最近は「〇〇の衝撃」本が多いですよね。

さて、本書は「ゲノム編集」の「衝撃本」。

ゲノム編集は2013年以降、以来急速に技術が進化した技術。iSP細胞に引けを取らない大きな可能性のある技術と言われています。
ゲノム編集は、目的の遺伝子を「ねらい撃ち」して操作(改変)することができる技術で、何度も掛け合わせを行う「遺伝子組み換え」と比べて、圧倒的な速さで品種改良を行うことができます。

本書は、このゲノム編集を、科学者ではなく、NHKの記者が「素人目線」からその現場を追った一冊。2015年7月30日に放送されたクローズアップ現代「いのちを変える新技術~ゲノム編集 最前線」の取材・編集チームが執筆しています。

画期的な技術による品種改良がおこなわれている一方、それが、生命倫理にも関わるため、商用に活かすにはなかなか難しい問題があることがわかります。

「ゲノム編集」と「遺伝子組み換え」、何が違うのか?

上述した通り、ゲノム編集は、一つの遺伝子を狙い撃ちす改変することができる技術です。技術として簡単で、成功率が高く、いろんな生物に適用できます。

では、同じく遺伝子の情報を変える「遺伝子組み換え技術」とは何が違うのでしょうか?

遺伝子組み換えは、外から「別の遺伝子」を組み込むことで、生物の性質を変える技術です。何千回、何万回と実験を繰り返し、偶然に狙い通りの場所に遺伝子組み込まれ、その遺伝子が機能してはじめて成功となります。つまり、遺伝子組み換えは偶然に頼った技術で、とても長い時間を必要とするのです。

この遺伝子の入れ替えを、狙い通りにできるようにしたのがゲノム編集。研究室の学生でも、遺伝子の狙った場所を正確に操作できるほど簡単にゲノム編集が行えます。

そのメカニズムは以下のようになっています。

  • 遺伝子の狙った場所を切る
  • 切られた遺伝子は機能を失う
  • 切った隙間に新たな遺伝子を同時に送り込むと、切断された遺伝子は修復しようとする過程でそれを取り込む。

ゲノム編集を飛躍させた「クリスパー・キャス9」

ゲノム編集が大きく注目されるようになったのは、クリスパー・キャス9という技術が開発されたからです。

クリスパー・キャス9は、大きく「RNAでできたガイドRNAと呼ばれる部分」と、「DNAを切断する酵素であるキャス9」と言われる要素からできています。
そして、このクリスパー・キャス9と同時に、新たに導入したいDNA断片を入れれば、切断した遺伝子の箇所で修復を試みる過程で、そのDNA断片を取りこむことで遺伝子が編集されます。まさに、遺伝子を切ったり貼ったりができるようになったのです。

現在は、まさにAmazon並みのキット販売サイトが存在することで、研究機関であれば手軽に実験できます。これも、分野として爆発的に進捗している背景です。

ゲノム編集の「法的・倫理的な課題」

ゲノム編集をした生物を「遺伝子組み換え生物」として扱うか、非常に重要な問題です。

ゲノム編集でも、別の生物の遺伝子を入れ込んだものは遺伝子組み換えと同様に扱うことに研究者の多くは異論がありません。一方、狙った遺伝子を壊しただけの場合は意見は複雑です。

ゲノム編集が遺伝子組み換えの一種として規制されれば、研究開発のスピードは必然的に遅くなります。一方、そうでないと結論付けられれば、開発のスピードは速まり、巨大ビジネスへつながる可能性を秘めています。

また、食品にもなると消費者をいたずらに不安させやすく、受精卵にゲノム編集を施す研究も発表され(2015中国)されたことで、デザイナーベイビーへの懸念も高まっています。

現在、国内の実験用の生物を扱う施設は、ゲノム編集をした生物は遺伝子組み換え生物と同じように扱うことにしている。つまり、厳格なルールを適用して扱っています。

ゲノム編集は、5年前はSFだと思われていた人間の設計図を書き換えることができる技術です。今後、どうなるのかが注目されます。