戦争の現実はお金そのもの。結局のところ軍事費は経済水準で決まる

と語るのは本書の著者 加谷さん。戦争が起こると経済はどうなるかを以下の観点から明らかにしているのが本書です。

1.戦争のコスト
2.戦争とお金の関係性
3.戦争とマクロ経済
4.戦争と株価の関係
5.地政学
6.戦争とビジネス
7.これからの戦争の展望

経済成長の3要素は、労働人口、資本の蓄積、イノベーションですが、日本は過去20年間、経済成長しておらず相対的な軍事費用は縮小傾向にあります。

戦争と経済の本質は、時代を超えて変わりませんが、ITの進化により戦争(戦い方)は変化しています。本書では、将来の展望を含め、何が起こるかをわかりやすく解説しています。

一般市民の生活を大混乱に陥れる戦争は起こしてはならないものですが、世界のどこかで常に戦争が起こっているのが実態です。当事国はもちろんのこと、当事国ではなくとも、戦争がどのような影響を与えるのか、理解しておくことが求められます。

太平洋戦争時、株価はどう推移したか?

戦争が発生すると、多くの場合、国は戦費を国債発行により調達しようとします。結果、GDP項目における政府支出が増加することになります。

国債の大量発行は金融市場に影響を与え、体力を超えた戦争をすると、確実にインフレになります。太平洋戦争時は、戦後、ハイパーインフレが発生しました。

太平洋戦争時、戦時期間を通じて、株価は思いのほか安定的に推移しました。その理由は日本が国家総動員体制となり株価を人為的に買い支える施策が多数導入されたからです。しかし、戦後反動不況が起こっています。

ただ、壊滅的な打撃を受けた日本にとって幸いだったのは、「朝鮮戦争特需」があったことです。米軍の前線補給基地として、日本企業に処理できないほどの注文が舞い込み、特需が起こったのです。これがなければ、日本の奇跡の復活はなかったかもしれません。

軍事費とGDPの関係

軍事費は、米国が年間70兆円以上と突出(比較:日本の国家予算は年間100兆円)しています。全世界ではGDP77.3兆ドルに対し、1兆7500億ドルの軍事費が支出。うち、35%が米国,12%は中国が占めています。
GDPに占める軍事費の割合は平均2.3%ですが、日本の軍事費は平均以下となっています。ロシアなどはGDPが平均値を大きく超えています。国家的に無理をして戦費を捻出し、国の経済が苦しい状態にあるのは、みなさんご存知の通りです。

地理的条件が、国家間の潜在的な関係を決める

友好関係を結んだ方がいいのか?それとも敵国なのか?

地形的条件は、国家間の潜在的な関係を決めます。米国の経済外交戦略も常に地政学的観点から決定されています。

「ハートランド」とは、20世紀初頭の世界情勢をとらえてハルフォード・マッキンダー氏が唱えた言葉で、ユーラシア大陸の中核地域を中軸地帯のことを指します。

当時は、海軍大国(海洋国家)優位の歴史でしたが、鉄道の整備などにより大陸国家の移動や物資の輸送などが容易となったことで、ハートランドを支配する勢力による脅威が増していると提唱したのです。

この地は、戦争が起こりやすい地で、今現在も、戦争が起こっていたり、隣国との仲たがいが絶えないエリアです。エネルギー資源が豊富なこのハートランド地帯を支配できた国は、歴史上、一国も存在していません。

しかし、現在は、地理的な条件が変えられずとも、対立関係や戦争を変える「力」が登場しています。それはITです。

テクノロジーの進化により戦う前に勝敗が決まる

IT化や無人機・3Dプリンタの導入により、昨今の戦争は変化を遂げています。技術を持っているかどうか、つまりはお金を持っているかどうかで勝敗が決まる傾向が高まっているのです。

「新しいテクノロジーと金融システムの両者を制覇できた国が、次世代の派遣国家となる」のです。

米国が人工知能の開発を急いでいる背景には、ITのテクノロジー化を進める目的があると同時に、ITを使いこなせる人員確保が年々難しくなっているという切実な理由もある。

昨今、米国の志願者の7割が軍に入隊できない現状があります。現在、身体的・学力的な問題に該当するものは28%を占めます。肥満が問題なら痩せればいいのですが、特に問題になっているのは数学力と読解力です。これらがないと、ITの高度化についていけないからです。