【書評】定年バカ (勢古 浩爾 著)(★4)

定年後に続く20年、30年という人生を思うと、人は色々と考えてしまう。

生きがいは?
健康は?
老後資金は? 等々

そして、多くの人は、定年後の人生を有意義なものにしなくてはと、充実した老後にすべく、定年後の生き方指南本を読んでは「あれをしなくては」「これをしなくては」と焦る。

しかし、本書の著者 勢古 浩爾さんの考え方は違う。「何もしない生活だってアリなのでは」「充実してなくたっていいのでは?」と説く。

よくある老後指南書とは全く異なる立ち位置にある著書で、読む人によって「大いに賛同」「全く賛同できない」と意見の分かれる著書だと思います。しかし、著者の考えの方が、定年後のリアルだろうとも思わせる。

老後資金、健康、生きがい(仕事、趣味)と気張らずに行きたい人、定年に焦っている定年バカにお勧めしたい一冊です。

定年バカ:毎日が日曜日で気づく老後生活への焦り

忙しい企業人としてまじめに働いてきた人にとって、定年後の自由はそれまで一生懸命働いたご褒美と感じるかもしれない。

しかし、定年後一か月もすると、「毎日が日曜日」は恋い焦がれたほど楽しいものではないことを悟ってしまう。そして、何もすることもなく、人の役にも立っていない生活に虚脱感や喪失感に襲われるようになるものです。それと同時に、家族など周囲にいる人は、家でごろごろしてばかりとまるでダメ人間の象徴のように言う。

そんな自分が絶えなくなり定年指南書に頼る。そして、定年指南書などを読んで、「~~しなくては」と焦るようになるのです。

老後指南書の罠

巷には、老後指南書があふれていて、「~しよう」「~すべき」と提唱する。しかし、勢古さんは、多彩な趣味、地域活動などを通じて充実した定年を送るべきと言う熱が昨今やたらと強くなりすぎていないかと提言します。

このような風潮があるため、定年後、何もしないことで自分を卑下する人が続出しています。本来、自由であるはずの老後に、焦りを感じるという矛盾が生じるのです。

定年を取り巻く環境は少しずつ変わってきていますが、老後資金、健康、生きがい(仕事、趣味)、孤独、などの基本的な問題は、時代を通じてほとんど変わらない。今の時代だから、〇〇しなさいというのはちょっと違うのでは?との論を展開します。

定年バカ (SB新書)

講座に参加する男たち

定年後の焦りの行動の一つが、各種講座への参加。
講座に参加する男たちは、退職による虚脱感や喪失感に悩んでいて、老後生活を充実したもののようにしようと、ヒントを求めて必死になっているのです。

しかし、多くの場合、生きがい講座などを始めとする各種講座には、自分が楽しんで実践できるようなアドバイスもなく、それを実践できない自分に更なる焦りを感じるのです。

生きがいバカ

老後をどうしたら充実させらるか?どうしたら生きがいを感じられるか?とほとんどの人が悩むでしょう。

しかし、生きがい探しに苦労しているなら、そもそも、現役時代だってそれほど充実していたと言える人はどれほどいるか考えてほしい。

充実というより、タダお金のために働いていた人も多いのではないでしょうか?

何もしない生活には精神的に良いとは言えません。豊かとも言い難い。しかし、働くことが前提あり、何もしない事は悪であると言う価値観を老年期に持ち込むのは検討の余地があるのではないでしょうか。

生きがいと言う言葉に縛られすぎて、苦しむのは不幸。縛られすぎないことが大事です。

お金に焦る定年バカ

定年を迎えるにあたって最大の不安はお金。定年をどう充実して暮らすよりも、何を生きがいとして生きるかよりも、その前提に、お金の心配がなく、さしあたって心身とも健康と言う状態がなければなりません。

しかし、お金の不安は解消しません。退職金や年金の平均額を知っても悩みは解消されません。定年後いくら必要かを決めるのは自分だからです。

老後の社交バカ

毎日家でゴロゴロしていると、社会とのつながりを求めて、地域デビューやボランティアを始める人がいる。

楽しんでやれるならそれでいい。しかし、その場に出向くことに無理をしているなら本末転倒。

一人ってそんなに寂しい?一人で楽しめることもあるのではないでしょうか?

chamiの感想

私は定年までにはまだまだ時間がある身です。正直、本書を読むと、定年後に生きがいを見つけられない負け組=定年バカの遠吠え本のようにも見えます。

ただ一方で、勢古さんの意見は、定年後のリアルで、今まさに退職後の生活をおくっている人にとっては、気張って生きなくて済む精神的な安心材となるのではないかとも感じます。

人生、働き盛りのビジネスマンを過ぎて、有り余る自由時間を持っている老後も、悩みは尽きないということかと、当たり前といえば当たり前のことを痛感させられる一冊となりました。

定年バカ (SB新書)