人生は「意思決定」の連続。
お金の損得、他人との付き合い、道徳的な善悪など、私たちは日常生活で常に意思決定を迫られます。そして、時に悩み、悩み、或る時には、頭ではやめた方がいいとわかっているのについやってしまうなど、様々な間違いを犯します。

なぜ、悩んだり、誤った意思決定をしてしまうのでしょう?
我々、自分の「こころ」をわかっているようで実はよく分かっていません。故、より良い&スピーディーな意思決定には、脳とこころの癖や傾向を知ることが求められます。

本書は心理学と脳科学の最新の研究から、さまざまな具体的事例や実験の結果を紹介しながら、わたしたちの意思決定のメカニズムを探る一冊。マシュマロテスト、トロッコジレンマ、歩道橋ジレンマ、損失回避性、疲労、ブドウ糖、依存症等、意思決定のメカニズムと影響を与える要因を徹底的に検証しています。

理性と情動の対立

意思決定の多くの場面では、こころの中で2 つのシステムが機能しています。
①素早く湧き上がる「情動や欲求」と、②時間をかけた思考に基づく「理性や自制心」です。

この2種類のこころの働きは、学術的には次のように分類されます。

 システム1「速いこころ」
直感的・情動的な反応、本能的な欲求の発現を支える。論理性よりも直感に依存する。

 システム2「遅いこころ」
合理的判断や自制心など、意志の力によるこころの働きを支え、システム1 の働きにブレーキをかけようとする。これを働かせるには集中力が要り、別のことに気をとられるとうまく機能しない。

この2つのシステムによる心の動きは「二重過程理論」と呼ばれますが、これを端的に表す研究の一つが、保育園児が目の前のマシュマロを食べずに我慢できるか、意志の力を試す「マシュマロテスト」です。

マシュマロテストで我慢できた子できなかった子の間の違いは、我慢の対象から気持ちを他のこと/もので紛らわすことができたかでした。ちなみに、我慢できた子供/我慢できなかった子供には以下のような傾向があることが報告されています。
・我慢できた子供は、青少年期には、他の子供より強い自制心を持ち、理性的な判断を下す能力にも優れていた。
・我慢できた子供たちが中年期になった頃、脳活動を調べると、脳の前頭前野(衝動の制御や論理的思考を担う領域)の活動が高かった。

「遅いこころ」、自制心の限界

システム2を働かせるには、ある程度の集中力を必要とします。何か別のことに気をとられていると、うまく機能しません。一度に処理できる量には限界があるのです。自制心には限界があるのです。

また、睡眠不足や飲酒も、システム2の働きを弱めます。睡眠不足は集中力を低下させますが、「早いこころ」のコントロールも奪い、エラーが顕著になります。故、寝不足だったり疲れていたりすると、誤った意思決定をしがちで、あとで悔やむことになります。

このように、理性と情動のバランスがどうにも取れない局面があることを理解しておくことは、自分のこころと付き合うために非常に大事で、こころのバランスを俯瞰することに役立ちます。

どうやって「速いこころ」と「遅いこころ」をコントロールするか?

マシュマロテストで我慢できなかった子供は、「速いこころ(情動や欲求)」をコントロールできなかった子供、我慢できた子供は「速いこころ(情動や欲求)」をコントロールし、「遅いこころ(理性や自制心)」で意思決定した子供です。
では、「速いこころ」をコントールするために、どのように「遅いこころ」を働かせたらよいのでしょうか?

結論は以下です。

・欲求の対象を抽象化したり、欲求の対象から意図的に気をそらせたりする。
・俯瞰的に2つのこころの働きをとらえ、遅いこころをサポートする。

「気をそらす」なんてなんて、あいまいで適当な解なんだ!と思った方も多いと思いますが、実は「気をそらす」というのは非常に大事です。我慢できない対象物から、気をそらし自分を遠ざけることで、誤った判断をすることを回避できます。気をそらせるというのは、大人になっても非常に役立つ対処法なのですね。

自分のこころの取扱説明書的な本です。読んでおくと、今の自分のこころを俯瞰的にみることができ、よりよい判断に役立つ一冊となりました。

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