本書は、幼少時に金銭的につらい体験をした金銭感覚の全く異なる兄弟のビジネス小説

有名国立大卒で広告マンになったもののお金遣いが荒く、複数の消費者金融でお金を借り自転車操業で一ヶ月をやりくりする兄・宗一郎

3流の大学に行くぐらいなら高卒の方が生涯賃金が高いと、高卒で消防士になった貧乏性の弟・翔太

同じ幼少期を過ごしたにも拘わらず、性格のみならず、金銭感覚・マネーリテラシーが全く異なる二人の20~60代の人生を追いながら、生涯年収や貯金、金利、生命保険、住宅ローンなどのマネー知識が学べるようになっています。

小説仕立てになっているので、次の展開はどうなるのだろうか?と興味を持って読み進めることができます。人生を歩むに従い、二人のお金に対する価値観が変わっていくのも興味深い。

やりくり(消費者金融含む)、結婚、子供、住宅(賃貸・持家)、老後 等、人生で経験するお金との付き合いについて、興味を持つきっかけになる本です。マネーリテラシーなんて難しいことはわからない。でもお金について学んでおきたいという方にオススメです。

周囲も不愉快になるほどの貧乏性・翔太の言葉

高校生時代からとにかく、節約・節約で日々を過ごす翔太。その金銭感覚は周囲の人を不快にさせるほどの貧乏性です。このころの翔太の金銭感覚はやりすぎで、私自身も不快感を覚えた一人ですが、一方で、ずしんとくる言葉をいろいろと発しています。

兄:確かに、生涯年収で仕事を選ぶことも、ひとつの考え方だと認めるよ。しかし、そんなに生涯年収を気にしながらお金を貯めて、前、一体何がしたいんだ?

弟:何って― そりゃ、老後のための貯金だよ

弟:「お金は使わなければ、楽しくない」という考えに、賛同できないね。お金は使わずに貯めるものであって、いざというときのために取っておくことで、初めて安心感が得られるものなんだよ。兄さんも覚えてるだろ?子供の時、お金がないという理由だけで、義父に頼るしかなかった苦い経験をさ。

弟 :お金よりも大切なモノって、ありますか?

知人:そんなもん、たくさんあるだろ。愛情とか、友情とか・・・

弟 :でもそれって、お金を出せば、買うことができるものばかりですよね。
お金さえあれば、愛を持ってきてくれる人なんて、たくさんいます。逆に、お金がなくて、愛を失ってしまう人の方が、世の中に溢れかえっているでしょう。お金があるから、思いやりや人を気遣う気持ちが生まれるもので、お金がないと、やっぱり人は相手を恨み、妬み、そして強い憎悪につながって、友情も壊れてしまうんです。

お金遣いが荒く見栄っ張りな宗一郎の行動

収入が多いもののそれ以上にお金遣いの荒い兄。職業柄、接待漬け(払う方)、および、周囲にも金遣いが荒い人が多く、彼らに感化されて、さらに金銭感覚がマヒしていきます。

知人・先輩などの悪のアドバイスで、金銭感覚の悪化が加速していく様は、興味深い。某消費者金融のバックが誰にが知る大手銀行であることを知り、消費者金融への警戒感が解け、手を出してしまう様などは、巷でよくありがちなケースです。

些細なことの積み重ねが、お金に対するマイナスのサイクルを生んでいく様は、戒めとして一読頂きたいです。

人生経験を経て変わっていくお金の価値観・付き合い方

「命よりもお金の方が大切」と、知人にはっきり言い切り、お金への執着心に知人に恐れさえ感じさせた経験を持つ翔太。しかし、60代になった彼は、様々な人生経験を経て次のように語ります。

弟:俺はただ臆病で、お金を貯めていないと不安な気持ちを押さえられない気の弱い人間だったんだよ。

通帳にお金が貯まりだすと、その数字が増えていくのを見て安心して、それがいつの間にか、人生の趣味になっていたんだ。でもお金を貯めることに執着すると、人付き合いは悪くなるし、いつも、お金を使わずに過ごせる方法ばかりを探してしまう。

そして、気が付けば、友達もいなくなり、落ちているお金を探して、ずっと下を向いて生活する、セコイ人間になってしまっていたんだ。

お金に執着し過ぎた人生を送っても、それでは幸せになれません。無駄遣いは避けながらも、自己(家族)投資したり、人生を楽しむためにお金を使ったりしなければなりません。

本書を読み終え、弟のお金への執着が軽減したこと、そして、兄についてもお金の使い方が改善していく様に、安堵した次第です。

Amazon評価: 貯金兄弟 (PHP文庫)