❹ 投資環境の整備が「資本主義の原則」を後押し

超低金利政策が預金による資産形成を難しくする一方で、NISAやiDeCoといった税制優遇制度の普及も、投資への流れを加速させています。

特に、今の若い子は「将来を不安視」。結果、支出を削り、貯蓄をする傾向も顕著です。さらに、2024年から始まった新NISAも始まりました。

これは、国民全体に「r」の恩恵を受けるチャンスを与えつつも、元々資産を持つ富裕層がより効率的に「r」を最大化できる環境が整ったとも言えます。

❺ 不動産価格の上昇も「含み益」を増加

都心を中心に地価やマンション価格が上昇していることも、富裕層の資産増加に寄与しています。

富裕層は、デジタル資産だけでなく、不動産などの実物資産に早くから投資している人も多いです。高額な不動産を所有していた世帯は、不動産の評価額が大きく伸び、含み益という形で資産全体が増加しています。

このように、実物資産と金融資産が連携し、富裕層の資産は多角的に拡大しているのです。

消費行動も変化。物より「体験」を重視する消費スタイルへ

モノよりも「体験」を重視するライフスタイルへー お金の消費行動も変化しています。

これは、資産を増やし続けている富裕層も同じです。彼らは、「自己成長に繋がる」「心を満たす」「思い出を作る」といった、非物質的な価値に、お金を投じています。

そして、健康を保ち、そして、より精力的に仕事をするためのパワーチャージをしたり、学びを得たりと、益々、自然と資産形成に役立つ暮らしを実践しています。

お金を使わないだけではダメ。資産運用や、人生にプラスをもたらすコト消費でお金を巡らせて、さらに、リターンを得るという富裕層のライフスタイルは、私たちに生き方のヒントを与えてくれるのではないでしょうか。

まとめ:あなたの資産戦略を再考しよう

日本の富裕層が増え続けている背景には、株価の上昇、円安、相続、投資制度の整備、不動産価格の上昇といった複合的な要因がありました。

これらはまさにピケティの「r > g」という資本主義の原則が現実世界で顕在化していることの現れです。

特に、彼らが株式や外貨建て資産などリスク資産への投資比率が高いこと、そして「体験」にお金を惜しまないという購買スタイルは、私たち個人の資産運用戦略を考える上で非常に重要なヒントになります。

「不労所得」の重要性が増す現代において、あなたはどのような資産運用戦略をお持ちですか?

どの時代においても、「お金でお金を増やす環境」を整えることが欠かせません。

富裕層の行動と経済の原則から学び、あなたの資産形成の未来をデザインする一歩にしてみてはいかがでしょうか。