著者が想像する、次世代スパコンが切り開く未来とは

日本で最も知られたスパコンと言えば、京(けい)
計算能力は世界トップクラスとはいえ、6階建の設備が必要で、その年間消費電力は30億円もすることをご存知でしょうか。
これではどんなに素晴らしい演算能力を持っていても、本当に限られた研究機関しか、そのスパコンを使って、世の中に役立つ技術開発や医療・宇宙の解明などの研究をすることができないことは想像に難くないかと思います。

著者は、上記スパコンを開発する企業を統括する経営者。2014年世界コンピュータ・ランキング消費電力性能部門「Green500」で、独自技術により世界第2位を獲得した企業の経営者です。

本書は、「京」の128倍に上る性能を持つスーパーコンピュータ、つまり「エクサスケール(「エクサ」という単位)の演算能力を持つスパコンが開発されることで変わる社会を描いた一冊。

著者は、「エクサスケール・コンピューティング」が実現し、より多くの研究機関・大学等が使える現実的な導入コスト(マシン本体+電気代)で利用できるようになれば、現時点では考えられないような社会が実現すると提言します。

例えば以下のような世界です。
・エネルギーがフリーになる
・『衣』『食』『住』がフリーになる
・働く必要のない社会が出現する
・人類が不老を得る
・お金のあり方が変わる

上記だけ見ると、何とも非現実的な夢物語を話しているのだ!と思えてしまいます。しかし、我々は、一昔前までの高性能コンピュータに匹敵するスペックを持つスマホを誰もが持ち歩く時代が10年前には想像出来できたでしょうか?これまでそうだったように、ムーアの法則に従い、半導体の能力が上がっていき、恐るべき演算能力を持つコンピュータが登場すると、加速度的に実現できなかったことが実現できるようになり、謎とされていたことが解明されていきます。
故、本書を読み終わる頃には、上記で述べたような、ある意味、今の世界ではぶっ飛んだ考えに思える社会の到来も、全くの嘘ではない、少なくとも近づいていくと想像できるようになります。

著者は、2020年までにエクサFLOPSの処理が実現できるスパコンが完成し、2030年までにそれを使った様々な実験や試みが行われると予測します。そして、それが技術的に実現し花開く時代が2045年頃にはやってくると予測します。

著者は、2030年頃を前特異点2045年頃を特異点と位置づけていますが、エクサスケール・コンピューティングが大きく社会・生活をドライブする未来を、自分の寿命が来る前に立ち会えるかもしれないという想像は、心をわくわくさせます。

ページ数が多く、とっつきにくい本ですが、技術者でないとわからないようなことは一切書いてありません。また、トンデモ本的な内容にも思えますが、一方で、これからの未来も捨てたものじゃない、と明るい気持ちにさせてくれます。我々が10年前に今を想像できなかったように、この先、10年、20年先には進化した未来があることを改めて気づかせてくれます。

アマゾン評価:エクサスケールの衝撃